第6話 やはり子供が欲しいのか?
とにかく醜態を晒すことにならずに助かった。
「まぁ、アリアから教えてもらったからな」
「そんな短期間でここまで……? 本当に羨ましいです。僕もルーカス様のような才能があれば……」
いやいや、ないから、才能なんて。
「……わ、私もお願いしていいでしょうか?」
と、そこへ次の挑戦者が名乗りを上げる。
アイリスだ。
最初に会ったときは明らかに強い敵対心を感じたが、他の連中同様、どうやら俺のことを認めてくれたらしい。
アリアの話にも熱心に聞き入っていたしな。
「もちろんだ」
「あ、ありがとうございますっ」
それにしても本当にアリアによく似ているな。
今は長い髪を後頭部でまとめてポニーテールにしているが、同じくらいの長さに切ったら俺でも見間違えてしまうかもしれない。
ただ身長差は結構ある。
年齢を考えてもアイリスの方が少し小柄と言えそうだ。
その割に胸はしっかり育っているようで、姉に引けを取らない大きさだ。
服の上からではさすがに形までは分からないが、きっと美乳に違いない。
って、いかんいかん。
どこを見ているんだ、俺は。
『そうじゃ、見る必要などない。想像するのじゃ。姉の裸を何度も見ているお主なら、きっと頭の中で服を取り払うことなど造作もないことじゃろう』
おい、勝手に頭の中に話しかけてくんな。
ていうか、お前どこにいるんだよ。
『今はアリアの裸を堪能しておるところじゃ、ぐへへへ……』
こいつは……。
気を取り直して、俺は剣を構えた。
アイリスと向かい合う。
……だ、ダメだ、ウェヌスのせいで想像しちまう。
昨晩のアリアの姿が脳裏を掠め、それが目の前の少女と重なってしまうのだ。
俺は思わず目を背けてしまう。
鎮まれ、俺の股間……。
この状態だと前屈みでやる羽目になってしまう。
『ヤる? ハメ?』
うるせぇ。
一方、なぜか彼女の方も視線がおかしかった。
俺を見てはすぐに視線が外れ、また戻ってきたかと思うと一瞬で視線がずれる。
そのとき、ちらっとだが下半身の方にも視線がいった。
まさか、勃起しかけているのがバレている……?
いやそんなはずはない。
まだ服の上からでは盛り上がりが分からない程度だ。
「ええっと……ルーカス様? アイリス姉さん?」
「「っ!」」
アルトの声でハッとした俺たちは、お互い気合を入れ直してようやく集中することができた。
アイリスが躍り掛かってくる。
「はぁっ!」
……なるほど、剣技の方も姉によく似ているな。
間断なく繰り出される斬撃を捌きながら、俺はそう分析する。
「たっ! ふっ! はぁぁぁっ!」
というか、似すぎている?
姉妹だから自然に似たというよりも、なんというか、意図的に似せたような感じだ。
なにせアリアの癖までそっくりなのである。
その中には今はもう矯正されたものも含まれていた。
つまり、一年以上前のアリアの剣技と瓜二つ、と言った方がいいかもしれない。
まぁでもおかしなことではないか。
アリアが騎士学院に来る前には、ずっと一緒に訓練していただろうし。
「っ……」
頃合いを見計らって攻めに転じた俺は、彼女を追い詰めていく。
首を狙った剣を寸止めしたところで、勝負あり。
「あ、ありがとうございましたっ」
「ルーカスさま!」
「るーかしゅしゃまー」
一通り相手をして模擬戦が終わると、二人の子供が元気に駆け寄ってきた。
エイラとエレンだ。
「ルーカスさま、つよい!」
「つおーい!」
目をキラキラさせながら俺の足に抱きついてくる二人。
どうやら懐かれてしまったらしい。
「どうしたらそんなにつよくなれますか!」
「なれましゅかー」
「そうだな。毎日欠かさずしっかり訓練していればきっと強くなれるぞ」
俺は二人の頭を撫でてやりながら当たり障りのないことを応える。
というか、それしか思いつかなかった。
「がんばります!」
「がんばるー」
「おう、頑張れ頑張れ」
それにしてもかわいいなぁ……。
どこぞのなんちゃって幼女とは違う。
やっぱ子供はこんなふうに純粋無垢でなければ。
『ほほう。お主、やはり子供が欲しいのか? だったら〈避妊〉を解除してやるから、今晩にでもまたセック――』
そういうところだぞ。
「お疲れ様でした」
アルトが声をかけてくる。
「……あの、ちょっと無理強いしてしまったかもしれないと反省しているのですが、迷惑ではありませんでしたか?」
「全然」
「そうですか。最初あまり乗り気ではないようでしたので……」
その通りです。
結果的にはよかったけどな。
「汗をかかれましたよね? よろしければお風呂に入られますか?」
「ああ、部屋でシャワーを浴びようと思う」
「いえ、せっかくですし、浴場の方をお使いになってはいかがですか」
どうやら屋敷の浴場を使わせてくれるらしい。
リンスレット家の人間しか入れないらしいのだが、
「ルーカス様は僕にとって義理の兄になられるわけですし……」
そ、そうか。
アルトは俺の弟に、アイリスは妹になるわけか。
俺は兄弟の末っ子だったので、何だか新鮮だ。
しかし悪くない。
「ルーカス様?」
「……その呼び方もやめてくれないか?」
「え? あ、はい。分かりました。では……ルーカス義兄さん?」
義兄さんだって
なんかいいな、これ。
「ルーカス兄さま!」
「るーかしゅにーしゃまー」
俺は思わず頬が緩みそうになるのを抑えることはできなかった。
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