アフタータッチ考

 クラシック曲で「アヴェ・マリア」というタイトルの曲は、ぱっと思いつくだけで何曲もあるが、その中でも特に好きなのはブルグミュラー25の練習曲の「アヴェ・マリア」。

 先生のお宅にあるグランドピアノでのレッスンで、「生ピアノならではの表現」があることを教わった曲でもある。


 ピアノは打弦楽器である。

 鍵盤とハンマーが連動して、鍵盤を押すとハンマーが持ち上がり、張ってある弦を下から叩いて音を出している、というのは周知の通り。

 電子ピアノは、その音をデジタルで再現してるだけだから、打鍵したらそれで終わり。

 生ピアノの表現はやっぱり奥深くて、打鍵してそれっきりではなく、


「打鍵後に指に力を入れて音に奥行きを持たせる」


 ということが可能になるんだそうだ。


 エレクトーンに「アフタータッチ」という、鍵盤を押さえた後に力を込めて音を大きくする(足のボリュームペダルではなく)・音の表現を変える(強く弾くと音が変わる設定にできる)奏法があって、ほほうさすが電子鍵盤楽器だなあと思っていた。

 なんと減衰音の生ピアノでも、同じようにアフタータッチで表現できる音があるんだと知って衝撃を受けたのである。



 難易度の高くない、きれいな和音の気持ちいい曲なので、練習が苦ではなかった。レッスンで、わりとうまく弾けた感じかも、と思ったら先生に


「もしかしてキリスト教徒ですか……?」


 と言われて、びっくりしたのもいい思い出。

 えっ、実家に仏壇のある普通の仏教徒ですよと答えたが、あの質問の意図はもしかして、とても遠回しの褒め言葉だったんだろうか。



 余談だけど、これ電子ピアノに内蔵されているパイプオルガンの音で弾くと、荘厳さが増してものすごくイイ感じになる。

 パイプオルガンは持続音だから、弾き方が変わってくる。それはいずれ別の機会に。


(20150927)

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