第四話 

 広場に大きな穴があった。

 俺とアイリーンは急いで向かう。

 穴を覗くとそこには大きな空洞があった。そして、アイリーンはこう言った。

「これはシェルター……シェルターです!!」

「お前が逃げて来た時に使ったあれか?」

「それはそうなんですけど……これは私が使った時よりもかなり大きいです!! おそらく神話の時代に描かれたものでしょう……」

「へえ……」

 俺は頷く。そしてピンときた。

「それじゃあ……「そうです!! カリー様とバルトルト様はきっとここに凶悪の猛獣ティラノを呼び込んだのでしょう」

「なら、早く行くぞ!!」

「はい!!」

 しかし、俺はここで疑問になる。

「シェルターの入り口はどこにあるんだ?」

「私について来てください!!」

 アイリーンは走る。

 俺もアイリーンの後ろ姿を見ながら走った。

 民家の庭にあるシェルターの入り口を見つけた。そこから彼らのいるところに向かった。

 すると……

「嘘だろ?」

 シェルターには凶悪の猛獣がいた。

 そして、奴の傍にはカリーとバルトルトが倒れていた。




 バルサたちが王宮に向かった直後、俺はバルトルトと共にすぐに私有地にいる市民を広場の下にあるシェルターに集めた。幸いなことに全員が俺のために集まってくれた。

「こんな夜分にすみません、皆さん!! けど、集まってくれて本当に感謝します!!」

 俺は素直に市民に挨拶をした。すると、当然野次が跳んでくる。

「どうして、カリー様はこんな夜遅くに私たちを集めたのですか?」

「そうだ、そうだ!!」

「なんで、俺たちが夜遅くにここに来なきゃいけないんだ!!」

 俺は丁重にこう伝えた。

「今、軍の行方不明事件を皆さんはご存じでしょう。だが、なぜ国王はそれにちなんで休戦協定をとらないのか、わかりますか?」

 市民たちは騒々しくなる。そこで俺は結論を放った。

「それは凶悪の猛獣悪魔の手によって国王は完全な統治が出来ないからです!! そこで皆さんにはここで凶悪の猛獣をおびき寄せるために集まってもらいました!!」

 市民たちは騒然とする。そして、

「ふざけるな!!」

「なんで俺たちがそんな役回りしなきゃならねえんだよ!!」

「それだと私たちはここでその化け物に殺されなきゃならないの!!」

 市民たちは激怒した。

「おい、どうするんだよ!」

 右横にいたバルトルトが俺の耳にささやく。

 そして、彼らにこう公言する。

「決して皆さんに危害を加えない事を保証します!! ですので、しばらくここでお願いします!!」

 そう言うと、市民たちははおとなしくなった。

「それなら、いいか」

「まあ、現伯爵のカリー様が言うのなら仕方ないわね……」

 俺はバルトルトと共にそのあとすぐに入り口の方に向かい、壁に仕込まれたスイッチに手を当てた。

 そして、五分後何か上から大きな音がした。

 少しずつその音は大きく鳴る。そして……


『ギャァァァァァアオォォォォォォォ!!!』


 奴が現れた。天井から修理不可能なほどの大きな穴をあけ、現れたのだ

 市民たちはすぐに慌てて外に出ようとする。だか、その音はすぐに消え、天井は元通りになった。


「おいおい、どこに目ついてる」

 俺は奴に挑発した。

『お……前が……やった……のか……。オ……レ……の……エモ……を……』

 奴は話す。片言の言葉に俺はこう答える。

「お前の敵はここにいる俺たちだ!! 俺の大切な仲間を追うならまず俺を倒すんだな!!」

 俺はそう言って拳銃を構え、銃弾を放った。

 だが、銃弾は命中したものの奴の体を貫通せず、弾は弾かれる。

 奴が突進してきた。俺は咄嗟に半身でかわす。たった数ミリ顔にかすった。

 俺の後ろに奴は移動し、壁にぶつかった。俺は後ろを向いて銃を別の弾にリロードする。

 俺は奴に二、三発撃った。奴の体に貫通した。

「驚いただろ!! これは吸魔石の銃弾だ!! お前みたいな魔力しかない体に効果絶大だ!!」

『…………』

 奴は何も動かない。

 (怖気ついたか?)

 そう思った瞬間に奴は俺の背後に入り込んだ。そして、右手で俺の顔を殴りこむ。

 俺は咄嗟にしゃがんだ。回避はできたもののそれ以上の行動は出来なかった。

 そして、奴は左手を大きな火の玉を生み出す。あれは魔力だ。あれをぶつけられると必ず俺は死ぬ!!

(くそ!! なんて速さだ!! このままだと……)

「この!! 化け物が!!!!」

 バルトルトの声だ。バルトルトは両手に剣を持って奴に突進した。

 奴は振り向く。

 俺はバルトルトのおかげで最後の一撃を食らわなかったが、逆にバルトルトを危険に晒してしまった。

「寄せ!! そんな攻撃じゃお前が殺されちまうぞ!!」

「うおおおおおおおお!!」

 俺は必死に叫んだ。バルトルトの耳には届かなかった。そして、


 グサッ


 バルトルトの腹部に奴の左手が突き刺さった。そして、奴はバルトルトを埃のように振りほどく。バルトルトの腹部に穴が空いた。

 奴は笑った。それも嘲笑うかのように。

 そして、奴は俺の方に向く。すると、

「死ね」

 俺は奴の頭部にしっかり吸魔石の銃弾を埋め込んだ。眉間をシワ寄せて。

 奴は倒れた。

 俺はすぐにバルトルトの方に向かう。

「おい、何やってんだよ……。お前は何もするなって言ったろ……」

 俺は倒れているバルトルトの首を持ち上げた。そして、涙がこぼれ始める。

 だが、俺は気づかなかった。

 俺は何者かに頭を強打された。あまりにも強い威力だったため、おれはすぐに意識を失ってしまった。

 奴はまだ生きている……。そして、

「嘘だろ?」

 バルサの声が聞こえた。




「嘘でしょ!!」

 アイリーンも同じ反応した。

 そして、奴は俺たちに気づく。

『おま……え……が……ボス……の言って……いた……バルサ……か……』

 奴はこう口に出す。

 ボス? あいつのリーダーの事か?

 俺は疑問になる。そして奴はこう言った。

『なら……早い……お前を……殺す……』

 奴の言葉に俺は自分愛用の剣を握り、アイリーンは新しく買った拳銃を奴に構えた。そして奴はこう言った。

ベリ………………・イン……』

 すると、シェルター中に黒い光が伝わる。

 黒い光が止んだ後、俺は無事だったが、アイリーンは倒れていた。

『!!……効か……な……い……!! まあ……いい……や……』

 奴は驚いた。そして奴の手には白い球体が三つあった。

 俺は嫌な予感がした。

 アイリーンのあの笑顔が浮かんでしまった。

「やめろおおおおお!!」

 俺は思わず声に出す。

 そして、奴は俺の仲間たちをまるごと


 喰った。

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