第七話

「おい、早く来いよ!!」

「そうだよ!! 早くしないと遅刻しちゃうよ!!」

 時々王都に訪れた僕はカリーともう一人の少女に声をかけらえた。僕は今日もいつもの三人で剣道場に行った。

「「「おはようございます!!」」」

 剣道場に着いた瞬間、僕たちは一緒にに大きな声で挨拶した。

 いつもの剣道場の様子だ。

「おはよう!! バルサ!! カリー!! ●●●●●さん!!!」

 バルトルトが返事をしてくれた。

「おいおい、なんでお前はいつもそんなに早いんだよ!!」

 いつものようにカリーがバルトルトの肩を組む。

「それは、カリーたちがいつもギリギリに来るからで……」

「なんだよ? まだ、稽古の十分前だぜ?」

「それでも、もし忘れ物したらどうするの?」

「相変わらずの心配性だな!!」

 これもいつもの剣道場の様子だ。

「あの人たちはほっといて私たちは早く防具に着替えましょ!!」

 少女は僕にそう言った。僕は彼女の言葉に頷く。

 僕はこんな日々が楽しかった。時々

 僕はこんな毎日がずっと続くと思った。本当にそう思っていた。


 でもそんなある日、彼女は父さんの仕事の事情で剣道場を立ち去ることになった。

「ええ、今日を以て●●●●●さんはこの剣道場を去ることになった。じゃあ●●●●●さん、皆に最後の一言を……」

「この度、みな「ちょっと待ってよ!!」

 僕は話を割り込み、彼女に突っかかる。

「……何よ? バルサ」

「どうして君が出ていくことになるんだよ!! 君の父さんは確かに冒険者だけど、それでも「だから、私の父は凄腕の冒険者だからよ。凄腕だから遠くにある西の大きな国に凶悪の魔獣が出現したから討伐しに行くんだよ」

「ごめん……」

 そう彼女は不機嫌な顔をして僕との話を割り切った。彼女は最後の一言を話し出す。


 僕はいつも考えてしまう。彼女の顔はなんであんな顔をしたのだろう、と。

 あの顔にどこか悲しみのある顔に見えたからか?


『……ください!!』


 どちらにしても俺は彼女がいなくなったときは本当にさみしかった。


『……起きてください!!!』


 もし会えるなら俺は彼女にもう一度逢いたい。


「バルサ様!!!! 起きてください!!!!」

「ん?」

 俺は目を覚ました。目の前にはアイリーンがいた。

(なんだ、夢か……)

 俺は国王の王宮の客間にいる。俺は体を起こす。すると、アイリーンは俺にこう言った。

「何やってるんですか? 今日はあなたのための勲章式なんですよ?」

「ああ、わかってる。起こしくれてありがとう」

「な、何言ってるんですか!! それよりも早く支度してください!!」

 アイリーンの顔が赤くなった。

「ああ、わかったよ。でもその前に行きたい場所がある。まだ、勲章式はまだだろ?」

「それは、そうですね。しかし、バルサ様。一体どこに行くのですか?」

「俺についてきてくれ」

「わかりました!!」

 俺はアイリーンと共にある場所に行った。


「着いたぞ」

 俺とアイリーンは木の下にある石盤の前に着いた。その石盤にはある名前が書いてあった。

 俺はその石盤の前に座った。アイリーンは石盤の文字を読み上げる。

「ダ、ダニー・クリス……。これって……」

「ああ、俺の父さんの名前だ。あの地下通路に行ったときに大量の人がいたのを見ただろ? そこに俺の父さんもいたんだ……」

「!!!」

 アイリーンの足が崩れ、口を手で覆った。俺はアイリーンを振り返らず石盤を眺める。

「それじゃあ、私の父上がバルサ様のお父さ「それは違う!!」

 俺はキッパリ彼女の言葉を否定した。

「俺の父さんを殺したのは凶悪の猛獣だ。お前の父さんは誰も殺めてなんかいない」

「それじゃあ、どうしてバルサ様のお父様が亡くなったというのですか?」

「お前の父さんは奴から二つの要求があった。一つは紛争を止めない事。もう一つは毎日十人以上の生贄を奴に捧げる事だ。そこに父さんが呼ばれたんだ……。でも国王、お前の父さんは呼ぶ前、事前に父さんに話をつけていた。父さんはそこで『俺の人生に悔いなんてない』って言って承諾したんだ……。自分の事より相手を優先するような人だからな」

「では、バルサ様は私の父上に亡くなってほしかったとは思わなかったのですか? そうすれば父上がバルサ様のお父様を生贄に捧げる事なんて無かったのに……」

 アイリーンは俺にとんでもない質問をする。俺は何も驚かない。

「ああ。そんなことは何一つ思ってないさ。お前の父さんがいなきゃこの国は回らないしな。何より俺が奴を倒した翌日の朝、俺の前に突然頭を下げたんだ。びっくりしたよ。お前の父さんも相当罪悪感を抱いてたと思う。本当にいい国王だよ、お前の父さんは。でもさ……」

 俺の涙腺が崩壊する。

「少しだけでもよかったから親孝行したかった!! 俺が強くなったのは全部父さんのおかげなんだ!!」

 悔しかった。本当に。

 涙がボトボト地面に落ちていく。

 すると、背中に柔らかい感触を感じた。そして首に腕を覆う。

 アイリーンだ。温かい。

「大丈夫です。私がいます」

 俺はアイリーンのぬくもりで更に涙が出た。そして、俺は子供のように泣きじゃくった。


「では、国王に救出した四人の勇敢な者たちよ、入場」

 俺とカリー、バルトルト、アイリーンは共に国王の玉座に入った。貴族たちが拍手で俺たちを迎える。

 俺たちはその拍手の中で赤い絨毯の上を歩く。そして、国王の前に立膝をついた。

「この度、我を助けた勇敢な者たちよ。貴殿等の活躍により、ようやく世界大戦の停戦協定を結ぶことができた。感謝する。それでは今から貴殿等に勲章となにか褒美をやろう。まずカリー・サンジェルマン」

「は!!」

 国王自ら勲章を首に掛ける。

「貴殿の活躍は実に見事であった。貴殿が市民と共に凶悪の猛獣ティラノを惹きつけたことで予はさらにこの国の民を屠らなければならなかった。誠に感謝する。ではカリー・サンジェルマン、褒美を申すが良い」

「ではお言葉に甘えて申します。私は……」

 カリーから順番に褒美を言った。カリーは自分の自治領の拡大と市民を豊かにするための資金の援助、バルトルトは自分の店のために高価な魔力家電の要求と王宮自らの広告、アイリーンは協力してくれた国民全てに高い報酬を提示した。

 そして、

「バルサ・クリス!!」

「は!!」

 俺の名前が呼ばれた。

「貴殿は特に素晴らしい活躍をした。貴殿はあの天使や悪魔さえ恐れる凶悪の猛獣を倒したのだ。本当に、本当に感謝する。では、バルサ・クリスよ、褒美を申すが良い」

「…………」

 俺に褒美? 俺は何が欲しいんだ?

 俺は国王の前で黙ってしまった。貴族たちは騒然とする。

 でも、俺はすでに何が欲しいか決まっていた。

「お、俺は……」

 俺が何も考えずに声を出した。玉座の中が静かになる。

 そして、俺は国王にこう告げた。

「俺……僕は!! 英雄になりたい!!!」

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フューチャー・リメイク~英雄になりたい復讐者の物語~ 六月 @shimoshiro

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