第2話 絶対に会いたくない人に会ってしまった件


「なんで、ほんとなんでいるの?」


見ることはできないけれど、あの声は間違いなく琴音だ。

耳がしっかりと覚えている。

パニックで頭がよく回らない。彼女は北海道にいたはずだ。


―――だって、悠月琴音は僕の幼馴染なんだから。


中学2年の夏までは、相手を待って一緒に登校するような仲だったんだから。


―――生まれる前から家ぐるみで付き合いがあり、物心がついた時には、いつも彼女と遊んでいた。大抵僕が折れるから、喧嘩したこともない。


本当に楽しかった。幸せだった。――――あの時までは…



ある時僕は事故にあった。


「当たり所が悪かった。」医者に何回もそう言われた。


つまり僕はその事故で、両目を失明した。


奇跡的に、他は怪我などで済んだのだが、目だけは、どちらも確実に無理だと言われた。


母さんは、本当にやさしい人だった。僕のことをとても気遣ってくれていた。

だからこそ、僕よりも、母さんのほうが大きな傷を負った。今も、ショックで病院に寝込んでいる。


学校なんて行けるはずもなく…。そうなると絶対彼女は連れ出しに来るだろう。こんな破滅状態で、そんな現実を彼女にまで見せるなんてしたくなかった。


そして、僕は何も言わないまま…東京に出た。


何の計画もなく飛び出したわけじゃない。

もともと趣味でやっていた音楽の投稿が、有名人や歌手の方なんかに注目されて、

1億回再生されたのだ。それによって、プロのお誘いをたくさん受けた。その中の一つを引き受けて、どのみち東京へは行かなければならなかった。

父さんは、母さんに見舞いをするために残った。東京へ行くことも、最初は反対したが、理由や仕事ができることを伝えると…渋々了解してくれた。


本当にいい人だと思う。僕のわがままを、聞いてくれたんだから。



そこまでして彼女から離れたのに、今日は、彼女と会ってしまった。

普通なら、「ただ一回あっただけ」と思うだろうが、彼女なら絶対に僕を見つけてしまう。


昔から、どこへいっても必ず彼女が最初に僕を見つける。本人も何故かわからない。


多分。僕の歌を聞いてばれてしまったんだろう。そして東京にいることを知り、

それだけで僕を見つけてしまったのだ。


正直ここまでとは思わなかった。今日から僕は神様を信じるとしよう。


……一体どうなるのか、もうこうなった以上、正直にすべて話すしかないのか。


はあ、こんな話なんて絶対知らない方がいいのに。


残酷だ、神様は…。









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