第16話 推論と報告
情報を持って、全員が宿に集まった。
「ふんふん。そうか。なるほど」
「なるほどじゃねえよ。フィーは何敵のど真ん中でハンスと趣味の話で盛り上がっちゃってんの?」
ルイスが言い、皆がじいっとフィーを見る。
「ルイスだって、お、お、女の子と、その」
ニヤリとルイスとゼルが笑った。
「隊長はまだお子様ですね。ヘッ、賭けるまでもねえ」
「いいんだよ俺は!大妖精になるんだから!」
「なんです、それ」
「あのね、ガイ」
「解説しなくていいから、ロタ。
それより、結論だけど。間違いなく公爵夫妻は反乱を起こしても王位を奪うつもりだな。決起の時は麦の刈り入れ後、つまり1ヶ月前後。兵も兵糧も武器も集まって来てる。リアンが国境付近で衝突騒ぎでも起こして国軍を釘付けにし、それと同時に公爵と賛同者が、首都に攻め入る計画だろうな。
これをすぐにミシェルに知らせておこう」
「後は説得か」
ガイが重い溜め息をついて言う。
そっちが難しそうだ。説得に応じるようなら、こんな計画を立ててはいないだろう。
「事態を収めよ、だろ。決起直後に倒してやればおしまいだろ」
ルイスが脳筋的な事を言い出す。
「それでも無駄な血が流れるし、こっちが負けるかも知れないじゃないか。こっちは4人だぞ」
言うと、ロタが目を丸くした。
「え。流石に応援が来るんじゃありませんの?」
「リアンを放っておけば、本当に攻め入って来る」
マリアが、フンと鼻息を荒くして言う。
「自分がこの身に代えても、敵の総大将の首をとってみせましょう!行ってきます!」
「まだだって!早いよ、マリア!」
マリアを皆で抑え、俺は溜め息をついた。
「でも、本当の所、どうするんだ、フィー」
「まずはミシェルへの報告。これでリアンは完全に任せる。場合によっては、外交でリアンの介入を阻止できるだろうし。
俺達は、周辺とここから首都までの領主に、万が一の時の協力を要請するとかかな。せめて、公爵に利する行為は取らないのが最低だけど。王から圧力をかけてくれるとありがたいんだけどな」
皆、考え込んでいる。
「上手く行くかな」
「あとは……ハンスに、反乱に反対の立場を表明してもらうくらいかな。
ああ。何でこれがパールメント案件なんだ?上手くしたら、どれだけ借金が減るの?」
「上手くミシェル殿下に一生使われる未来が見えるぜ、フィー」
全員が、頷いた。
集めた情報と推測とお願いと小隊の予定とを伝書鷹でミシェルに知らせると、まずはハンスに全てを話して協力を要請した。
ハンスは溜め息をついて、畑を見やった。
「せっかくの麦も領民の暮らしも、踏み荒らすつもりなのかな、あの人達は。リアンと手を組むとか、後の事を考えてないんだな。全く」
そして、もう一度深く溜め息を付き、俺に向き直った。
「迷惑をかけて悪いね。僕から説得はしてみるけど、多分聞かないよ」
「ううん。そうか。その時は、鎮圧側の先頭に立ってくれるとありがたい。
勿論、戦場に立たせる気はないから」
「うん、ありがとう。鍬は振るえるけど、そっちはからっきしなんだよ。学校でもずっと赤点でさ。兵役義務も、弟が行ったんだよ。終了間際に、伝染病で亡くなったんだけどね。
ああ。あいつが生きていれば、喜んで父と組んでただろうなあ」
コメントし難いな。
「まあ、無理とか危ない真似はしないで」
「わかった」
ハンスはそう言って笑った。
そしてその日から連絡が取れなくなり、調べたところ、屋敷の地下牢に幽閉されているという事だった。
更に1週間後。黄金の絨毯は、少しずつ、刈り取られ始めた。
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