第19話 反乱の行方
ミシェルの寄こした国軍は今のエリンザ軍を超える規模で、傭兵のうちの幾らかが逃げ出した。
続いてルイスやゼルが中に入り込み、
「ヤバいらしいぜ。賛同者にも裏切られて、勝ち目はなさそうだ。死ぬより、ただ働きでも逃げた方が良さそうだな。今なら軍事教練に参加しただけって事になるらしいし」
と囁いて、残りの傭兵も逃げ出した。
そうして、エリンザ公爵は首都へと国軍によって送られた。
牢から助け出されたハンスと公爵夫人も、後から首都へ送られた。
そして俺達は、陛下によって侯爵と公爵夫人とが爵位剥奪の上離宮に生涯幽閉される事をミシェルから聞かされた。
「それで、ハンスはどうなるんですか?」
「反乱に反対してたし、農業改革をやりたいって言ってたしね。平民にした上で、新しいエリンザ領主の下で、取り敢えずは農業の研究をしてもらうよ」
「ふうん」
少しホッとした。ハンスの希望通りと言ってもいい結果だ。
「でも、幽閉してる間に、何か画策したり、誰かが近付いて行ったりするなんて事はないんですか」
訊くと、ミシェルは顔色も変えず、
「ま、生涯っていっても、1年なのか10年なのかはわからないし、病気でコロリと逝ってしまう事もあるからねえ。叔父上は心臓が弱っていらっしゃるし、叔母上も呼吸器の持病がおありだし」
という。
そんな風にはとても見えなかった――と考えて、ゾッとした。
持病を悪化させて死んだというストーリーで、殺すと言っているのだ。
「どうぞ」
俺はハリスさんに差し出された紅茶を飲んで、気を静めた。
「というわけで、ご苦労様」
ミシェルがにっこりと笑う。
「次だけど――」
「続けて休みなしにこき使う気か!?」
「悪いねえ。でも、解散した傭兵の一部と無職になった領兵の一部が組んで、盗賊団になっちゃったんだよ」
「……まさか……」
「いいカンだよ、フィー。よろしくお願いするよ」
ああ、休みは首都の図書館に籠ろうと!本に囲まれて過ごそうと!くそ!
ルイスが、俺の肩を叩いた。
「仕方ないな」
「ああもう!わかりました!お願いされました!」
俺は報告をしたその直後に新たな任務を言い渡されたのだった。
「いやあ。フィー隊長の小隊にいると、実地訓練に事欠かなくて嬉しいです!」
マリアは実に嬉しそうに笑った。
「それは言えるか」
ガイも、満更ではないという顔だ。
「退屈しないわ」
ロタが上品な仕草で微笑む。
「フィー隊長、安穏とした人生は当分来やせんぜ。賭けたっていい」
ゼルはキヒヒと笑う。
それを見て、ミシェルはロイヤルスマイルというやつを浮かべた。
「フィーは皆に慕われてるんだね。良かった。OBとして、安心だよ」
俺はミシェルの言葉に、力が抜けた。
もういい。何か言ってもどうせ敵わない。
「……では、行ってきます」
「はあい」
ああ。俺の借金はいつ消える。おのれ、パールメント。クラレスめえええ!
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