第20話 離島を探検してみた

 私、森崎由亜は今日、とある離島に来ていた。


 なぜ私が離島に来ているのかと言うと、それは、スピアーズのメンバー達がこの離島で合宿を行う事になり、そのついでに私とリーフィは早川さんから特別に招待してもらい、一緒に行く事が出来る様になった為である。


 私を招待してくれた早川さんは、仕事が忙しい為、今回は離島には同行出来ないが、今回はスピアーズの合宿という事もあり氷山さんの姉でありスピアーズのマネージャーも務めている菫さんが私達と一緒に同行してくれている。


 そんな離島は、私が宿泊している旅館の目の前にある海水浴場からも見る事が出来る、凄く近い場所にある。


 今回、スピアーズのメンバー達が離島での合宿を行う目的は、単に歌やダンスの練習を行う為だけでなく、合宿ついでに動画の撮影も行う為である。


 その為、私とリーフィは、スピアーズ達の邪魔にならないようにする為、日中の間は、この離島の島内をドローンの状態でいるリーフィと一緒に見物しながら歩き回る事にした。





 スピアーズのメンバー達が拠点にしているキャンプ場を離れた私とリーフィは、とりあえず離島内にあるハイキングコースをリーフィと一緒に歩く事にした。


 また、私はドローンにARで映し出されるリーフィの姿を見る事が出来るようにする為、スマートグラスを装着した状態で離島を歩く事にした。


「さぁ、今日は私達だけだけど、この離島を探検するわよ!!」


『はいっ、今日はユアの為に、私が特別に島を案内します。先日、早川さんからこの島に関する情報を入れてもらいました』


「楽しみにしているわ」


 そう言ったリーフィは、ドローンを私の前に移動させた。


『この離島は、この町のエリアでは最大の大人気スポットでありまして、それと同時に、この離島は観光の島でもありますの』


「へぇ~ そうなの」


『町から少し離れた場所にあるこの離島は、旧日本軍の砲台跡もあり、手付かずの大自然が残る事から、いろんなアニメやゲームといった作品にも登場する事が多くなり、約15年ほど前からそれらのファン達が俗にいう聖地巡礼として訪れる様になり、今ではそれらのアニメファンやゲームファン達がたくさん訪れる一大観光スポットになったのです』


「そう言えばこの島って、いろんなアニメの聖地でもある少し有名な場所なのよね。火花さんが言っていたわよ」


『その為、この離島にはたくさんの人が訪れる反面、島内には崩落の危機がある建物や整備されていない場所もたくさんある為、それらの場所に間違えて侵入をするのを防ぐ為に、最近はAR対応の道案内サービスも始まったのです』


「そう言われてみると、確かに島内にはスマートグラスを装着しないと確認する事が出来ないARの標識や道案内がたくさんあるわね」


 リーフィが言う通り、島内の周囲にはAR専用の立ち入り禁止の標識や、聖地巡礼や観光用の道案内の標識があちらこちらにあるのを確認する事が出来た。


「スマートグラスがないと見る事が出来ないけど、これはあると道にも迷う事もないし、凄く便利ね。それに標識をタップすると標識の先にある観光地の詳細なんかも見れて便利ね」


『そうでしょう!! この離島にAR対応の標識を作ったのは、早川さんとユアのお母さんである森崎博士なのです』


「やっぱりね。何となくそんな感じだと思ったわ」


 AR対応の標識があると聞いた途端、これに早川さんとお母さんが関与していると何となく予想がついてしまった。


『因みに、AR対応の標識を作ったのは、この島の景観を維持する為です』


「確かにそう言われてみると、下手に島内のあちこちに標識なんて作り過ぎてしまうと、せっかくの大自然も台無しになってしまうものね」


 早川さんやお母さんが、あえてAR対応の標識を作ったのにはきちんとした理由があった。


「ARの標識を見ていると、いろいろな行き先があるけど、オススメはどこなのかしら?」


『せっかくなので、今回はこの離島で最もメジャーな観光地である弾薬庫跡を見に行きましょう。あの場所はいろんなアニメの聖地にもなっていて有名な場所です』


「じゃあ、その聖地と呼ばれている場所に行きましょ」


『決まりですね。それじゃあ、行きますよ!!』


 こうして、私とリーフィはこの離島の代表的な観光地である弾薬庫跡に向かう為、ARで表示されている標識を頼りに、山道の様に険しい離島内を歩き出した。





 ARで表示されているリーフィに案内されながら山道を歩き、目的の弾薬庫跡を目指した。


「こんな場所で迷子になったり、ケガや遭難をしたら凄く大変ね」


『そんな心配の為にも、この離島内は日中、監視用のドローンが島内を周回しているのです。その為、島内でもしもの事があった時は、周回しているドローンが発見次第、すぐに場所を特定して本土側からの救助を呼べる様になっています』


「それは凄く便利ね。そう言えば、上空を見るとたまにリーフィ以外のドローンが飛んでいるのを確認する事が出来るけど、その為のドローンなのね」


 砲台跡を目指しながら歩いている道中内でも、上空を見上げてみるとリーフィの言う通り、監視用のドローンが周囲に飛んでいるのが確認できた。


 島内の山道をしばらく歩き、トンネルを潜ると、ついに目的地である弾薬庫跡のある場所へとたどり着いた。


『ユア、ここがこの島での大人気スポットである弾薬庫跡です』


「ホント、ファンタジー系の作品に出て来る様な遺跡って感じね」


 リーフィに案内されて辿り着いた先にあったのは、まるでファンタジー作品にでも出て来る様なレンガ作りの弾薬庫跡であった。


 影に覆われた森の中にひっそりと存在するレンガ作りの弾薬庫跡は、ただの廃墟で終わる事なく、現在ではこの島の自然の一部となり、その雰囲気はまさに幻想的なファンタジー作品に出て来る古代遺跡の様にも感じた。


『この場所がいろんな作品に登場する事が多いおかげで、この島に訪れる観光客にも大人気のスポットなのですよ』


「そう言えば、よくよく見て見ると、この風景ってアニメ等で観た事があるかも?」


 リーフィの言う通り、確かに弾薬庫跡の周囲をよくよく見て見ると、アニメ等で見覚えがある様な風景にも見えた。


 そんなアニメの聖地等で有名な弾薬庫跡を、私はしばらくの間リーフィと眺めていた。


 その後、この場所の近くにある別の砲台跡を見に行く事にした。


 そちらの砲台跡へ向かうには、道の脇側に細長く掘られた穴があり、階段を下りた先にはレンガ作りの弾薬庫跡があり、更にその弾薬庫の薄暗い狭い通路を進まなければならない。


 その為、私はリーフィが照らす明りを頼りに、その薄暗く狭い通路を進む事にした。


 リーフィのお陰で少しだけ明るくなった弾薬庫の通路を進み、その奥にある階段を上り右側へ進むと、かつて巨大な砲台が設置されていた野外に出た。


 現在ではその場所には砲台はなく、砲台があった円状の周囲は水溜りになっていて、更にその周辺はたくさんの植物がこの場所に進出している為、こちらもまたファンタジー作品に出て来るような凄く幻想的で神秘的な古代遺跡の様に見えた。


 そんな、神秘的で幻想的な文明の痕跡が残る中、現在では完全に自然一部と化した砲台跡の周囲を、しばらくの間、私はリーフィと一緒に眺めた。





 この島で最も有名な砲台跡を見に行った後、次は別の場所にある砲台跡を見に行く為、私達はこの島の一番西側にある砲台跡に訪れた。


『こちらの砲台跡もまた、大人気なスポットですけれども、現在では崩落の危機がある為、建物の中には入る事が出来ないようになっています』


「そう言われてみると、確かに建物の周りには立ち入り禁止のロープが貼られているわね。まぁ、昔の建物だから、崩落の危機があって中に入れないのは仕方のない事ね」


 次にリーフィに案内された砲台跡は先程の砲台跡とは異なり、日が照らす野外に存在し、目の前の海をバックにしてみる事の出来る見晴らしの良い場所に作られた砲台跡であった。


 また、こちらの砲台跡はリーフィの言う様に、レンガ作りの建物にはヒビが入っていたりと、今にも崩落の危機がある為、こちらの砲台跡は目の前から見る事しか出来なかった。


『確かに中に入る事が出来ないのは残念ですけれども、ここの砲台跡は実はVR対応も行っていますので、VRで昔の様子を見る事が出来ますわ』


「そうなの。じゃあ、さっそく見て見るね」


 そう言って、私はリーフィに言われるがまま、目の前の砲台跡の昔の姿を確認する為、砲台跡前にあるQRコードをスマホで読み取り、装着していたスマートグラスをVRモードに切り替えて確認をする事にした。


「この島って、昔は軍事基地と言われていたけど、こうして昔の様子を映像として観ると、本当に軍事基地だったってのが分るわね」


 VRで再現されたとはいえ、当時の様子を実際に見て見ると、本当にこの場所が軍人の基地があったという事がうかがえる。





 そして、VRで昔の砲台跡を堪能した後、私は休憩をとる為に近くにある凄く見晴らしの良い広場の芝生の上に座る事にした。


「この場所って、凄く見晴らしが良いわね」


 私が座っている広場からは、目の前の海だけでなく、その向こう側にある大きな島の町並みや、更には目の前にある海の上を進む大きな船を数隻見る事が出来た。


『ユア、せっかくだし、上空からもっと良い景色を見て見ませんか?』


「そんな事、出来るの?」


『はいっ、ユアがメタバース内にある私の部屋に来れば、簡単に上空の景色を見る事が出来ます』


「そうなの。じゃあ、行かせてもらうわ」


 そんな中、リーフィから上空の景色を見ないかと誘われた為、私はメタバース内にあるリーフィの部屋に行く為、スマホを操作しスマートグラスを再びVRモードに切り替えた。


「リーフィ、来たわよ!!」


「来ましたね。それじゃあ、行きますよ!!」


 ネコのアバター姿になった私は、メタバース内にあるリーフィの部屋にアクセスをすると、私が来たのを確認したリーフィは、早速ドローンを上空へと飛ばし始めた。


 上空へ昇るドローンの様子は、リーフィの部屋にある大画面のスクリーンから確認する事が出来た。


「リーフィは、こんな感じで外の景色を見ていたの?」


「これは、最近新しく作ったシステムです。普段はドローンに意識を移しているので、また違いますね」


「そうなの」


 その後、リーフィの部屋にいる私達を乗せたドローンは、雲と並ぶくらいの高い上空に達した。


「ユア、外の景色を見てください。凄く見晴らしが良いです」


 私はリーフィに言われるがまま、部屋にある大画面のスクリーンから外の様子を見て見る事にした。


「わぁ、凄い景色!!」


「でしょ。高い場所から見る景色は最高でしょう」


 その場所からは、真下にある小さな無人島だけでなく、その隣にある大きな島の町や、少し離れた海上に浮かぶ人工島の空港や、本土側にある私達が普段住んでいる町やその町を含む街の中心地だけでなく、更には遠く離れた場所にある更に大きな街の高層ビル群等も見る事が出来た。


「この町の上空って、実際に見るとこんな感じなのね」


「はいっ、普段私達が過ごしている町の上空なんて、普通は見る事なんて出来ないですからね。これは、ユアの為の特別なサプライズです」


「ありがとう。リーフィ!!」


「ユアが喜んでくれると、案内を務めた私としても凄く嬉しいです」


 こうしてしばらくの間、私はリーフィと一緒に離島周囲の上空からしか見る事の出来ない絶景の景色を眺めていた。

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