第五話 

 俺はなんでこんなにも弱いんだ? 

 なんで俺は大切なものを次々と失うんだ?


 カリー、お前は優しすぎるんだよ!!

 なんでお前は昔から困っている人を助けるんだ?

 昔からそうだ!! 

 昔王都で、魔力持ちの噂が立って剣道場で俺がいじめられたとき、いつも俺の目の前に現れたんだ!!

 でも、今は状況が違うじゃないか!! 

 お前の生死がかかってるのにそれでもお前は自分が犠牲になってもいいからってそんな行動……。

 そんなの、お前が消えたら意味ないだろ!!


 バルトルト、お前は少し心配症だ。

 カリーが自分で行くからってお前まで行くなよ!!

 お前、本当はこんな事、したくなかっただろ?

 本当は『通信機』にあまり詳しくないだろ?

 どうせ、お前は大学校の教えで自分が犠牲になったらいいとでも思ったんだろ?

 そんなわけないだろうが!!

 お前は俺らにとって大切な仲間なんだよ!!


 アイリーン、お前なんでこんな危険なところに来たんだ?

 お前はもう国王を救い出した。

 それでいいじゃないか!!

 俺たちにそんな心配しなくてもいいだろ?

 俺たちは仕事クエストを受けたんだから。

 お前依頼者がいなくなったら意味無いじゃないか!!!!

 お前の最高の笑顔が、見られなくなるだろうが……


 なあ、俺って魔力を持ってんだろ?

 俺の家系は代々元を辿ればカナエ・クリスが先祖になるんだろ??

 なら魔力を解放してくれよ!!

 俺には今、力が必要なんだ!!

 もう、俺は何も失いたくない!!

 もう、これ以上の犠牲なんて出したくない!!

 だから!!!

 

 ……誰か……俺に……魔力を……

 お願いだからだれか俺の魔力を解放しろおお!!!


 俺は必死に頼んだ。

 普段神様さえ信じない俺がこんなにも心の中で願っていた。すると、


『なら私が君の魔力を解放しようか?』


 誰かの声が聞こえた。その途端に俺の視界は突然真っ暗になった。

(またあの美少年か?)

 俺はそう思った。だが、目の前に現れた黒い何かをまとった大男だった。

「お前は誰だ?」

 俺は問う。すると、大男はこう答えた。

「我はシリウス・イビルロード。元々この世界の半分を支配していたである!!」


「魔王? じゃあ、お前は俺の邪魔をしに来たのか? あの凶悪の猛獣化け物はお前の仲間だろ?」

「いいや、私は何もやってないよ。というか、私はもうずいぶん前に死んでいるし」

 俺はシリウスに指をさす。

「それじゃあ、今ここにいるのは何だ?」

「ああ、これは思念体だよ。私が勇者に殺される前、カナエに私の人格を少し埋め込んたんだよ」

 俺は疑問を抱く。指を下ろして。

「だったら、お前はカナエ俺の先祖の何なんだ?」

 すると、シリウスはこう答える。

「私の娘だ」

 ますます疑問を抱く。

「正確に言うなら育ての親だよ。当時の私は人間の赤子を使って勇者を動揺させて確実に殺すつもりだったけど、予想外の事があってね……」

「予想外?」

「まあ、もう一本の勇者の刀を見たらわかるさ。それよりも君、魔力を解放したいんだろ?」

「ああ」

 俺の決心は強かった。

「なら、いい。ではお前の魔力をすべて解放しよう」

「ああ、頼む」

「と、その前にひとつ言わなきゃならないことがある」

 俺は一瞬、力が抜けた。

「なんだよ!!」

 そして、シリウスに怒鳴った。

「これは重要だからな。一つ忠告がある」

「なんだよ?」

「君の意識が現実に戻ったとき、すぐに英雄の剣あの剣を呼べ」

「……わかった」

 俺はシリウスに頷いた。今はとにかく凶悪の猛獣あの化け物を倒したかった。

 だが、それがのちの後悔することになる。

「では行くぞ!!」

「ああ!」

 俺は覚悟を決めた。いや、もうとっくに覚悟は決めていた。

「バルサ・クリスよ、そなたに先祖たるカナエ・イビルロードの魔力のすべてを解放しよう。魔力解除トリガー・オン……」

 シリウスがそう唱えた。

 その瞬間、俺の体の芯から物凄い力が沸き上がった。

 だが、予想以上の力が逆に俺を襲いかかった……。




 凶悪の猛獣が俺の仲間を食った後、俺に襲い掛かってきた。

 顔を暗くしていた俺は何も動かない。

『ギャアァァァァァァァオォォォォォォォォォ』

 奴が来る。だが、俺は動じずこう暗く言う。

魂の返ベリアル……」

 そして、奴が数センチ来たところで

・イン!!」

と強く言った。

 すると、奴の腹部が大きな音を出して破裂した。

 それと同時に、喰われた白い球体がそれぞれの帰るべき肉体場所に戻る。

 そして、バルトルトの体は元通りになり、見事に三人は再び空気を吸い始め、アイリーンだけが体を起こした。

「え?」

 アイリーンは俺を見て驚く。

『ぐ、ぐぅぅぁぁぁああああああ!!!』

 俺の体が黒い炎で燃え上がっていたのだ。


 私は一体、何をしてたの?

 なぜか倒れていた私は体を起こす。すると、

『あああああ、ぁぁぁああああああ!!!』

 バルサが苦しがっていた。それも悪魔が如何に纏っていそうな黒い炎を上げながら。

 あんな彼は初めて見た。私は彼を初めて怖いと思った。

 魔力持ちだというのは知っていた。でも、こんなにも魔力があるなんて思わなかった。

 私はそんな彼に対してこう思った。

(助けなきゃ!!)


 くそ、このままだとヤバい!!

 理性が消えっちまう!!

 意識が遠くなっちまう!!

 俺は後悔した。シリウスはこうなるのを始めから知っていたからあの忠告したんだ。

 ヤバい!! このままだと……


「戻ってきてください!!! バルサ様!!!」


 背後から何かの感触があった。すごく柔らかい。

 そして、気づく。

 これは、アイリーンだ。アイリーンが俺なんかのために助けに来てくれたんだ!!

 そう思った瞬間、俺はこんな力に負けるかと強気になった。

「うおおおおお!!!」

 俺はこんな力に抗った。抗って抗って抗い続けた。

 そして……


「バルサ様!!!」

 アイリーンは俺を呼んだ。体を密着させて。

「なんだ?」

 俺はこう答えた。すると、

「バルサ様……」

 アイリーンは俺を抱きしめた。

「待たせたな、アイリーン」

 俺は彼女の頭を撫でる。アイリーンに涙がこぼれた。

『グルルルル……』

 奴が俺たちの方を見てくる。

 俺はアイリーンを腕で覆う。アイリーンの顔が突然赤くなった。

「来い!!」

 俺は上空に手を伸ばし、英雄の剣あいつに呼び掛ける。すると、村からすぐに俺のところまで駆けつけ、俺は英雄の剣を掴んだ。

『ギャアアアオオオオオオ!!!』

 奴は英雄の剣を見て怯えるかのように吠える。

「覚悟はできているか?」

 俺は滑らかに剣を動かす。続けて、奴に剣を突きだしこう言った。

「今から俺の剣でお前の全てを斬り倒す!!!」

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