第10話 唯一王 元パーティーと再会

 これで報酬ゲットだ。

 すぐに俺は証明証を受け取る。


 その後、手続きを行っている最中、入口の扉がキィィと開く。そしてその瞬間聞きなれた声の罵声が飛び始める。



「おいフライ! 俺たちをこんな目に合わせやがって、今度こそ俺の手でぶっ飛ばしてやる」


 眉間にしわを寄せてになって俺に殴りかかってくるのはウェルキだ。仲間だったころは一クエストで一回はあった光景。明らかに俺のミスじゃなくても、いちゃもんをつけて俺に殴りかかってくる。

 理由は簡単。日ごろの憂さ晴らしとストレス解消だ。


 罵倒に人格否定、もう思い出すだけで鬱になる。



 そしてフリーゼの姿を見た瞬間、さらに血眼になって俺の胸ぐらをつかんできた。



「なんだてめぇ、こんな女なんかと手を組んで、俺たちを裏切ったのかよ」


 裏切ったのかよって。一方的に追放したのはそっちの方じゃないか。さらにウェルキは俺が持っている証明証の方に視線を移す。


「というかなんでお前がクエストの報酬なんかもらっているんだよ。お前なんかが精霊に勝てるはずないだろう。どうせ不正行為でもしたんだろう、この卑怯者」


 この野郎。こいつは昔っから感情任せな行動が多く聞き分けが悪い。

 おまけにすぐ暴力に訴える粗暴の悪さ。

 何を言っても言葉が通じるとは考えていないが、ここまでいちゃもんをつけられるとさすがに言うしかない。


 俺はウェルキを軽く突き飛ばし、強い口調で言い返す。


「ふざけるなお前! まずパーティーから追放したのはお前たちだ。そして俺はもうお前たちとは仲間でもない他人同士、だからどんな奴と組もうが俺の自由。赤の他人である貴様がどうこう言う権利はない。それにこの宝玉は俺の仲間であるフリーゼのもの。それを渡したんだから報酬は俺たちの物だ。いいか、目の前に敵がいたら倒すことしかない脳筋野郎。よく聞いとけ、このクエストの目的は宝玉を手に入れることであって、フリーゼを倒すことじゃない。宝玉をどんな形であれ持って来た以上報酬を受け取る権利は俺たちにあるんだよ。理解したか?」


 その言葉にリルナさんが黙って首を縦に降った。


「ごもっともでございます。今回の報酬、受け取る権利があるのはフライさんとフリーゼさんにあります」


「ハァーーッ!! ふざけんじゃねぇよ!」


 逆上するウェルキ。

 ウェルキが殺気をこれどもかというくらい放っている。そのまま突っかかり、俺の胸ぐらをつかむ。


「よこせよ! よこせよ! 俺の報酬! この詐欺師野郎。お前のせいで、こっちは大変な思いをしたんだぞ。ダンジョンで、死にかけたんだぞ! わかっているのかよ!」


 そしてキルコが腰に手を当てながら答えた。


「そうよ。ウェルキの言う通りだわ。あんたと別れた後、行きとは比べ物に数の魔物に襲われたの。おまけにあんたが戦った時より強力になってたわ。何とか逃げ切ったけど、立ち回りしだいでは死人が出てもおかしくなかったわ」


 どこか暗い表情の彼女。本当か、そんなことがあったのか。

 すると後ろからフリーゼが彼らに聞こえないような小声で耳打ちしてきた。



「そんなことはありません。魔物の強さは一定です。それに行きと帰りで魔物の数が変わるなんてことはしていません」


 なるほど。ということは今キルコが行ったことはおそらく錯覚だ。行きと違って俺の加護が無いせいで自分たちが弱くなり、相対的に相手が強く感じた。

 そして俺がいないせいでトラップに引っかかったり、敵がいそうなところを平気で通ったりするから余計に敵に見つかり、増えたように感じたんだ。



 しかしどうするか。おそらく本当のことを言ってもプライドが傷つくだけで受け入れてくれる気がしない。けど、このままこっちがした手に出続けてもこいつが矛を収める気がしない。ちょっと煽って言い返してやろう。


「おかしくないか? 俺はどうせお前たちに及ばない雑魚なんだろ。そんな雑魚の俺でもあのダンジョンの魔物は一人で倒していたぞ。俺よりはるかに力があるお前たちなら楽勝だろ? それとも何か、俺がいなくちゃ中級ゴブリンの群れ程度でも苦戦するとかないよな?」


 図星をついた俺の言葉にウェルキは言葉を失った後、怒り狂った表情をしだして俺を突き飛ばしてきた。


「ふざけんじゃねぇ。フライのくせに、屁理屈ばかり言ってんじゃねぇ」


 そして俺が倒れこんだ後、ギルド内は騒然となり、ざわめきだす。慌てて、リルナさんが二人の間に割って入りこんだ。


「おやめくださいウェルキ様。ギルド内での暴力行為は処罰の対象です。あまりやりすぎると、ギルドからの追放すらあり得る行為です」


 リルナさんの追放という言葉に危機感を感じたせいか、アドナとキルコがウェルキに接近。

 肩を掴み制止させた。


「おい、これ以上やめろ。本気で追放になるぞ」



「よしなさい。みっともないわ、ここは引きましょう」


 二人の抑えにウェルキは怒りを表しながらも俺に突っかかるのをやめ、距離を取る。すると、リルナさんがたしなめるようにアドナたちに向かって注意した。


「あと、先ほどから聞いたのですが、彼を故意にダンジョン内で見捨てたというのは本当ですか? そういった行為は本来はキルドの規約により違反行為となります。下手をしたらギルドの追放すらあり得ます。証拠がないことと、フライさんが直訴していない以上今は追及しませんが、このようなことを絶対にやめてもらいますよう進言はさせていただきます」


 追放という言葉にキルコとミュアが体をビクンとさせているのがわかる。


 ウェルキは俺をにらみつけながら歯ぎしりをしている。こいつはとっても感情的な奴だ。おそらく理論では図っていても感情がそれを許さないのだろう。


 そして彼を抑えているアドナはイラつかせながら俺を見つめている。

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