第3話 友達達

 早川さんの家を離れた後、私は火花さんに案内されながら、この夏の間お世話になる旅館へと向かって歩いていた。


 そんな道中は先程火花さんが言っていた様に、歩いている道のすぐ隣には凄く広い大海原が一望出来る場所であり、そんな広い海を見ながら火花さんと話をして歩いていた。


「へぇ~ 森崎さんは中学2年生なんだね。私と同じ歳じゃない」


「そうなんですか!? なんだか凄い偶然ですね」


 火花さんと色々と話をして分かったの事は、私と同じ歳であったという事。そう言えば、お母さんがこの町には私と同じ歳の人達がいると言っていたけど、火花さんの事だったのかな? まぁ、早川さんとも親しい関係にあるみたいだし、おそらく間違ってはいないと思う。


 そんな事を思いながら火花さんと話をやりながら歩いていると、私達の目の前で手を振りながらこちらに向かって歩いてくる小さな女の子の姿が目に入った。


 その女の子は、左右を団子状に結んだ青い髪をした肩出しの白いワンピースを着た女の子であった。


「あっ、ゆきっちだ!!」


「お~い、ハルゥ~ 昨日のぷんぷりぃ劇場観た?」


「あぁ、観たよ。昨日のもすっごく面白かったね」


 その女の子の手を振る様子を見た火花さんもまた、その女の子に手を振り返した。


 その女の子が言っている『ぷんぷりぃ劇場』とは、UTube上で定期的に配信されているアニメ動画のタイトルであり、同時にこの動画に出てくる主役のクマのキャラクターの名前が『ぷんぷりぃ』である。


 それはそうと、この様子を見る限り、恐らく火花さんの友達の様な気はするけど、身長差もあるし、学年の違う友達なのかな?


 そんな事を思っている間に、その女の子は私達の目の前までやって来た。


「ハル、この人は誰なの?」


「この人は森崎由亜と言って、夏休み中に私のトコの旅館に滞在する人だよ」


「初めまして」


 私は目の前にいた女の子に軽く挨拶をした。


「ふぅ~ん、ハルのトコの旅館に宿泊するという事は、遠くから来ているんだね」


「うん、東京から来たのよ」


「なるほど……」


 私は目の前にいた女の子に東京から来たという事を伝えると、その女の子は私の顔をジロジロと見始めた。


「一体、どうしたの?」


「東京から来たという事は……」


「なっ、何!?」


「お相撲さんからサインを貰ったりするの!?」


「って、なんで力士なの!?」


 私の顔をジロジロと見て来たので、一体何があったのかと思っていたけど、まさかの発言に私は驚いた。確かに東京には有名人はたくさん住んでいるけど、どうしてこのチョイスが力士なの? まさかこの子は相撲好きなの?


「いやっ、ただ聞いてみただけ」


「そうなの。聞くという事はお相撲さんが好きなの?」


「別に、そこまで好きではないよ。私が好きなのはアイドル系UTuber」


「そっ、そうなの……」


 どうやらその女の子は、別に力士は好きではないみたい。





 その後、火花さんからその女の子の名前を教えてもらった。


 彼女の名は、『氷山雪こおりやまゆき』といい、火花さんと同じ歳である事も分かった。しかし、身長差もあり同じ歳には見えない……


 そんな氷山さんは、この後火花さんと一緒に遊ぶ為なのか、私達の旅館へと向かう移動に同行してきた。


 そんな中、私達は歩いていた道のすぐ隣側にある磯浜で少し休憩をとる事になった。


「ここでは、ウニが取れるんだよ」


「へぇ~ そうなんだ」


 氷山さんはそう言いながら、その磯で拾ったウニらしき物を私に見せつけて来た。氷山さんが両手で持っているウニらしき生き物にはおなじみの黒いトゲは付いていなかった。本当にウニなのかな?


 私がそう思っていた時、突然、持っていた私のスマホがブザー音を鳴らしながら振動した。


「ん、誰からの連絡かな?」


 お母さん、もしくは早川さんからの連絡かなと思いながら、私はブザー音が鳴るスマホを確認した。


 すると、そこには先程私のスマホ内にインストールされたリーフィというAIの姿が写っていた。どうやら、私に連絡を出して来た相手はリーフィのようだ。


「リーフィも海が見たいの?」


 私はスマホに向かって、画面内にいるリーフィに呟くと、その声に反応をしたリーフィは軽く頷いた。


「そうなの。だったら見せてあげるわ」


 そう言いながら私はリーフィに目の前に広がる海を見せる為、スマホのメインカメラを海側に向けた。


『うわぁ、これが海なのね。凄く綺麗です!!』


 メインカメラを海側に向けていた為、スマホの画面を確認する事が出来る状態であった為、私は海を見て喜ぶリーフィの姿を確認する事が出来た。


「ホント、綺麗な海ね。東京ではなかなか見れない光景よ」


 本当に目の前に広がる広大な青い海を見て喜んでいるリーフィと一緒になって、私もその東京では見る事の出来ない海を眺めていた。


「みてみて~」


 海を見て喜んでいるリーフィと一緒に海を眺めていた時、後ろの方から氷山さんの声がした為、私はスマホを海に向けた状態で後ろを振り向いた。


「タコ」


「キャア!!」


 私の真後ろに立っていた氷山さんが両手に持っていたのは、生きた状態のタコであった。ヌルヌルと動く本物のタコを間近で見た私は、その気持ち悪さと迫力差から驚いてしまい、その場で悲鳴を上げてしまった。





 磯浜で遊びながらの少しの休憩をとった後、私達は再び旅館までの道のりを歩き始めた。


 そんな中、この町の小さな船着き場近くを歩いていた時、氷山さんが突然走り出した。


「あっ、ソラとウミだ」


 氷山さんは、船着き場から海を眺めていた2人組の方に向かって走って行った。


「あっ、雪だ!!」


「今日はどうしたの?」


 氷山さんと話をしている2人組の女の子は、1人目は暗い茶髪のロングヘア―の清楚な服装のスカートの下に薄黒いタイツを着用したスラっとした体格の女の子であり、もう1人の女の子は茶髪のポニーテールの生地が薄い白い長袖パーカーを羽織って、なぜかそのパーカーの中は青いハイレグタイプの競泳水着を着た状態であった。


「今日はね。ハルのトコの旅館に例のお客さんが来るんだよ」


 氷山さんは2人組の人と少し話をした後、その2人組が氷山さんと一緒に私の元へと近づいて来た。 


「でっ、この人がトモエが言っていた人」


「はっ、初めまして!! 私がその、早川さんから話を聞いていた人、森崎由亜です!!」


 氷山さんが2人組を私の目の前にまで連れて来て紹介を始めたので、私はすかさず自分の名前を言って2人組に自己紹介をした。


「なるほど、この人が早川さんが言っていた人だね。初めまして、私は水島海みずしまうみ。雪とは同じ中学2年生だよ」


「こちらも初めましてだね。私は虹川空にじかわそらよ。私も同じ中学2年生よ」


「水島さんに虹川さん、改めてよろしく。私と同じ歳なんですね」


 私が緊張をしながら自己紹介をやると、2人も同じ様に私に自己紹介をしてきた。


 自己紹介の結果2人の名前が分かり、ハイレグパーカー姿の人は『水島海』と言い、ロングヘア―の清楚な格好をした人は『虹川空』という名前である事が分かり、2人共私と同じ歳である事も分かった。


 そんな事はさておき、私はそれ以上に凄く気になる事があった。それは、どうして水島さんは現在では見る事のなくなった太股が丸出しの下半身は陰部だけを隠し鼠径部までもが見えてしまうぐらいにまで露出が激しい昔の競泳水着をプールではなく、野外、それも町中で平然と着ているのか? という事であった。


「早速で悪いけど、どうして水島さんはそんな恰好をしているの?」


 凄く気になった私は、その真相を水島さん本人に直接聞いてみる事にした。


「この格好ね。ちょうど部活帰りだからだよ」


「その部活って、まさか水泳部なの?」


「正解!! ちょうど今着ている水着は部活の時に着ている水着だよ」


「でも、どうして部活が終わった今も着ているの? それも町中で」


「それに関しては、単に着替えるのが面倒だし、こんな暑い外だと全身がずぶ濡れでもすぐに乾くし、何よりも露出が多い格好だから服を着ているよりもずっと快適だからね」


「そうは言っても、流石に町中でその恰好は恥かしくないのですか?」


「競泳水着は水泳部の正装だし、この格好に対して恥ずかしがる事なんて一切ないよ!!」


 水島さんは、ハイレグタイプの競泳水着姿で街中でいる事に対し、全く恥ずかしがる様子はなかった。


「ところで、水泳部だからと言ってどうしてハイレグの競泳水着なんて着てるの? 普通、スパッツとかだよね?」


「まぁ、これに関しては、小学生の時に通っていたスイミングスクールで昔の競泳水着を着用して泳いでみるというイベントが行われた時に、今着ている様なハイレグの競泳水着を始めて着てみたんだけど、これが意外と着脱や泳ぐのに最適だったので、その日以降、水泳をやる時は常にハイレグの競泳水着を着用するようになったのさ」


「そんな理由があったのね」


 水島さんはハイレグタイプの競泳水着を着ている理由を言った。


「確かにあの水着は凄く恥ずかしかったわ。もう着たいとは思わないくらいに」


「そう言えば空はあの時、ハイレグの競泳水着を着た後、なかなか更衣室から出て来なかったじゃない!!」


「だって、物凄く恥ずかしかったんだもの!!」


 水島さんがハイレグタイプの競泳水着を着ている理由を語ると、それを聞いた虹川さんがその時の事を思い出すかのように、恥ずかしそうな様子でその時の事を喋り出した。どうやら、虹川さんという人もまた水島さんと同じスイミングスクールに通っていたみたい。


「確かに、これは凄く恥ずかしいわね……」


 虹川さんが言う様に、確かに鼠径部が見える程露出が激しいハイレグタイプの競泳水着を人前で着る事は凄く恥ずかしいと思う。水島さんが着ているハイレグを見ながら私はそう思った。





 その後、氷山さんに続き、水島さんと虹川さんも旅館までの徒歩に同行する事になった。


「それじゃあ、部屋に荷物を置いたらみんなで一緒に遊ぼぉ!!」


「だね。仲良くなるには、まずは一緒に遊ぶ事だね」


 火花さんが元気よく言うと、氷山さんは火花さんの案をすんなりと受け入れた。


「そうね。私達も一緒に遊ぶわね」


「何をして遊ぶかは、荷物を置いてから決めたらいいんじゃない?」


 その後、虹川さんと水島さんも火花さんの案に賛成をした。


「じゃあ、早く荷物を置きに行かないとね」


 勝手に一緒に遊ぶという事を決められてしまったけど、この1ヵ月の間過ごす町だし、この町の娘と仲良くなるのも悪くはないと思い、私の火花さんの案に賛成をする事にした。


 この後、皆で一緒に遊ぶ事が決まった後、私がこの1ヵ月の間宿泊する旅館に皆で楽しく話をやりながら歩き始めた。


 私が今歩いている場所は船着き場から少し離れた場所にある小さな橋の上であり、ちょうどその場所からは海に面している古くから存在している小さな町を一望する事が出来る景色の良い場所でもあった。

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