第128話 激闘の始まり

「ハウゼン? やはりスパルティクス団。そしてあいつが親玉──」


 俺は前日にスパルティクス団のことは聞いていた。ハウゼンがその親玉で、要注意人物だということ──。


「フライ、フリーゼ。ここは私に任せて、あんた達夫婦はそっちのデュラハン達を始末しなさい」


 そしてハウゼンとクリムがにらみ合いながら向かい合う。


「ほほう。あんたみたいなしょんべん臭いガキが、私と戦おうってのかい」


「言うじゃないおばさん。あんたなんて、私一人で十分よ」


「本当かい。クソガキの実力、たっぷりと見させてもらうよ!!」


 そして二人は互いに武器を持ち、激闘が始まった──。



 一方俺たち。クリムの茶化すような口調。あおるような言葉を無視してデュラハン達に視線を向ける。

 するとフリーゼはそのデュラハン達の先を遠目に視線を向けた。


「この奥から、何かが来ます」


「本当に? 真打ってやつかな……」


「わかりません。ただ、デュラハンなんかより、強い気配というのは分かります」


 俺は周囲を確認。

 すでに一部の冒険者はデュラハン達と戦闘を開始している。

 見た所かなり善戦しているのがわかる。


 これなら、デュラハン達は彼らに任せてもよさそうだ。

 俺達は、そいつらと戦おう。


 そしてフリーゼの言葉通り、森の奥から目にもとまらぬ速さで誰かが向かってくる。俺とフリーゼはすぐに飛び出して対応していく。



 そして接近してわかった。向かってくるのは二人。


 浅黒い肌にスキンヘッド、筋肉質で長身な男。

 もう一人は目つきが悪く、赤髪でロングヘアの女。


「気を付けてください。そいつらはかなりの強敵です」


 後方から叫び声が聞こえる。メイルだ。

 メイルが時折襲って来るデュラハン達をなぎ倒しながら、警戒した目つきで叫んできた。


「彼ら二人はスパルティクス団の幹部。「三刑士」と呼ばれる人物です」


 幹部。その言葉にフリーゼはピクリと体を反応させ、俺は表情を険しくする。

 フリーゼは言っていた魔力の気配、そして幹部。


 どれくらいかはわからないが実力者に違いない。


「男の方はヴィッツ。女の方はザニア。両方ともかなり手ごわい相手です」


「ありがとうメイル」


「それでは、私とフライさんで戦いましょう」


「そうだね」


 俺はフリーゼに言葉を返す。どんな敵かわからないし、他にも戦力を回さなければいけない。

 どんな戦術を使ってくるかわからないけれど、必ず勝とう。

 というか三刑士っていうくらいだから、もう一人いるんだよな──。



 すると後方からもう一人奇襲を仕掛けてくる人物が現れる。

 長細い剣を持っていて、一気に突っ込んできた所にそばにいたハリーセルが対応。


「させないフィッシュ」


「ほう、いい才覚を持っている」


 その人物は騎士の格好をした金髪の男。

 二人に比べれば幼い顔つきだが、どこか薄ら笑いを浮かべている人物。



「あれはグラン。二人に比べると若いですが、それでも戦いに関する技術はなかなかのものです」


「そうフィッシュね。こいつは、私に任せるフィッシュ」


 ハリーセルは自信たっぷりに言葉を返す。あいつは、ハリーセルに任せよう。

 そしてハリーセルとグランは互いに見合い、戦いを始めた。




 そして前方。


「な、何だこいつらは──」


「慌てるな、国王様たちの警護のため、戦うぞ」


 首から上がない騎士、デュラハン。

 その肉体は灰色に強く光っていて、闇の力が感じられる。



 冒険者達はやはりデュラハンと会ったことがなく、戸惑いを見せていた。

 オロオロとしながら、何とか戦っている。


 東側では俺やメイルも手伝っているせいで何とか持ちこたえているが、前方からも襲ってきているようで、そこでは一般冒険者たちが何とか苦戦しながら戦いを繰り広げていた。


 そしてそこに現れたのがレディナとレシアだ。


「デュラハン達め、僕たちが加勢するよ」


「そうねレシア。こいつらは、私達が引き受けるわ」


 そう言って二人は襲い掛かってきたデュラハン達を一掃。その姿に冒険者達も勇気づけられる。


「おおっ、あの二人やるじゃねぇか」


「俺たちだって負けてらんねぇぞ」


 その姿に周囲の冒険者達も勇気づけられ、士気が上がる。


 レシアとレディナはデュラハン達に立ち向かっていった。

 冒険者達も併せて、大乱戦になる。


 デュラハン達は、そこまで強い敵ではない。少し魔力が強いだけの、ザコ敵ともいうべき存在。

 あの二人であれば、油断さえしなければ勝てる相手。


 要人たちを守るため、大激闘が始まっていた。




 そして俺とフリーゼはヴィッツ、ザニアへと視線を合わせる。


「さあ、お前たちの好きにはさせない。行かせてもらうぞ」


「──あんたが相手ぇ? 私達とちゃんと戦えるの?」


 ザニアの挑発、俺もフリーゼも全く乗らない。冷静な物言いで言葉を返す。


「当然だ。それが仕事なんだから」


「はい、私達は──負けるつもりはありません」


 対してザニアはにやりと笑い、じゅるりと唇を舐め回す。

 ヴィッツは仁王立ちし、見下す様にしてこっちを見ている。



 メイルは要人たちの前にふさがり、剣を構えている。周辺の襲って来るデュラハンは、すべて倒したようだ。


「この人たちは私が守ります。安心して戦ってください」


「分かった。ありがとう」


 俺は安堵の表情で言葉を返した。

 流石だ。考えてみれば相手は裏社会のルールを守らないやつら。いざ負け寸前となれば彼らを人質にとって無茶な要求をしたりすることだって考えられる。


 メイルは以前からこういうやつと戦っていた。だからその特性を理解し、先手を打ったのだろう。


 これで、俺達は心置きなく目の前の相手に集中できる。すごいファインプレーだ。


「あとは、こいつらから要人たちを守るだけだ」


「──そうですね」


 そう言って俺とフリーゼは正面にいる敵に視線を向けた。

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