言問いの川
「
「お前はどうする」
「朝までここにいます。ほら、あそこに洞窟がある。あなたの話も聞きたいし」
話、と呟くとエリューカは、
「何故こんな森に住んでいるのかと訊いたでしょう。私も知りたい。何故、あなたは
実際のところ、何故おれは
吸血鬼を飯の種にしている
ならば、と名無しの男、
自分はやはり、
結局、自殺しに来たのではないだろうか、と。
だから、洞窟の中に火を起こし座った後に、こう言った。
「この世界を終わらせるために来た」
エリューカは黙っていた。黙ったまま名無しの男に寄り添って、古い血と
ふたり並んで、闇に揺らめく
あなたの話を聞きたいと言ったエリューカは、先程の一言でもう満足したかのようだった。
やがて静かな寝息を立て始める少し前、エリューカは隣に座る男の上着の袖をそっと掴む。男もそれを払わない。
視界の向こう、満天の夜空が洞窟の出口と黒い森の形に切り取られて見える。恐ろしいほどの星の数だった。
エリューカは出会ったばかりの相手にすっかり気を許して眠っているようだ。穏やかな呼吸が、寄せた身体から静かに伝わる。
こんな美しい夜は初めてだな、と名無しの男は思った。
そして恐らく、これが男にとって人生最後の夜だ。
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