第11話 美少女たちが触手に凌辱されて
岩場を進んだり海の中を泳いだりを何度か繰り返して進んでいると、嫌な気配を感じた。
察知スキルに長けたシーフのミリアナもほぼ同時に気づいたようで、声を上げる。
「気をつけて! 水中から何か近づいてくる!」
これから再び泳ごうとしていた俺たちは、急いで海から上がって岩の上へと退避。
直後、海中から大きな影が浮かび上がってきた。
「っ!?」
そのとき突然、水中から俺に向かって鞭のようなものが伸びてくる。
慌てて剣で弾き飛ばしたが、刀身にねっとりした粘液が付着してしまった。
「今のは……触手?」
襲い掛かってきたのは軟体動物の足のようなものだった。
蚯蚓のようにうねうねしていて、気持ちの悪い粘液に覆われている。
「本体が出てきます!」
マリーシャが怒鳴るが早いか、海中からそいつが姿を現した。
「な、何だこいつは!? 気持ち悪ぃっ!」
ノラクが後退りながら叫んだ。
それは磯巾着のように全身が無数の触手で覆われた魔物だった。
しかも結構でかい。半身が水中にいるため全貌を見ることはできないが、その影の大きさから判断して、全長四、五メートルはあるだろうか。
当然、触手の数も相当なものになる。
「っ……マッドテンタクルです!」
危険度Bの中でも上位に相当する魔物で、サハギンを好物としており、人間をサハギンと間違えて捕獲しようとするという。
ただし捕食する前に気づいて吐き出すらしい。
「あの触手の粘液は衣服などを溶かしてしまうそうです……! 水中服も例外ではないので気をつけてください!」
「マジか」
その言葉に動揺する中、ただ一人(?)テンションを大きく上げた奴がいた。
『うひょおおおおっ! 触手モンスターキターーーーーーっ!』
ウェヌスである。
『ぐへへへへっ、美少女たちが触手に凌辱されて……じゅるり』
このエロ剣め……。
触手が一斉に躍り掛かってきた。
って、こんなの一本一本に対応していては手が足りないぞ。
「ライトニングバースト」
フィオラ王女が雷撃を海へと落とした。
だが、
「効いていませんの……?」
「あの粘液のせいです、殿下! 電気を通しにくい粘液が身体を護っているため、雷魔法は効きづらいんです!」
雷撃を浴びても触手は一瞬動きが鈍っただけで、すぐにまた攻めかかってくる。
しかも粘液のせいで刃が滑り、斬ることができない。
「だったらこうしてやる」
「ルーカス卿!?」
俺は岩場を蹴り、水中にいる魔物目がけて飛んだ。
『まさかお主、被凌辱願望があったのか!?』
「んなわけあるか。――〈衝撃刃(ブレイドインパクト)〉〉ッ!」
触手の大元となっている塊目がけて大上段から剣を振り下ろすと同時、思いきり衝撃波を叩き込んでやった。
どうやら本体への直接的な物理攻撃には弱かったらしい。
マッドテンタクルの身体が衝撃波であっさりと潰れ、すぐに灰となって海水に呑み込まれた。
『ああああああああ、触手プレイがああああああああっ! 何でそんなに簡単に倒してしまうんじゃああああああああああっ!?』
海岸フロアの安全地帯に辿りついた。
今日はここで長めの休息を取り、次の階層へと進む予定だ。
「先ほどは助かりました、ルーカス卿」
「え?」
「マッドテンタクルは厄介な魔物です。我々だけではもっと苦戦していたでしょう。やはり貴方が居てくださると心強いです」
「ま、まぁ、一応役に立っているようで良かったよ」
ウェヌスのやつは拗ねているけどな。
『あそこは女子たちが触手で凌辱されるのがセオリーじゃろうが……』
まだぶつぶつ言ってやがる。
「殿下の方は相変わらずですが……明日からもよろしくお願いします」
フィオラ王女は、階層攻略中も俺と一切目を合わせようとしなかった。
視線を向けてきたのは俺の股間部分だけだ。
……早いところ着替えたい。
そんな俺の内心が伝わったのか、
「もう水中服は脱いでいただいて構いませんので……」
「あ、ああ」
ちらちらと下半身を見ないでくれませんかね?
テントを張って、そこでようやく水中服を脱ぐことができた。
いつもの服装に着替える。
軽く食事をしてから仮眠を取ることになった。
ノラクが強く主張したこともあって、俺は一人で休むことに。
てか、最初からそのつもりだったのだが。
「眠い」
久しぶりに泳いだせいか、それとも慣れない連中と行動を共にして疲れたのか、一気に眠気が襲いかかってきた。
未だに『我は諦めぬぞ……必ずや凌辱シーンを……』などと呟いているウェヌスをテントの隅に放って、俺は寝袋へと潜り込んだ。
◇ ◇ ◇
「……」
フィオラはゆっくりと瞼を開いた。
視線を隣に向けると、そこには規則正しい寝息を立てている傍付きの騎士の姿が。
顔の前で手を振ってみたが、起きる気配はない。
どうやらしっかりと熟睡しているようだ。
マリーシャを起こしてしまわないよう、フィオラは静かに身体を起こした。
テントを出る。
疲れてはいたが、しかし今の彼女にとってこの程度は何の障害にもならない。
強い復讐心に燃える瞳で、あの男が仮眠を取っているはずのテントを睨み据える。
「……あの男だけは絶対に許さないのだわ」
そしてそのテントへと近づいていくと、中から大きな鼾が聞こえてきた。
「ぐがぁ……」
寝ているようだ。
フィオラは覚悟を決めてテントの中へと忍び込む。
テントの真ん中で暢気に眠る中年男をひと睨みしてから、何かを探すように視線を彷徨わせた。
そうして見つけたのが、
「……神剣」
大事なもののはずなのに無造作に置かれていたそれへ、フィオラは手を伸ばす。
「これさえなければ、この男は……ふふ、ふふふふ……」
口端を吊り上げ、彼女は顔に不気味な笑みを浮かべるのだった。
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