第132話 息抜きの食事
取りあえず、ここから戻ろう。帰ったら再び作戦会議だ。
そして俺たちは出発。ここからウェレンまでは別ルートをとっているようで、森の中を通り、数時間でウェレンへ到着。
到着するなり、すぐに俺たちは解散。ステファヌアが明日の時間を説明。
「あーわかったわかった。もう疲れちまった。メイドたちに時間は聞いたから、もう遊びに行くわ」
ケイルはそう言って、警備の兵士と一緒にどこかへ行ってしまった。
要人たちも、疲れがたまっているようでとぼとぼと自分たちの部屋へ行ったり、街へ飲みに行ったりとちりじりになる。
「──ふぅ。今日は疲れたのう」
「ええ。ちょっとくらい、遊んでも罰は当たりませんよね」
兵士たちの間にも、どこか弛緩した雰囲気が流れている。
「なんだよ。敵の奴ら、大したことねぇじゃねぇかよ」
「これなら楽勝だな~~」
「ああ。なんたってこっちにはクリム様がいるんだからよぉ。何事もなく、巡礼祭は終わりそうだな」
その姿を見て俺は不安な感情になる。
決して、まだ巡礼祭は終わっていない。
確かに相手を撃退はした。しかし相手はまだ全力を出してはいない。間違いなく何か隠している。
このままいったら間違いなく明日ひどい惨状になる。
俺はメイルのそばに行った。
肩をなでおろし、ため息をついている。やはり戦いがあったことや、バカな王族の子守りをして疲れているのだろう。
それでも仕事を終え、任務を終えつつも、かしこまった様子で決して油断することなく周囲をきょろきょろと見ている。
あの王族にはもったいないくらい、いい人だと思う。
そんな彼女の肩を優しく叩き、話しかけた。
「メイル。この後、作戦会議しないか、俺達だけで」
「作戦会議、ですか?」
「ああ。このまま何事もなく終わるとは思えない。俺たちの部屋で食事をしてさ、その後ゆっくり話し合おう」
その言葉にメイルは目をぱちくりさせると、真剣な表情になり言葉を返して来る。
「確かに、私も疑問に思っていました、うまくいきすぎていると──」
「私も、行かせてもらうわ」
クリムも腰に手を当て、自信満々に言い放った。
「──それは助かる。じゃあ、一緒に行こうか」
「クリムも来るフィッシュ。一緒に食事はうれしいフィッシュ」
ハリーゼルのテンションが上がる。彼女は、一人で食事をするより、みんなでワイワイ食事をするのが好きなタイプだ。
まあ、真剣な事ばかりだと息が詰まるから食事位は楽しくいこう。
そして俺たちは部屋へと向かっていく。
部屋へ着くと、しばしの間体の疲れをとるために休んだ後、みんなで食事作りだ。
この国での移動。とても寒かった。最後の方は、指がかじかんできたぐらいだ。
だから、体が温まるようなものがいいだろう。
決して裕福な状況ではないけれど、限られた食材を生かしおいしいものを作る。
「うん。おいしそうだね、フライ」
「いいじゃない。センスあるわねあんた」
「ありがとう。レシア、レディナ」
出来たのは塩で味付けた野菜のスープだ。葉菜類や根菜の野菜を塩や市場で安く買った香辛料で味付けをしたもの。
それから安く買ってきたライムギのパンに干した動物の肉。
そして盛り付けや準備などをして準備は完了。
俺たちにクリム、メイルを含めると七人。この部屋の小さい机では窮屈なので、俺とフリーゼは近くの出窓に皿を置く。
「じゃあ、食べようか」
「そうフィッシュね」
そして「いただきます」をして食事に入る。
要人たちがいた昨日と比べると質素だが、それでもおいしい。
「ごめんねクリム。メイル」
「私たち、何かしましたか?」
メイルはキョトンとした顔で言葉を返す。
「ほら、俺たちの食事って、すごい質素だと思うんだ。教会から出される食事と違って──」
俺達がメイルとクリムに一緒日食事に誘った理由。それは、一緒に食事をする事で親睦を深めたかったからだ。
けれど考えてみれば、二人とも教会でそれなりの地位にいる。
食事だって俺達が出す食事よりずっといいものが出ているはずだ。
それを考えれば、作戦会議は食事を終わった後でもよかったかもしれない。
しかし、そんな心配は杞憂に終わった。
「心配しすぎよ。たまには、みんなで楽しく食べるのも悪くないわ」
そう言ってクリムがスープを口に入れる。
すると、スープを口に入れたメイルの目がキラキラと輝いた。どうやらお世辞ではないようだ。
「うん、おいしいわ!」
そう言ってくれると作っている方も嬉しい。
「別に、教会での食事は豪華確かもしれないけれど、身分の高い人との食事はマナーがうるさいし、息も詰まるわ」
「私も、たまには楽しく食事をしたいと考えていました。それに、こうして一緒に料理を作ったり、食べたりするのも、悪くはないです」
二人とも、にっこりと機嫌がよさそうに話す。二人が気に入ってくれて本当に何よりだ。
食事に誘った買いがある。
せっかくのみんなでの食事、何も話さないというのはもったいない。
「メイル。ウェレンでの暮らしとかどう?」
「暮らし……どうしてですか?」
「息抜きだよ。せっかくみんないるんだし、食事くらい楽しく過ごそうよ」
戸惑うメイル。いつもしっかりしていそうな彼女が、戸惑う。
すると、隣にいるクリムがパンを食べ終わると、自慢げに話してきた。
「じゃあ私から行くわ──」
そう言ってクリムは生活のことなどを話す。
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