ゴールからの逆算

 ソナチネというのは各作曲家が書いた小規模なソナタ形式、という感じの小作品を集めた教本である。ツェルニー何十番みたいにソナチネさんが作曲した曲集、ではない。

 本来のソナチネの楽譜は分厚い上下巻で、なんだかすごい数の曲が収められている。音高、音大を目指すプロ志向の子はミチミチに攻めていくのかもしれないが、相当な努力が必要になってくるだろう。


 その次は、ソナタという曲集が待っている。こちらもソナタさんが作曲した曲集ではなくて、各作曲家によるソナタ形式の以下略。

(※ソナタとは何か、という話はグーグル先生がお詳しいので、私から説明するまでもありません)


 ソナタの次は、いよいよショパンのエチュードだのベートーヴェンだのを攻めていくらしい。このあたりまでにツェルニーは40番から50番、バッハの平均律も弾けるようになっているレベルでないと音大受験は難しいという話。



 少子化の影響もあってか、今の三流(と言っては失礼かもしれないが)音大を受験する場合はそこまで求められておらず、生徒数確保のためにゆるいレベルで合格できるようになりつつある、らしい。

 マイナー音大に行って、その後の人生はどうすんのかねと、よその子ながら心配してしまう。

 音楽を仕事にできるのは一握りで、結局は普通の企業に就職して営業やったりする人がほとんどというデータもいつか見たことがある。音楽業界で生き残るのはやはり難しいようだ。


 音大合格レベルを目標にした場合、高校生の時点でショパンやベートーヴェン、バッハの平均律が弾けるようになっていないと厳しい。

 となると、中学生の間にソナタをクリアしツェルニーは40番を指定テンポで弾けるくらいでないといけない。バッハはシンフォニア合格。

 つまり小学校高学年でソナチネとツェルニー30番をマスター、バッハのインヴェンションは余裕で弾けないと厳しく、低学年のうちにはハノンと18のブルグミュラーを完璧に弾けるくらいが望ましいわけだ。25なんか幼稚園レベル?


 いっぱしのピアニストになるためには、持って生まれた才能と、相当な、本当に血の滲むような努力が必要なのである。本人も親も先生も。


 ちなみにごく一般的にのんびり趣味のピアノで習っている小学生は、25のブルグミュラーを発表会で弾いて上手になったねえ〜って褒められるのが普通のレベル。

 バロック弾ける子は本当にまれで、ハノン練習は20番に到達する前にだいたい挫折するらしい。



 楽しくピアノを続けられる子を育てるのが第一目標の私のレッスンの先生は、それでもときどき今時の子は努力や工夫をしない! と愚痴っている。私のときなんか泣きながら練習したけどね、それでも辞めなかったから今があるんだけど、とよく言っている。

 この曲弾きたい! という明確な目標がある子はやはり伸びるそうだ。ただ、そうやって弾きたい曲を持ってくる子がそもそもいないという話。


 もしかして子どもの頃からやっていたら、結構いいレベルになってたんじゃないの? と私は先生に言われたこともあるが、いやいや、本当に子どもの頃からピアノを習っていたらきっと、ソナチネソナタあたりで限界を感じていたと思う。

 大人になっていろんな曲を知っていろんな体験をしてこその、今のピアノなのだ、おそらく。



 音高、音大を目指す子たちの将来に、光の当たらんことを。いつか努力が花開きますように。


(20170422)

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