第6話 香の男装の理由
義弟が義妹だった。
などというそんなラノベみたいな隠し話があってたまるか、などと俺、八重島智和は思っていたのだが。
俺の義弟が本当に義妹だった。
冗談抜きでなく本当であり衝撃的である。
そのボーイッシュな美少女は俺が格好良いと言った。
そんなに格好は良くないと思うのだが。
色々有ったしな。
それをちょいと気にしながら俺は学校に行く為の準備をしていた。
「.....」
『俊介。お前.....学校辞めんのか?』
あれは雨の日だった。
この制服を見る度に後悔が思い浮かぶ。
俊介、アイツを高校の退学から止めれなかった後悔。
今も一緒に学校に登校していれば楽しかっただろうに。
「.....なんて.....後悔してもしゃーないか。よし」
それから俺は学校に行く為の準備を完了させて下に降りて行く。
それからリビングに入ると台所に香が立って居た。
俺を見て、おはよう、兄貴と言う。
「おはよう。智和。良い天気だな」
「.....そうだな。おはよう親父」
因みに親父は香をまだ男と思っているようだが。
いい加減に話しても良いんじゃないだろうかと思いつつ。
香と光さんを見る。
光さんは俺の様子に察した様に。
立ち上がった。
「ちょっと智和くんとお話してきますね。吾郎さん」
「え?お話?なんのだい?」
「.....ちょっとの話です」
そして俺の手を引いて光さんはリビングの外に俺を誘導した。
それから.....俺を真っ直ぐにに見てくる。
柔和な顔で、だ。
真実を知っているのね、と呟く。
「.....そうですね。裸を見てしまいましたから」
「.....あらま。年頃の女の子の裸を見ちゃったのね。それはちょっと問題だと思う」んだけど」
「ですよねー.....」
流石の光さんもジト目だった。
それから、まあそれは良いわ、と溜息を吐く。
そして俺を真っ直ぐに見てきた。
何であの子が.....男装をしているのか気になるわよね。
と直球で聞いてくる。
「.....はい」
「.....あの子が男装しているのはね。私を守る為なの」
「.....え?!」
俺は驚愕に目を丸くする。
えっとね、あの子は強くなりたいって私に言っていたわ。
それで.....あの子はある日を境に男装をし始めたのよ。
でも.....女は捨てたくないから完璧に男になりたくはないって言っているの。
せっかく女としてお母さんの元に生まれたんだから、と。
と光さんは複雑な感じで話す。
「.....お父さんが亡くなってから.....私を守る事に専念したの。それで.....あの子は全てを抱え込んじゃったから.....ね」
「.....それで男の様な服装と雰囲気を.....」
「でも男装したとしても私を守れる力が強くなる訳じゃないのだけれど.....でも嬉しいのよ。.....私は.....」
「.....」
男の姿以外を見せるのは家族以外には絶対に許さなかったのだけれど.....智和君が偶然に娘の裸を見てしまったから.....それで隠し切れなくなった。
それプラスに智和君が心をほぐしていったからだから智和君に心を許したのよ。
娘が家族以外で素を見せたのは男装してから今回が初めてかも、と光さんは呟く。
そしてジッと見据える様に俺を見てくる。
それから微笑んだ。
「.....そのうち.....この事は吾郎さんにも話すと思うけど.....今は優しく見守っていて。それがあの子が望む事だから」
「成程ですね.....」
「.....それと学校には行きたがらないの。あの子。男みたいな感じでそして男装が原因でね。だからその点も見守っていて」
「はい。分かりました。それで.....学校に行ってないという感じだったんですね」
光さんはその言葉に、そうよ。有難う、と頭を下げた。
それから、じゃあ戻りましょうか、と光さんは笑みを浮かべる。
そして俺はその事に、はい、と返事してから戻る。
香が俺達を直ぐに見てきた。
「おに.....じゃない。兄貴。何を話していたの?」
「.....何でもない。一般的な世間話だ」
「そうよ。香」
?を浮かべて目をパチクリする香。
そして父さんも?を浮かべて目をパチクリした。
俺達は顔を見合わせて頷く。
それから椅子に腰掛ける。
「じゃあご飯食べましょうか」
「そうですね」
それから俺達は朝食を食べてから。
そのまま出勤、通学した。
香は笑顔で俺を見送ってくれて。
俺はその姿に手を挙げた。
☆
「.....さて。授業か」
そして登校してから。
俺は窓から外を見つつ欠伸をした。
それから外をジッと見ていると。
教師が入って来た。
「ホームルームはじめっぞ」
「「「「「ウィース」」」」」
そう言えば。
言ってたか言ってなかったか。
俺は学校では結構、浮いている。
学校で友人は誰一人として居ないのである。
だから俊介が助けになっているのだ。
俊介ぐらいだ、男の友人は。
思っていると山住が言葉を発した。
「.....出席を取るぞー」
次々に生徒が立ち上がって。
出席を取っていく教師の山住。
俺はその事に自分の番が来て適当に返事しながら座る。
山住が出席を取り終えてから顔を上げ。
それからニコッとして言葉を発した。
「えっとな。喜べお前ら。今日.....転校生がやって来る。.....その子は女の子だ。仲良くしてほしい」
「「「「「マジすか!?」」」」」
男子達が喧しい。
知っていたのか知らなかったのか女子は静かなのに。
それから山住は少しだけ控えめに、ああ、と答えながら。
教室のドアの方を見つめる。
じゃあ入ってくれ、と山住は言う。
その瞬間に、はい、と答えが有って女子生徒が教室に入って来る。
俺も少しだけ興味を持って見つめる。
何と凄い、長髪の.....美少女であった.....。
これは凄いな。
男子達も息を飲んでいた。
「うお.....」
「マジかオイ」
「すげぇ」
そんな声が囁かれる中。
俺はその長髪の美少女を目を丸くして見つめる。
黒の長髪。
それから少しだけ柔和な雰囲気を醸し出し。
そして顔の大きさはその顔に合う様に小さく。
それでとどめには細い眉毛とか。
とにかく、テレビで観そうな感じの美少女。
これで知能さえ優秀なら最早.....
天から授かったものとしか思えない。
それから頭を下げる美少女。
「初めまして。中野.....麗(なかのれい)と言います。宜しくです」
律儀そうな美少女だ。
その瞬間、教室が大騒ぎになる。
山住が片っ端から宥めた。
それから俺達を再び口角を上げて見てくる。
中野の居場所を探している様だ。
「じゃあ中野は後ろのあの席に座ってもらおうか」
言いながら山住は指差す。
俺の席からかなり離れている場所を、だ。
まあ普通はそうなるよな。
ラブコメなんてそんな簡単に起きやしない。
当たり前だが。
思いながら俺は窓から外を見つめる。
普段と何も変わらず何時も通りだな、と思いながら。
そして中野は注目を浴びながら歩き出す。
中野は周りを見渡す。
俺はその様子を一瞥してから窓から外を見る。
そして中野は腰掛けた様で山住はそれを確認してから、じゃあ続けるぞ、と話した。
それから顎に手を添える。
誰かに中野に学校の中を案内してほしいんだがその役を誰がするかなんだが、と言葉を何か臭わせる様に発する山住。
ソワソワな感じを見せる男子達だった。
するといきなり中野が手を挙げる。
「はい先生。案内して欲しい人が居ます」
「?.....じゃあソイツに案内してもらえ」
「.....えっと、八重島くんです!」
「.....?.....は!?」
美少女よ。
今何つった。
八重島をご指名だと。
このクラスに八重島は俺しか居ないんだが。
どういうつもりだ。
「や.....えじま?」
「何でアイツ」
「え?」
それから中野は立ち上がった。
そして俺の元にやって来る。
ちょ、ちょっと待ってくれ.....!?
何で俺なんだよ!
中野を驚愕しながら見る。
「宜しくね」
「.....いや、宜しくってお前.....そもそも誰だ?」
ニコッとする中野。
いやいやちょっと待ってくれ。
どういう事だよ!?
ラブコメなんて起きないものと思っていたのにか?
俺は驚きながら見ていると山住が話した。
「中野。座って」
「あ、すいません」
そして中野は、じゃあね、と嬉しそうに帰っていく。
顎に手を添えて考えるが。
全く思い浮かぶ節が無いんだが。
いや、割とマジに一体何故、俺を指名した.....。
そして俺の頭だが何故一瞬だけでも義妹の顔が過ぎったのだ?
「アイツ殺す」
「それな」
「訳分からねぇんだけどマジに」
俺の知り合いでない男子達。
死ねとかいう感じだ。
何だか学校生活が危なくなってきた気がした。
俺は盛大に溜息を吐きながら。
窓から外を見つめる。
だが胃痛がした。
いや、しかし何で俺.....?
学校で女性と関わるとか.....死んでも御免と思っていたんだが。
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