第3話 男になりきる為の訓練

信じられない事実が判明した。

何が信じられないかって言えば.....俺の義弟が義弟じゃ無かったのだ。

つまり何が言いたいのかって?


そうだな.....義弟じゃ無くてより正確に言うと義妹だったのだ。

それだけで良く分かると思うかも知れないが.....本当にそうなのだ。

完全に男だと知らされ、男だと思っていた人物が、だ。

引っ越して来た時からずっと。

これは一体全体、どういうこった?


「.....」


「.....」


俺達は目の前の互いを見る。

目の前の少年だった少女はパーカーを着てアワアワしている。

あの、凄まじく気まずいのだが。


一体.....その、どうしたら良いのだろうか。

真面目に困っている。

対処法を教えてくれ、誰か。

とは言え誰も対処出来ないと思うが.....。


「あ、兄貴。その、ご、御免なさい。だ、黙っていて。でも言おうとしたんだよ?その.....うん」


「.....お前は完全に男だと思っていたんだが.....えっと俺としては猛烈に衝撃だ。何故.....男装しているんだ?」


「.....あ、えっとね.....それには理由が有るよ。でも今は言えないかな。御免なさい.....」


言えないなら仕方が無い。

追及もしない。

しかしながらこれは参ったな。


本格的に色々と厄介な気がするんだが。

俺は顎に手を添える。

うーん。


「良いけど.....その、この事実は俺の父さんが驚愕すると思うんだが.....知っているのだろうか.....」


「.....本性は知らないと思う。しかるべき時が来たら話すよ。僕.....じゃ無かった。私から」


「ああ。頼むぜ。じゃないと何だか面倒な気がする」


さて、それは良いんだが。

どうしたもんだ?これ。

だってそうだろ。


義弟が義妹ってそれは.....ヤバいんですけど。

女と男って.....。

しまった。

太ももとか見てしまう。


あくまで俺は香さんを男と思っていた。

だから全然話が違ってくる。

何だか.....心臓が.....バクバクする。

これはマズイ気がする何か。


「お前が男装している理由が分からないが.....とにかく.....俺としては色々と隔壁をしないとマズい気がする」


「あ、大丈夫。私.....男として生きるから」


「無理だろお前。俺と一緒に風呂とかにも入れないだろう」


「.....お、お風呂.....」


モジモジしながらボッと赤面する少女。

俺はその姿を見ながら盛大に溜息を吐いた。

それから、うーん、と考える。

さてどう対応したものか。


「兄貴。大丈夫。私は.....やっていける。これまでもそうだったから」


「アホ。これまでがそうでも今からは違う。俺が守らないといけないだろう」


「.....え?」


「いや、だからお前は女の子だから守らないといけない」


えっと、え?、と目を丸くして.....ボッと赤面する。

そして俯いた香さん。

これは.....何だ?

もしや恥ずかしがり屋なのか?

そんな態度を取られると何だか俺まで恥ずかしいんだが。


「.....仕方が無い。そこまで言うならお前が男として生きる為に徐々に男に慣れていくのを手伝う。それでどうだ」


「え?それって?」


それってつまり。

つまりは、だ。

俺に慣れてもらおうかと思った。

つまり簡単に言えば。

そうだな。


「俺の下着を見る」


「.....兄貴の変態。そ、そんな事出来ない。は、恥ずかしいんだけど.....」


「んじゃどうすんだよ。一緒に暮らしていくんだぞ。洗濯する事になるぞ。そして男に慣れないと男には程遠いぞ」


「な、なれるもん!」


そして決心した様に勢い良く立ち上がる。

その瞬間、パーカーだけ?だった様で。

はらっと捲れ下に着ているクマさん?の下着が露になった。

俺は真っ赤に赤面して、ひぇ!?、と声を上げる。

何でだよ!?ズボン履いてないのかよ!


「お前!?!?!下どうした!な、何で履いてない!?」


「えっと.....えっと.....!男の人ってそんな感じじゃん!えっとだから.....でもその見ちゃ駄目ぇ!!!!!」


そしてそのまま赤面の香君にぶん殴られた。

な、に。

ってかお前これ.....。


これじゃ男には程遠い.....じゃないか.....!

そして俺は地面にぶっ倒れた。

信じられない.....。



「男の修行その1。先ず男は強くあれ、だ」


「私、強いから。うん」


「.....そうだな。まあそれはそうだがそこじゃない。男が強くあれ、はつまり.....体力だけじゃない精神面も強くないといけない」


殴られてイテェと思いながらも必死に俺は説明する。

って言うかあまり人と関わらないのと帰宅部に近い俺が何故この様な説明を?

俺は溜息を吐きながら香さんを見る。

香さんは顎に手を添える。


「そうなんだね。覚えておく。兄貴」


「おう。大切な事だぞ。だから先ずはそれを覚えるんだ」


「しっかり、きんとれ、する」


「.....ま、まあそれも大切だろうな」


それから鼻息を荒くした様に鼻息を吐いてから。

香さんは意を決した様に俺をニコッと笑みを浮かべて見つめてくる。

俺はボッと赤面する。

何だこの可愛らしい笑顔は.....。

クソッタレ、男だったらマシだったのに.....駄目だ。


「.....?.....兄貴、どうしたの?」


「お前が可愛いから仕方がないんだよ。全く」


「.....なぁッ!!!!?」


真っ赤に赤面してから回転の拳で俺を殴って来る香さん。

いや、勘弁してくれ!?と思い拳を受け止める。

だがその。


勢いが有った為に香さんが倒れた。

お、オイ!危な.....い!?

俺は直ぐに手を出した。


「キャッ!?」


「うお!?」


そして俺は香さんを保護する様にぶっ倒れる。

のだが、俺が香さんを押し倒す形になっていた。

目の前の香さんは目をパチクリして俺をジッと見る。


ま、まつ毛が長いね、やっぱり。

そしてとても顔立ちが整って.....と誤魔化して考えていると。

香さんが赤面して暴れだした。


「きゃあ!!!!?あ、兄貴の変態!!!!!」


そのまま長い脚でドカンと蹴飛ばされた。

俺は宙を舞う。

そしてドサッと落ちた。

何と言うか、駄目だこれ.....先が長いな.....。

と思った瞬間でした。

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