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 雨だった。


 夕陽は、見れない。


 それでも、街の景色は、美しくなろうとしている。


 プレゼンで通した、地下の雨水用配管ができあがっていた。これで、この街は大雨にも強くなるし、雨の日に水はけを気にしなくてもよくなる。新式のアスファルトも、ちゃんと機能している。これで、もっともっと、街の景色は、美しくなる。


 はやく、彼にこの景色を見せたい。


 雨の日も街は綺麗なんだと、おしえてあげたい。


 電話。


 待機音。


 なかなか、出ない。


 寝てるのかな。昼夜逆転って、言ってたし。


『もしもし』


「もしもし。いま、大丈夫?」


『うん』


 雨の音。


「今ね、こっち、雨降ってるの」


『そうか』


「そっちも、雨?」


 雨の音。彼が、応えない。


「もしもし?」


 彼が応えないのは、初めてのことだった。


「電波が遠いのかな。もしもし。聞こえる?」


『見えない』


「あ、屋内か。ごめん」


『見えないんだ。見えない』


 彼の声。震えていて、いまにも、消えそう。


『ごめん。もう、掛けてこないで』


 電話が、切れた。


 雨の音。


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