主人公の心理描写がとても丁寧です。大変読みやすく、読後感が爽やかです。そして何より言葉の端々に、小説に真摯に取り組む作者様の熱く堅実な姿勢が、作品からビシビシと感じます。年を重ね、大人になると、沢山の物事を諦めてしまうことが多くなります。今、そんな状況の中にいて、悩んでおられる方、状況を打破したい方にお勧めの作品です。
社会人三年目。もう新人じゃない。周りも見えて来た。そして自分の事も。そんな中でふと訪れた転機。それはとても些細ではあるが確かに眩しく見える。主人公の心の揺れ動きが手に取るようにわかる文章は、文学調であるのに固くなくすっと入って来る。その心地よさが良き。まだ何も始まっていない。しかし確実に一歩を踏み出した彼に幸あれ。