第11話 唯一王 フリーゼと食事へ
ウェルキは俺をにらみつけながら歯ぎしりをしている。こいつはとっても感情的な奴だ。おそらく理論では図っていても感情がそれを許さないのだろう。
そして彼を抑えているアドナはイラつかせながら俺を見つめている。
「唯一王よく聞いておけ。今回は確かにヒスイを手に入れたのは貴様だ。よって手柄は貴様にやろう。しかし、雑用係の貴様がパーティーをまとめられるとは思えん。ま、せいぜい無駄にあがいておくことだ」
負け惜しみのようなこのセリフ。今のアドナ、いつもの冷静なそぶりの中にどこかイラつきがあるのを感じた。
そして彼らはこの場を去っていく。どうにかトラブルを乗り越え、俺は深呼吸。
すると、リルナさんはにっこりと微笑を見せた後、俺に耳打ちして一言。
「すいませんね。残りの手続き、すぐに行います」
そして手続きを終え、フリーゼの登録者カードが渡される。
「これで手続きは完了です。フリーゼさん、これからも同じ冒険者仲間としてよろしくお願いします」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いいたします」
それからフリーゼはリルナさんに精霊たちのことを話し始める。
遺跡の場所のことも。
その言葉にリルナさんが不思議そうな表情になる。
「ありがとうございます。しかし、他の遺跡の場所、教えていただいて大丈夫なのですか?」
「大丈夫だ。そっちの方が何かと都合がいい」
多くの冒険者たちがダンジョンに来ることは冒険者にとってメリットだ。
もし自分が不意を突かれて、ダンジョンに倒れたとしても、やってくる冒険者に発見されて救助される可能性が高い。
おまけに襲ってくる魔物に対して、複数のパーティーで挑むことも出来る。それならそれだけ有利に戦える。
まあ、分け前が少なくなってしまうのはデメリットだけど、失敗してもらえないよりははるかにいい。
「そうですか。わかりました」
フリーゼも納得してくれた。さて……。
「それで、この後どうしようか」
フリーゼのお腹が鳴っているのを聞いた。そういえば朝から何も食べていない。お腹が空いたんだな。
そして俺は周囲を見回す。
「とりあえず、あれでも食べてみようか。食事にしよう」
「──そうですね」
俺が指さしたのは街一番の食堂。
そこに入り、日が良く当たる街の食堂のテラス席へ。
鳥のステーキとサラダを食べた後。店の後へ。
ちなみに、フリーゼはその料理をおいしそうに食べていた。
「そんなにおいしい? その料理」
「はい。遺跡ではそこら辺の魔物をとって焼いて食べていましたから、こういった人間界の料理、うわさには聞いていましたがとてもおいしいです」
あの場所じゃあ仕方がない。
そこまで言うなら、もっとおいしいものを食べさせてあげよう。
俺は店を出た後、中央の広場へ。いつもミュアとキルコが食べていたあの店がある。
俺は周囲をよく見まわすと、その店はあった。
「あの店の食べ物。食べさせてあげたいんだけど。食べてみようよ」
「──わかりました」
それは出店であった。そこに近づく。店のおじさんはパフェを売っていて、俺はお金を渡してパフェを二つ購入。
出店のパフェにはたっぷりのクリームにカラフルなフルーツが盛り合わせとしてついていて、とてもおいしそうだ。
フリーゼはそれを見て最初は不思議そうな表情をしていたが、すぐにクリームの部分を一口かじってみる。すると──。
「これ、すっごい甘くておいしいです!」
彼女は口元を抑え、驚いた表情でフリーズしている。確かにふわふわなクリームと、甘酸っぱいフルーツの味がバランスよく合わさっていて、とてもおいしい。
そして、おいしくパフェを召し上がる。
ベンチにちょこんと座り、オホンと一回咳をした後、今後のことについて話す。
「それでさ、この後なんだけど、俺はどうすればいいの?」
するとフリーゼはしばしの間沈黙し、答えを出した。
「他の精霊たちの、開放──でしょうか。他の精霊たちも、開放を望んでいるとの声を聴いているので」
つまり、他の遺跡に行って同じように精霊たちに会いに行けばいいということだな。
「でもそれって、簡単じゃないよね」
「でしょうね。皆、長年の孤独の中で何かしらの闇を抱えていますから。一筋縄ではいかないと思います」
癖のある人たちばかりってことか。大変そうだけど、力になれたらいいな。
あと、いつものような平坦な口調だが、右手を口に当て、どこか必死になっているのがわかる。
「他の精霊たちも皆役割を失っています。どうすればいいのかわからない状態になってます」
そしてどこか焦った表情のまま、話しかけてくる。
「お願いします。あなたしかいないのです。あなたには、精霊たちを解放するという広大な力があります。それでいて私を利用することを考えなかった」
「利用……? そういう人がいるってことか?」
「この使い手の中には、強大な精霊の力を悪用しようと考えている人もいます」
なるほど。力の悪用ってことか。
「はい、あなたを解放するといって、開放した瞬間、精霊たちを奴隷のように扱う事態が起きているのです」
なるほど。精霊はそれに関する使い手がいなければ外の世界にいることはできない。だからそれを悪用して、自分の欲望を満たそうとしている人がいてもおかしくはない。
「わかった。戦うよ」
「──ありがとうございます」
確かに、俺もそういう存在は許せないし、彼女も同じ精霊仲間としてそれを願っているのだろう。
だから、一緒に戦おう。
「もう一つ、これから二人で戦っていくということを考え、尋ねたいことがあります」
「何?」
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