音楽の神様-2

つづき!


(どっどどどうしよう握手してもらうのはだめだろうかサインはどうだろうかでもきっと舞台のあとでお疲れだから無理はさせちゃいけないけど演奏会素晴らしかったですCDも買いました楽譜も買いましたピアノ弾きますとか言いたいけど突然そんなこと言われてもすぎやま先生ご迷惑だろうしあああでもでもサインいやせめて握手をああああ)


 と思っていたら、待合室の外でこちらをずっと気にしていたカップル? 若夫婦? がやってきて、男性の方がすぎやま先生に話しかけた。


「すみません失礼します。あの、私たちすぎやま先生の大ファンでして、先ほどの演奏も聴かせていただいて……あの、大変に感動しました! もしよろしければ、サインをいただくことは……」


(勇者現る!!)


 しかし奥様が穏やかに


「ごめんなさいね、サインはちょっと」


 とお断りしたので、


「あ、じゃあ握手だけでもさせていただいても……」

「ああ、はい」


 すぎやま先生が手を差し出した!


(今! 今しかない!!!!!)


「す、すみませんが便乗して、わ、私も握手させてください!」


 と、図々しくもカップルの後に握手をさせていただいた。


「あの、来年も元気なお姿でまたお会いできたら嬉しいです! よろしくお願いします!」


 もう舞い上がっちゃって、我ながら何言ってんだかって感じになってもうもうもう!! もっと上手に何か言えればよかったのに!!!!


 すぎやま先生の手は細くて白くてふんわり柔らかで、この手から数々の名曲が生まれたんだと思うともう本当に神の手で、その手に触ることができて本当に本当にもう一生の思い出、人生の自慢にして生きていくと決めた出来事だった。


 新幹線の時間が近づき、すぎやま先生と奥様はホームを移動する中、他にも気づいたファンの人たちにあれこれ話しかけられていた。

 やはりサインは断っていたが、親子連れのお母さんから小学生くらいの息子とのツーショット写真をお願いされていた。

 ああこれは一生の宝になるが息子本人がその価値をわかるのは大人になってからだろうなあ、と微笑ましくもうらやましく思ったりした。


 帰りの新幹線で大興奮しながら、来年のコンサートも絶対また来よう、それまでに放置しているシリーズをクリアして今日買ったCDも全部聞いておこうと約束して、友人と別れた。


 神様!!


 どうかいつまでもお元気で長生きしてください!!!!



 世界的指揮者のカラヤンに会うことが夢だった。いつか来日演奏会があったら聴きに行ってサインをもらいたいと思っていたが、亡くなられてその夢は潰えた。


 ハネケンさん(羽田健太郎さん……大好きでした)の演奏会に行くことも叶わなかった。


 今は亡き山本直純氏にサインをもらったことがある、というのが私の人生の自慢だったが、わかってくれる人がいなくてこのすごさが伝わらないのが悲しい。


 すぎやまこういちさんと会って直接言葉を交わして握手をした! というのはそれに匹敵、いや、上回る自慢である。ドヤァ!!!!


(20180504-2)

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