第3話:アイリスとウィル
その後の調査を進めると、ギル王子の女性に対する様々な好み、及び弱点が明らかになってきた。そして、ギル王子好みの女性になるべくウィルは日々ダンス教室、お料理教室と、理想像になるための鍛錬に余念がない。
「正直、剣の稽古よりもお料理教室の方が楽しいよ。」彼はそう言いながら、今日お料理教室で作ったという、白身魚のパイ包みを、騎士団の稽古帰りの私に差し入れしてくれた。
「ウィル! これ香ばしくってすっごく美味しいよ!」実は毎回ウィルの差し入れを楽しみにしている私は、今日もウキウキした気分で彼の手料理を食べる。
「そう言ってくれてよかった。」彼は満面の笑みを浮かべると、私の髪の毛をふわりと撫でた。「君がこうして美味しそうに食べてくれるのが、僕の楽しみなんだ。」そう言いながら。
私が一通り食べ終わったところで、ウィルは辺りを見回してこう切り出した。
「それでね、計画のことなんだけど。」すかさず私は彼のほうに身を寄せる。
この計画は現時点では一応、王と王妃、アル宰相夫妻、及び私たちしか知らないこととなっているからだ。
「来年から、一年間各国の王族及び高位貴族が、正式に公務に付く前に入らないといけないサントルド学園に僕たちは入るでしょう。そこで僕とギル王子は関係を深めていき、最終的にはギル王子に君との婚約破棄をさせなければいけない。」とウィルは言う。
「そうね、それで何か計画の変更でもあるの?」と私は聞いた。
「いや、筋書きとしてはそれで確定なんだけれど、ギル王子と例の姫の間に接点をこの辺りで作っておこうかと思って。」と彼はサファイア色の瞳をきらりと輝かせて言った。
「わかったわ。つまり、今度ノロタイド王国からギル王子が私の誕生日を祝いに訪問した時に、偶然を装って例の姫と会わせるのね?」私は彼の言葉を引き継いで言った。
私たちが考えた例の姫の設定はこうである。
マリノネア王国のアイリスには実は1つ違いの妹がいた。しかし、この妹というのは王様が自分のお付きの侍女に手を出し、産ませた子どもだったため、あまり表に出ることはなかった。
そんな妹の存在を疎ましく思ったアイリスは、妹が表に出ないことをいいことに密かにいじめていた。
そんな場面にギル王子が「偶然」出くわすことから、私たちの作戦は始まる。
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