新しい大発見

第13話 出会いの場所は人形がたくさんある神社

 私、氷山雪こおりやまゆきは子供の頃、常に一人で過ごす事が多かった。


 私が住んでいる町には人形がたくさん置いている神社があり、小学生の頃の私はいつも一人でその神社内に置かれている数多くの日本人形をしゃがみ込んで眺めていた。


 そんなある日、私がいつもの様に神社内でしゃがみ込んで人形を眺めていると、隣の方から誰かが私に対して話しかける声がした。


「あれ、氷山さんじゃない? こんなところで何しているの?」


「なっ!? アンタには私が見えるのか!!」


 突然話しかけられた私は、どう反応をしたら良いのか分からず、訳も分からない意味不明な発言をし、驚きながら端の壁側へと避ける様にすり寄った。


「当り前じゃない。見えているよ」


 しかし、私が意味不明な発言をしても、その人は特に不思議そうな顔はする事もなく、ニコッとした笑顔で私の方を見た。


「そっ、それもそうだね……」


「それよりも1人だったら、私と一緒に遊ぼうよ!!」


 その人に誘われるがまま、私はその日以降、一人で神社に置かれている人形を眺める事を止め、私に声をかけてくれたその人と一緒に遊ぶ様になった。


 その人の名前は火花晴ひばなはると言い、今では私と最も仲の良い友達である――





 そして現在……


 私、氷山雪こおりやまゆきは、友達の晴とこの夏の間だけこの町に滞在している森崎さんと、あと、そんな森崎さんと一緒にいるAIのリーフィと一緒に、メタバース内にある晴の部屋の中で勉強会をしていた。


 メタバース内という事もあり、私達は皆アバター姿で勉強をしている。


 また、メタバース内の晴の部屋は、可愛らしいピンク色のハート型のクッションやソファー等の置物がある。その中央に四角い木型のテーブルがあり、私達はその周りに座って勉強をしていた。


 私と晴はスピアーズの活動中にも使っているお馴染みのアバター姿であり、森崎さんの方は先日に見た猫のアバター姿であった。


 一方のリーフィは先日に海から頂いたというSFチックなハイレグ姿のアバター姿で、森崎さんの隣に座って勉強の様子を見守っていた。


 そんな皆でやる勉強会だが、晴はどうも乗り気ではなかった。


「う~ん、どうしてこう勉強ばっかりやらないとダメなんだよ!!」


「そんな事を言わずに、さっさと勉強をやるよ」


 勉強をやりたくなさそうなオーラを出している晴の隣で、私はペンを片手に勉強をしていた。


「そうは言うけど、ともっちのヤツ、宿題以外の勉強をやるように言ってきて…… ホント、これじゃあ塾に行っているのと同じじゃないか!!」


「土萌は、私達の為を思って言っているんだよ。だからきちんと勉強しないとダメだよ」


 晴が言う様に、このメタバース内での勉強会は早川さんが手配したものである。 


 勉強会をする場所がメタバース内という事もあり、リアルでの私達は自分の部屋の中で1人でいても、このメタバースという空間内では実際に皆と一緒にいる感覚を味わえる為、1人でやる勉強よりもはかどったりする。


「ともっちは勉強用にと、いろんな勉強系の人のUTube動画をお勧めしてきたけど、どれもこれも私には面白くないんだよね~」


 土萌が私達の勉強用にオススメをして来た動画は、中学生用の各教科の勉強系UTuberの動画であった。


「ハルさん、そんな事は言っていたらダメです。勉強をやる事で知らなかった事を覚える事が出来て為になりますよ」


 やる気のなかった晴に対し、勉強をやる様に声をかけて来たのはリーフィであった。


「確かにリーフィの言う通り、勉強をやる事で今まで知らなかった事が覚えられるね」


「そうですよ。だからこそ勉強は大事なのです」


「それもそうだね…… そうと分かれば、ちょっとは頑張ってみっか」


「その勢いです」


 なぜか晴はリーフィの一言を聞いた後、どこから湧いて来たのかは知らないけど先程までやる気がなかった勉強に対しての意欲を見せだした。


「ねぇ雪、一緒に勉強をやろう」


「いいよ」


 リーフィの一言により勉強に対する意欲を出した晴と一緒に、私は勉強をする事にした。


 勉強中、晴が時々分からない問題を聞いて来る為、私はそんな晴の質問に答えながら自分の勉強も行った。


 そんな晴との付き合いは小学生の頃からと長く、友達になって以降、この様に勉強会をやる度に私は晴に勉強を教えている。


 晴に勉強を教える一方で、晴は私が苦手とする対人とのコミュニケーションの面で助けてくれる。そのおかげもあり、私はなんとか森崎さんとも無事話をする事も出来た。


 私と晴は、ただの友達以上に、今ではお互いの苦手を助け合う関係だと私は思っている……


 そんな事を考えながら、私は晴に勉強を教えながら一緒に勉強を行った。





 私、森崎由亜もりさきゆあは今、火花さんと氷山さんと一緒にリーフィも含めメタバース内で勉強会をしていた。


 この勉強会も数時間が経過した頃には勉強疲れを癒す為に、皆で一旦休憩タイムを取る事になった。


 休憩タイムとは言っても、メタバース内なので飲食等はなく、ただ単にお喋りをするくらいであった。


「火花さんと氷山さんって昔から仲が良かったのですか?」


 休憩タイムのお喋りの中、私は先程の勉強中に見せていた2人の様子について聞いてみた。今回の勉強会だけでなく、私がこの町に来てから数日、火花さんと氷山さんと言ったら常に2人で一緒にいるイメージが強かったので、私はその事も気になり聞いてみた。


「まぁ、私と雪の付き合いはスピアーズのメンバーの中では一番古いからね。そのおかげもあって、今では私と雪は相性の合う名コンビだよ!!」


「そうなの。やっぱり付き合いが長いと、お互いの事をよく知って来るのですね」


 私のイメージ通り、火花さんと氷山さんの2人は古くからの付き合いがあり、相性の合う名コンビであった。


「ところで、火花さんと氷山さんって、どの様にして出会われたのですか?」


 私は、火花さんに2人がどの様にして仲良くなったのかを聞いてみる事にした。


「あれは確か小学4年生の頃だったかな…… ちょうど、この町にある人形がたくさん置かれている神社に雪が1人で入っていくのを見かけたので、その後をついて行って話しかけたのが仲良くなるきっかけだったかな?」


「2人の出会いって、こんな感じだったのですね」


 火花さんと氷山さんが仲良くなったきっかけの場所が人形がたくさん置かれている神社と言っていたけど、この町にはそんな少し変わった神社なんてあるのね。


 そんな事を思いながら、私は火花さんの話の続きを聞く事にした。


「それにしても、当時の雪はホント何を考えているかよく分からない存在だったよ。休憩時間にはノートに変な絵を描いていたり、放課後は人形がたくさん置かれている神社で人形をジッと見つけていたりと」


「晴と仲良くなる前の私は、一緒に話す友達もいなかったし1人で過ごす事が多かったから、1人で凄くなりに退屈しのぎをしていただけだよ」


「そうだったんだ。そう言えばスピアーズになる前の雪は自分から他人に話しかける事がほとんどなかったから、友達も出来ずに1人で過ごしていたんだよね。その頃はさぞ寂しかっただろ?」


「別に寂しくなんてなかったよ!! 退屈しのぎなんてたくさんあったから」


 火花さんから仲良くなった当時の話を聞いた氷山さんは、アバター姿とはいえ、少し恥ずかしがる口調で反論をしていた。





 そんな火花さんと氷山さんの2人が仲良くなった時の話で盛り上がっていた時であった。


「あっ、あの…… ハルさんとユキさんの2人が出会われた人形がたくさん置かれてる神社って、もしかして映画撮影をした神社ですか?」


 神社という単語に反応をしたのか、突然喋り出したリーフィは、火花さんに映画撮影をした神社と同じ神社なのかを問い始めた。


 リーフィが言う映画とは一体何かしら?


「あぁ、そうだよ。SPレディオの動画企画で映画撮影をした時の神社だよ」


「そうでしたか。やはりあの神社なのですね」


 リーフィが言っていた映画とは、どうやらSPレディオ内で撮影をした映画の事みたい。


 それにしても、どうしてリーフィはそんな事を突然言い出したのかしら?


 私はその事が少しばかり気になった。


「それよりもリーフィ、映画撮影って一体何の事かしら?」


「ユアはスピアーズが映画撮影をした事は知らないみたいね」


 私が映画の事を知らないと分かると、リーフィはその映画の事を話し始めた。


「今から3ヶ月程前、スピアーズはSPレディオの動画の企画でこの町にある神社で映画撮影をしました。その時の撮影に私も出ました」


「出たって、リーフィは一体どんな役を演じたの」


「はい、人形になった神様の役です」


「人形になった神様?」


「人形になった神様『はっぱろう』の役です」


 リーフィが人形になった神様の役を!?


「まさかリーフィが神様役をやっていたなんてね」


 リーフィが映画で神様役をやっていたという事実に私は驚いた。


 それにしても、神様の役が出てくる物語って、一体どんな話なのかしら?


「その時の映画でトモエが超高性能なAIを出してみたいと言った事で、その頼みを聞いた森崎博士がAIチャットと協力をして、私をこの世界に呼び出したのです」


「なるほどね。私のお母さんがリーフィを作った当初の目的って、映画撮影の為だったのね」


 まさかこの映画が、リーフィ誕生のきっかけだったとは。この事実は今まで知らなかった。


 それにしてもお母さんったら、AIチャットを使用して早川さんが求めていた以上の高性能なAIを世に出してしまうとは…… 


 出会って日は浅いけど、今のリーフィの様子を見ている限り、かなりの高性能である事ぐらいは私でもわかる。


「それよりもみなさん。よければこの後、ユアを連れて映画撮影をした神社を見に行きませんか?」


 突如リーフィが喋り出し、映画撮影をした神社に行こうと言い出した。


「そうだね。あの神社は映画撮影以外にも、私と雪が出会った思い入れのある場所だし、この際森崎さんを連れて行くのも悪くはないね」


 リーフィの意見に対し、火花さんは喜んで賛成をした。


「そうだね。でも、あの神社は日が暮れてから行くと、凄く不気味に感じるよ」


「不気味って、一体どういう事?」


「それは行ってみたら分かるよ」


 そんな中、氷山さんから凄く気になる発言が出てしまい、私はその発言に少し嫌な予感を感じた。


 でも、火花さんと氷山さんの2人が出会った神社であるだけでなく、リーフィが誕生するきっかけとなった映画撮影が行われた神社はどうしても一目見ておきたい。


 そう思った私は、氷山さんの気になる発言に不安を抱きながらも、皆と一緒にその神社を見に行くことにした。

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