第18話 電車に乗ってお出かけ 前編
私、森崎由亜は今、この町にある駅に向かっていた。
この日は電車に乗って、街の中心地にあるお城の動物園と動物の駅長がいると言われている駅に行く為、私はリーフィと一緒にこの町にある駅に自動運転バスに乗って向かっている最中であった。
この町は私のお母さんや早川さんの活躍のお陰もあり、無人の自動運転バスが走行している為、私が滞在している旅館の目の前の海水浴場から駅までは自動運転バスに乗って楽々移動が出来るのはありがたい話である。
「今日は、この町の外に行く日だから、ドローンは使えないね」
『そうですね。今日はスマホの中からの景色を堪能です』
そして、バスの中で私はスマホの中にいるリーフィと一緒に話をしながら座っていた。
「今日はお城にある動物園と猫が駅長を務めているという駅に行くけど、今から楽しみね」
『はいっ、凄く楽しみです!!』
今日、皆と一緒にお城の動物園と猫の駅長がいる駅に行く事になったのは、リーフィが動物を見たいと言った事がきっかけである。
そんなきっかけもあり、今回はスピアーズのメンバー達と一緒に、スピアーズのメンバー達が過去に動画撮影で訪れた事のあるお城の動物園と猫の駅長がいる駅に行く事になったのである。
そんな感じで話をしている間にも、町を巡回している自動運転バスはこの町の外れにある駅に着いた。
そして、自動運転バスから降りると、先に駅前に来ていた火花さん達がそこにいた。
「火花さん、お待たせ!!」
「あっ、森崎さんだ!!」
自動運転バス柄降りた私は、早速目の前にいた火花さんに声をかけた。
火花さんとお馴染みのメンバーである氷山さんと虹川さんはそこにいたが、なぜか水島さんの姿だけは見当たらなかった。
変わりに、虹川さんの隣にはふわっとした茶髪のロングヘア―の麦わら帽子をかぶった黄色いワンピース姿の女性が立っていた。
水島さんは今日は部活で来ていないのかな?
その為、私は水島さんが来ていない事が少し気になってしまった。
「あれっ、水島さんは?」
「私はここにいるよ」
「えっ!? まさか水島さんなの?」
「そうだよ、私だよ」
どうやら、虹川さんの隣に立っていたふわっとした茶髪のロングヘア―の麦わら帽子をかぶった黄色いワンピース姿の女性こそが、水島さんそのものだったみたい。
いつものハイレグタイプの競泳水着姿のポニーテールに髪をまとめた姿が定着しすぎていたせいで、全く気が付かなかった。
「どっ、どうしてその恰好なのですか!?」
「それは…… いつもの様に水着姿で出かけようとしたら、空に止められて、無理矢理この様な格好にされてしまったんだよ」
「なるほど、それで今日はいつもと違う雰囲気なのですね」
この日の水島さんの服装がいつもと違っていたのは、ここに来る前に虹川さんにより、強引に着せ替えられた為であった。
「まぁ、私は別にいつもの水着姿でも良かったんだけどね」
「いやっ、流石に良いわけがないじゃないの!! 海が水着姿でも許されているのは、この町だけなんだからね。この町の外に出る時は、きちんと服を着なさい!!」
「そうは言うけど、この格好、なんか着なれないし、スース-するよ」
「それは、普段から水着姿で過ごしているせいでしょ」
いつもとは着なれない服装に不満そうにしていた水島さんに対し、虹川さんが呆れ顔で突っ込んでいた。
確かによく考えたら、競泳水着姿で街中をうろつくのはどうかと思う。
「水島さん、その恰好凄く似合っているわよ!!」
『そうです。凄く似合っていますよ』
「ちっ、ちょっと!! そう言われると恥ずかしいじゃないか!!」
私とリーフィが、水島さんにその恰好が似合っている事をニコッとした表情で伝えると、それを聞いた水島さんは照れ隠しをする様に恥ずかしがっていた。
その後、全員が揃ったという事もあり、私達は電車に乗る前に駅の駐車場の壁に描かれている絵の前に立ち、みんなで記念撮影を行った。
その後、私達は電車に乗って街の中心地に向かう事にした。
「しっかし無人とはいえ、バスが出来たおかげで家から駅までの移動がホント楽になったよ!!」
「あのバスって、出来てからまだ新しいと聞きましたよ」
「自動運転バスがこの町を走り出してからまだ半年程だから、確かに新しいね」
「そうなの。ホントつい最近なのね」
電車での移動中、火花さんが私に自動運転バスに関する話をしてくれた。
「動物園には、どんな動物がいるかな?」
「それは見に行ってからのお楽しみよ」
「パンダとかいるかな?」
「パンダは、あの動物園にはいないわよ……」
また、電車の中では氷山さんと虹川さんが話をしていた。
「これから行く動物園、一体どんな動物がいるのかしら?」
『楽しみですね。ユア』
「そうね」
そんな中、私もまたスマホ内にいるリーフィと一緒に話をしながら電車内での移動時間を過ごした。
そう言えば、夏休み中はこの県内で過ごしているものの、あの町の外にはここに来る時以外行った事がなかったな……
これから行く街の中心地って、一体どんな感じなんだろう?
そんな思いを抱きながら、私は夏休み中過ごしている町以外の場所に初めて行く事になった。
私達が普段いる町を出発した電車は、海辺と工場地帯周辺に立ち並ぶ町中を超え、更に街を南北に分断している大きな川を越え、約30分程で終着駅に到着した。
その後は、駅からバスに乗り換え、街の中心地の繁華街らしき場所を抜けると、丘の上に立つ天守閣が見えて来た。
「おぉ、やっと着いたよ!!」
「お城があんな高い場所に建っているわね」
火花さんの声に反応し窓の奥を覗いてみると、そこには街中にポツリとある山のように大きな丘の上に建っている天守閣が見えた。
その天守閣が建つ周辺の場所にあるバス停でバスが止まった為、私達はそこでバスを降り、大きな道路を挟んだ先にある天守閣の敷地内に入り、今回の目的地である無料で入る事が出来る動物園に向かった。
天守閣の敷地内にある動物園を目指す道中、私はこの周辺に建つ石垣を眺めながら歩いていた。
そして、しばらく歩いた後、火花さんが急に目の前にあるひとつの像を指さした。
「ねぇねぇ、せっかくだし、あの虎の像の前で、みんなで一緒に記念撮影を撮ろうよ!!」
その目的は、目の前にある虎の像の前で記念撮影を撮る為であった。
『いいですね、ぜひみなさんで撮りましょう!!』
「うん、私も賛成だよ」
「せっかく、みんなで出かけたんだし、思い出に残る何かを撮るのも悪くはないよね」
「みんなで一緒に映る写真。思い出に作りにはちょうどいいわね」
そんな火花さんの提案にリーフィが真っ先に賛成をすると、それに続く様に氷山さんと水島さんと虹川さんも火花さんの案に賛成をした。
「そうですね。みんなで一緒に写真を撮りましょ!!」
そして、私も喜んで賛成をした後、虎の像の前に並び、記念撮影を行った。
撮影終了後に撮った写真を確認した後、私はある事を疑問に思った。
「そういえば、どうしてこんな場所に虎の像なんてあるのかしら? このお城にある動物園内で、昔飼われていたとか?」
それは、どうしてこんな天守閣の敷地内の石垣の前に虎の像が置いてあったのかという事であった。
動物園前ならともかく、場所が場所だけについ疑問に思ってしまった。
「まさか、流石にトラなんていないわよ。このお城の敷地内に虎の像があるのは、この天守閣が建つ丘の形が、伏せた虎の姿に似ているとこから来ているのよ」
「なるほど。それでこの場所に虎の像があるのね」
そんな私の疑問に、虹川さんが答えてくれた。
虹川さんの説明を聞くと、単にこの天守閣が建つ丘の形が伏せた虎の姿に似ている事が由来であり、天守閣の敷地内にある動物園とは関係ない事が分かった。
その後、私達は天守閣の敷地内にある動物園を目指して、再び歩き出した。
それからしばらく石垣を眺めながら歩いた後、ついに目的地の動物園が見えて来た。
「やっと着いたよ、お城の動物園」
「まさかの、こんな場所にあったのね」
氷山さんに言われ、目の前を見て見ると、確かにそこには決して大きくはないものの、天守閣の敷地内に動物園があった。
そして、私達は早速、無料で誰もが気軽に入る事の出来るお城の動物園の中に入った。
「さて、何から見ようかしら?」
「入り口近くにいるペンギンからがオススメよ」
「ペンギンなんて良いわね。ねっ、リーフィ」
『はいっ!!』
お城の動物園の中に入り、私達は火花さんに案内され、入り口近くにいるペンギンを見に行った。
「ねぇねぇリーフィ、次はウサギを見に行こうよ」
「シカなんかも良いよ!!」
『ここには、いろんな動物がいるのですね』
ペンギンを見た後も、氷山さんや火花さんに案内され、私達はお城の動物園の中にいるウサギやシカを見に行った。
その後も、楽しむ火花さん達に案内され、私達はカピパラやクジャク等の動物達を見に行った。
そんな動物達をバックに、私達は記念撮影を楽しんだりもした。
流石にここにはパンダはいなかったものの、それらの動物達を見た火花さんや氷山さんは、楽しそうにはしゃいでいた。
『ユア、次はあの動物を見に行きましょう!!』
「リーフィったら、凄く楽しんでいるわね」
一方のリーフィもまた、火花さんや氷山さん同様に、スマホの中から動物達を見ながら凄く楽しんでいた。
その後、天守閣の入り口の様な門を潜り、道路を挟んで隣にある公園へと向かった。
公園に着いた後、火花さん達は公園内にある遊具で遊び始めた中、私は公園の隅にあるあるモノが気になった。
その公園内には、一台の電車の様な車両と機関車の車両が金網越しに展示されていた。
「これは一体?」
「ここに展示されているのは、この街に昔走っていた路面電車の車両よ」
「へぇ~ この街には昔、路面電車が走っていたのですね」
「そうよ。この街も昔は今みたいに寂れていなくて賑わっていたという証のひとつでもあるのよ」
そんな疑問に思う私に対し、虹川さんがその車両についての簡単な説明をしてくれた。
そして、路面電車を見終えた後、虹川さんに路面電車を背景に記念撮影を撮ってもらった後、私達は路面電車と機関車が停車している公園から離れた。
その後、丘の上にある天守閣に上がり、最上階の展望台からこの街の景色を眺めた後、次の目的地に行く為、私達は先程と同じバス停からバスに乗り、次の目的地へと向かった。
『ユア、次はいよいよあの駅ですね』
「そうね。猫の駅長なんて、凄く楽しみね!!」
バスに乗った後、私はリーフィと一緒に次の目的地がどんな場所なのか想像しながら、窓から見える街の景色を眺めていたのであった。
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