第20話 夜の島を探検してみた

  私、森崎由亜はこの日の昼間、AIのリーフィと一緒に島内にある砲台跡等の場所を探索してきた後、島内を一通り見終え、夕方前にはスピアーズのメンバー達が合宿を行っているキャンプ場へと戻って来た。


 その後、夕方になり、私達は晩御飯としてキャンプ場でバーベキューをやる事にした。


 バーベキューに必要な食材や道具等は、バーベキューを始める直前に、本土側にある早川さんの家から宅配用のドローンに荷物を乗せて飛ばす為、私達がこの離島に訪れる時は、最低限の荷物だけを持ち、ほぼ手ぶらの状態でこの島に来ていた。


 それはもちろん、キャンプに必要なテント等も同じであり、そちらも夕方にバーベキュー道具と一緒に宅配用のドローンでキャンプ場まで運んできた。


 その後、テントを張り、晩御飯のバーベキューを済ませた後、バーベキュー時に出たゴミやバーベキューに使用した道具等は、宅配用のドローンで早川さんの家まで送った。





 そして、夜になり辺りは暗くなった為、私達はテントの中で過ごしていると、火花さんがある提案をして来た。


「せっかく島に来た事だし、今から夜の島を探検しない?」


 火花さんの提案は、まさかの暗い夜の離島内の探検であった。


「なんか、面白そうだね。私行く!!」


 突然の火花さんの提案に、氷山さんが賛成をした。


「まぁ、晴と雪の2人だと何かと心配だから、私もついて行くよ」


 その後、水島さんも火花さんと氷山さんが行こうとする夜の利用探検について行くと言った。


「私は菫さんの様子を見ておくから、ここに残るわ」


「そう言えば菫さん、夕食の時に凄くお酒を飲んでいたから、相当酔っぱらって眠ってるもんね」


 そんな中、虹川さんは酒の飲み過ぎで酔っぱらって眠っている菫さんの様子を見守る為、火花さんの誘いを断った。


 私達と一緒に離島に同行した菫さんは、夕食のバーベキューの時に大量のお酒を飲んでいた為、顔が真っ赤になるほど酔った挙句、現在はグッスリと眠っていた。


「つんつん。ホント、姉ぇ姉ぇはグッスリと眠っているね」


 テントの中でグッスリと眠っている菫さんのほっぺを、妹である氷山さんは指でつんつんと突いていた。


 それにしてもホント、大人ってお酒といったアルコール類が好きなんだな……


 あんな飲み物って、美味しいのかな?


 大量のお酒を飲み過ぎてグッスリと眠っている菫さんの様子を見ながら、そう思ってしまった。


 そんな中、火花さんが私の方に寄って来た。


「それよりも、森崎さんはどうする?」


「ん~ 私は昼間に島の周囲を探索しているから、夜はいいかな?」


 火花さんは、私にも夜の離島探検の誘いをしてきたが、私は昼間に既にリーフィと一緒に島内を探索をしていたという事もあり、夜の暗くて不気味に感じる島内の探索は止めておこうと思い、火花さんの誘いを断った。


『ユア、せっかくの誘いだし、ここは一緒に行きましょうよ!!』


 すると、私の断りを聞いていたリーフィが突然、一緒に行こうと声をかけて来た。


「えっ!? あの場所にもう一度行くの?」


『そうです。昼間の風景を見たのなら、夜の風景も見ておかないとね。夜の離島はそう簡単には見れないですよ』


「たっ、確かにそうだけど……」


「ほらっ、リーフィもこう言っている事だし、森崎さんも一緒に行こうよ!!」


「私達もいるから、恐くないよ」


「ちっ、ちょっと!?」


 リーフィが夜の離島探検に行く事を強く進めてくると、その様子を見た火花さんと氷山さんまでもが一緒に行こうと言い、2人で半ば強引に私をテントから引っ張り出した。


『ユア。私がいれば、暗い夜道も明るく照らす事が出来るので怖くなんてないですよ』


 私がテントを出た後、リーフィもスマホからドローンに意思を移し変え、夜の島探検に出かける私達の後をライトで照らしながらドローンでその後を追って来た。


 こうして、半ば強引な中、私は火花さんと氷山さんと水島さんと、そしてリーフィのメンバーで、夜の暗い島を探検する事にした。





 夜の島内は、明るかった昼間の雰囲気とは異なり、リーフィが照らす光以外の明かりがない為、周囲は凄く暗かった。


 そのせいもあり、昼間は明るかった為、幻想的なファンタジー作品に出て来るような雰囲気を出していた島内も、暗い夜は雰囲気が一変し、周囲は一気にホラー作品に出て来る様な雰囲気に変わっていた。


 そんな昼間とは異なる夜の島探検は、ドローンからライトを照らすリーフィを先頭に、その量隣に火花さんと氷山さんが、その後ろに私と水島さんがいた。


 今回、夜の暗い離島内を歩く為、私達は全員、スマートグラスを装着し、専用のアプリを使い少しでも暗い場所が見える様にしていた。


 また、スマートグラスを装着している為、私達にはドローンからARで映し出されるリーフィの空飛ぶ姿を見る事が出来ていた。


「夜の島内は凄く暗いけど、みんながいれば怖くないね」


「そうだね」


『私がいる限り、絶対に大丈夫です』


 前方を歩いている火花さんと氷山さんは、リーフィと楽しそうに話をしながら歩いていた。


 一方の私の方は、隣にいる水島さんと一緒に話をやりながら歩いていた。


「昼間に一度島内を歩いてみたけど、この島って、アニメの聖地だけでなくて、砲台跡等もあって、探検をやるには飽きない島ね」


「だからこそ、この島は観光として人気があるんだよ。その影響なのか、近年はこの島の砲台跡以外にも、町のエリアの山の中にある砲台跡も注目がされているんだよ」


「それって、あの神社の裏側にある山の事かしら?」


「あの場所とは違って、森崎さんがこの町に来た初日に私達がライブをしたキャンプ場近くの山の中にあるハイキングコース内にもあるんだよ」


「そんな場所にも砲台跡があったのね」


「そっちの方の砲台跡は、この島に上陸が出来ない時等に代わりに訪れても良いぐらい、見応えのある場所だよ」


「この島にも負けないくらいの砲台跡が本土側にもあったのね。今度行ってみようかしら?」


 水島さんと話をしていると、この町にはまだ砲台跡があるらしく、私は後日、その山の中にあるハイキングコース内の砲台跡も見に行ってみようと思った。





 その後も、しばらくの間いろんな話をやりながら私達は夜の暗い島内を探索していた。


 話をしながら歩いていたという事もあり、思っていた程、恐いとは思わなかった。


 そう思いながら歩いていた時、前方を歩いていた火花さんと氷山が立ち止まり、私達のいる後ろを振り向いた。


「ねぇ、普通に歩いても面白くないからさ、ここはお化けが見えるAR対応のアプリを使ってみない?」


「アプリの方は、リーフィがオススメのがあるって言っているよ」


 火花さんと氷山さんが振り向いた理由は、お化けを見る事が出来るAR対応のアプリを使おうと言う為であった。


 確かに普通に暗くて怖い場所だと雰囲気もより出そうだけど……


『暗い夜道はお化けを見ながら歩くと、雰囲気も出ますよ』


 そう言いながらリーフィは、私と水島さんの元にアプリの連結用のリンクを送って来た。


 その為、私と水島さんもそのリンク先にアクセスし、ARグラスからARのお化け達を見る事が出来るように設定した。


「うわぁ!! こんなアプリでも、暗い場所でお化けを見ると、まるで野外のお化け屋敷みたいね」


『えへへ、そう思うでしょ!! お化けを見ながら歩こうって提案したのは、私なんだよ』


「そうだったのね」


 どうやら、AR対応のお化けを見ながら夜道を歩こうと提案したのは、火花さんではなくリーフィの方であった。


 そんなリーフィの意外な提案から、暗い夜道でARで映し出されるお化けを見ながら歩く事にした。


「それにしても、ホント、暗い場所だと雰囲気が出るね」


「でも、これらのお化けがARだと分かっていると、別に怖いと思わないよね」


「それどころか、このお化け達の見た目が凄く面白いね」


 ARで映し出されるお化け達は、日本のお化け達であり、そんなARグラスを通して見る事の出来るお化け達を、水島さんと火花さんと氷山さんは面白がって見ていた。


『みなさん、凄く楽しんでいますね』


「まぁ、普通に歩くよりは何かしらの刺激があって飽きないからね」


 一方の私もまた、そんなお化け達を怖いというよりも興味本位で見ていた。


 そんなARで映し出されたお化け達を見ながら、私達はしばらくの間、暗い島の夜道を歩く事にした。





 ARで映し出されるお化け達を見ながら暗い島の夜道をしばらく歩いていると、昼間にも訪れたこの島の中で最も有名な弾薬庫跡のある場所にまで来た。


 まだ少しは明るかった昼間とは異なり、ただでさえ暗い夜の上、ARで映し出されるお化け達もいるせいもあり、この時ばかりは私でも流石に少し不気味に感じた。


 そんな状態にも関わらず、火花さん達は暗くて不気味に感じる場所から突然出て来るARのお化け達を見ては楽しんでいた。


「しっかし、こんな子供騙しのお化けなんか見て怖がる人なんているのかな?」


 そう言いながら火花さんは、弾薬庫跡前にいたARで映し出されている提灯のお化けに右手で触れた。


「ん!? ……」


 その提灯のお化けに触れた直後、一瞬にして火花さんの様子が変わった。


 それはまるで、何かヤバいモノを触れたかの様な雰囲気であった。


「どうしたの?」


「なんか、このお化けが生暖かいの……」


「AR対応のグローブも付けていないのに、お化けを触った感覚があるなんて変ね?」


「そう思うでしょ。だとしたら、これは……」


 私が火花さんに話しかけた直後、提灯のお化けの横から突如、光る2つの何かが移動した。


「でっ、でたぁ!!」


 その移動をする光る2つの何かを見た火花さんは凄く驚いた。


「あっ、これって……」


「そんな事はどうでもいいから、とりあえず走って逃げるよ!!」


「あっ!?」


『ちょっと、待ってください!!』


 そう言った後、火花さんは光る2つの何かに興味を示していた氷山さんを片手で抱き抱えた直後、リーフィの声を聞く事もなく全力疾走でこの場から逃げる様に来た道を引き返し走って行った。


『行っちゃった……』


「あっ、火花さん達、走って行っちゃったね……」


『そうですね。あれは本物のお化けではなく、ただの鹿でしたのに』


 火花さんがお化けと勘違いをした光る2つの何かの正体は、よく見て見ると、暗闇で光る鹿の目であった。


「まさか、こんな島に鹿がいるなんて驚きね」


「この島には、野生の鹿が生息しているけど、まさか、ここで見れるとは」


 光る2つの何かの正体がお化けではなく鹿だと分かった私と水島さんは、再び夜の暗闇へと消えて行く鹿の様子を見ていた。


 そんな鹿を見終えた後、私は鹿をお化けと勘違いしてこの場から走り去っていった火花さん達の行方が気になった。


「そう言えば、火花さん達はどこに行ったのかしら?」


「状況次第では探し出さないといけないからな」


『ハルさんなら、ユキさんを抱えたままキャンプ地まで走っています』


 リーフィは火花さんの持つスマホから現在地を特定したのか、火花さん達の行方を気にしていた私にその真相を教えてくれた。


「それなら心配はいらないかもね。一応、スマートグラスにはキャンプ場までのナビは見れますし」


「それだと大丈夫だと思うけど、ホント、晴はおっちょこちょいだな……」


 氷山さんを抱えたままこの場から走り去った火花さんの事を、水島さんは呆れた表情で火花さんの事を心配していた。


 そんな感じで、私達の夜の離島探検は火花さんの急な逃走により、終わる事になった。

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