第21話 幼女を本気で追い回すおっさん

「この部屋を使いな。別に二人一緒で構わないだろう? ああ、心配は要らないよ。ちゃんと鍵をかけられるから。木造だし、音は少し漏れてしまうかもしれないけど、気にしなくていいからね」


 クルシェ母はそんなことを言いながら、寝室を準備してくれた。


「もう! 余計なこと言わなくていいから!」


 二人きりになると、なんとなく気まずい空気になる。

 家族に意識されていると思うと、かえってヤりづらくなるものだ。


 さすがに今日は普通に寝よう。

 俺はそう提案するつもりだったのだが……


「ルーカスくん……?」


 クルシェの視線は俺の下腹部に注がれていた。

 まだ服の中にいるというのに、限界まで、いや、限界を超える勢いで大きくなってしまっていたのだ。


「ど、どうしたの……? そんなに興奮するようなことあった……?」

「俺にも分からないんだ……なぜか夕食のあとぐらいから、やけに身体が熱くなってきて……」


 俺も良い大人だ。

 酒が入っていなければ、ある程度は性欲をコントロールできる。


 もちろん今日は酒は飲んでいない。

 なのにまったく制御が効かないのだ。


 部屋の外からクルシェ母の声が聞こえてきた。


「そうそう。夕食に出した卑猥な形のキノコがあっただろう? あれ、食べると勃起障害も一瞬で治ってしまうほどの精力増強効果があるやつでね」

「お母さん、なに食べさせてんのさ!?」

「もしかしたらあんたの貧相な身体じゃ勃たないのかと思って」

「そ、そんなことないし! いつもちゃんと勃ってるよ!」

「そうかい? そりゃ余計なことをしちゃったね。あっはっは!」


 笑い声が遠ざかっていく。


「まったく!」


 ぷりぷり怒るクルシェ。

 だが同時に恥ずかしそうに頬を染めていて、その姿が俺の性欲をさらに掻き立てる。


 クルシェ母に乗せられるのも癪だが、しかしもはや歯止めが利くような状態ではない。

 俺はクルシェに抱き着こうとして――


「っ?」


 不意に、部屋の中に謎の気配があることに気づいた。

 ベッドの下だ。


 覗き込むと、思った通りそこには、


「わっ、ばれた!」


 クルシェの妹の一人が隠れていた。

 先ほどお湯に潜って、俺のアレを見やがったやつだ。

 九歳の五女で、家族の中でも一、二を争うほど悪戯好きらしい。


「さすがに九歳の子供にそこまで見せられるか!」

「うわーん」


 抵抗する彼女を抱え上げ、ドアの外へと放り捨てる。

 よし、これでもう誰もいないはずだ。


『我はおるがの』


 それはもうとっくに諦めた。


 今度こそ気持ちが萎えそうなところだったが、あの謎キノコの効果だろう、俺の高ぶりはまったく収まる気配がなかった。


 この後、めちゃくちゃセッ〇スした。







 翌朝、俺とクルシェが起きてくると、幼女たちが群がってきた。


「ねぇ、二人でどんなことしてたのー?」

「教えておじちゃん!」

「教えて教えてー」


 ニヤニヤしながら訊いてくるのは、すでに最低限の知識を教えられているからかもしれない。

 アマゾネスの性教育は一体どうなっているんだ。


「五歳頃から英才教育をしているからね。さすがに具体的なやり方はもうちょっと大きくなってからだけど」


 なんて恐ろしい種族だ……。


 この村にあまり長くいると精神が持ちそうにない。

 元より長居するつもりはなく、二、三日いたら帰るつもりではあったが。


「じゃあ、あたしらはちょっと出かけてくるから」


 クルシェ母と長女は朝からどこかに行くようだ。


「狩り? それならぼくも手伝うけど」

「まぁ狩りと言えば狩りだね」


 訊けば、ここ最近、山にワイバーンの群れが棲みついてしまったらしく、村人が何人か襲われて怪我をしたという。

 放っておくと村の貴重な食糧である山の動物たちが食われて減ってしまうこともあり、ワイバーンを一掃するためこれから総出で山に入るのだとか。


「ぼくも行くよ! 騎士学院で強くなったところを見せてあげる!」

「だったら俺も――」

「ルーカスくんはダメ!」


 なぜか俺が言い終わる前にクルシェが叫んだ。


「ダメって……少しでも戦力は多い方がいいだろ?」

「これは村の問題だから! お客様にそんなことさせるわけにはいかないよ! ぼくが参加すれば十分だし!」


 どういうわけかクルシェは随分と必死だ。

 そこまで言うなら……と、俺はしぶしぶ引き下がった。


 そして三人が出発するのを見送り、俺は妹たちの面倒を見ることに。

 家の中にいるとまた質問攻めに会いそうなので、外で遊ぶことにした。


「よ~し、それじゃあゾンビごっこでもしよう」


 ゾンビ役がそれ以外の者たちを追いかけるゲームだ。

 最初はゾンビは一人だが、タッチされた人間もゾンビになってしまうため、次々とゾンビが増えていく。


 長女の子である一歳児は見学で、四女が面倒を見ている。


「じゃあ俺が初期ゾンビな」

「「「わー、逃げろー」」」


 一斉に逃げ出す幼女たち。

 ていうか、速っ!


 さすがアマゾネス。

 これは本気を出さないと最初の一人をなかなか終わらないぞ。


『幼女を本気で追い回すおっさん……なかなかヤバい光景じゃのう』


 それを言うな。


 そんなふうにして外で遊んでいると、村人の集団が山に入っていくところが見えた。

 五十人くらいはいるだろうか。

 もちろん女性ばかりだ。


 クルシェやこの妹たちを見ても分かる通り、アマゾネスたちは身体能力が高い。

 普通の女性とは違う。

 それにクルシェだっている。


 しかしそうと分かっていても、ワイバーンの群れを相手に女性たちが戦っている間に、男の俺が子供と遊んでいていいのかと思ってしまうのだった。


『くくく、気になるならこっそり追いかけてみたらどうじゃ?』


 ウェヌスが促してくる。

 その笑い方がちょっと引っかかったが、俺はこいつの言う通りやはり村のアマゾネスたちを手伝うことにした。

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