第61話 少年王と島津家と竜珠王国 2

 マギアンティア世界統一暦・1555年・10月28日・午前10時25分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・ローレライ大海洋・竜珠諸島・沖名和本島・竜珠王国・王都・那覇市・朱里城・朱里城内国王執務室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 竜珠王国(きゅうおうこく)は、日本の沖縄地方に良く似た文明圏を持った王制国家であり、アマテラス列島南西部に広がる島諸島で構成される尚王氏が治めて居る小国。


 昔から南部の第三文明圏の雄である大華天帝国・クーロンとの交易を中心に、アマテラス神皇国とユーラシアン大陸等の地域との中継貿易を生業とする事で、国家が成り立って居た。


 しかしながら、近年では薩摩国の大名王家である島津家の島津四姉妹に、戦で負けた事で従属させられて居た。


 その以前からもゲルニアン帝国の従属国傘下に入れられて居る二重従属をして居る珍しい外交体制を取って居る国でもあった。


 現在の国王はショウ・レイ王と言う人物で、キリヤ公国連合国の出現と急速な国土拡大と勢力圏拡大に伴い、それれまで小国として致し方無く二重従属外交をしていた政策が、上手く機能しなく成って来ていた。


「うーむ。困った。困ったぞ。」


 国王執務室で困り果てた顔付きをして居るショウ・レイは、中継貿易から出る税収の低下、二重従属による上納金と上納品等の支払いが出来なく成りつつ有った。



「島津には砂糖や工芸品。ゲルニアン帝国には上納金と貢物。そのどれも年々増加して行くばかりだ。」


「島津家はまだ良い。金品と言うより我が国で産出する品物が欲しいだけ、これは数年前から始まったばかりだし、無理やりに絞られる事も無い。」


「問題は・・・・・・・ゲルニアン帝国。彼の帝国は逆らえば、我が国の様な小さき島国は、如何なる事か・・・・・・・・・・・・」


「これも彼の少年王のせいだ。全く困った。困った。困っ・・・た・・・・・・・・・」


 頭を抱えて歩き回るショウ・レイは、少年王と口にした時に気が付く。


「はて?今の現在のキリヤ公国連合国は、我が王国の周辺を取り囲む様な形で、勢力を伸ばして居るこの時に、何で今さら島津家やゲルニアン帝国なんかに従わなければ成らないのだ?」


 彼は最近に成ってキリヤ公国連合国から発行された、キリヤ公国連合国の勢力圏の地図を広げた見る。


 この地図も竜珠王国が国策として代々取り仕切って居る海上中継貿易を通じて手に入れ物だし、王都・那覇市内には、公帝戦争後に成って国交樹立をして開かれたキリヤ公国連合国の大使館も存在して居る。


「ふむ、最新版の地図では、我が国はキリヤ公国連合国の勢力圏内に、すっぽりと収まって居る。」


「ゲルニアン帝国の領海の在る北海域が少々不安だが、キリヤ公国連合国海軍の哨戒艦隊が定期警戒して居るから、一先ずは問題が無いだろう。」


「決めたぞっ!!これ以上の無駄金を払うくらいなら、キリヤ公国連合国の連合加盟国と成って、国を再建した方がよっぽど建設的だ。」


「後は・・・・どのタイミングで、彼の国に取り入るかだな。」


「我が跡継ぎであるユンが、島津家の人質に在る以上は、迂闊な真似はできん。」


 ショウ・レイの跡継ぎであるショウ・ユンは、今は鹿児島市内の鶴山城にて軟禁されて居る。


 そして、島津家当主である島津・久実・義久によって、徐々に懐柔されて居るのである。


 その方法が特に問題であった。


 その方法とは、まだ少年であるユンに人の良いお姉さんとして近付き、女の色香をチョッとづつ擦りこみながら、最後は大人の色香漂う島津・久実に骨抜きにされて、彼女無しには生きられなくさせるのだ。


 そして最後には、その子供を身籠ろうと目論んで居るのである。


 そんな計画が進めてられ居るとは知らないショウ・レイは、如何にかして安全に息子を手元へと取り戻して、キリヤ公国連合国へと加盟しようと思案する。



 竜珠王国の国王であるショウ・レイは、島津家とゲルニアン帝国の支配から脱却する為に、キリヤ公国連合国と桐谷勇治に取り入って連合国加盟国と成る道を模索し始めるのであった。




 マギアンティア世界統一暦・1555年・10月30日・午前9時35分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・薩摩国・鹿児嶋市・鶴山城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 島津家の当主である島津・久実・義久は、当主にしてその美貌は西南国地方随一にして、誠の大将の器と謳われる人物である。


 さらさらしたロングストレートヘアーのニコニコ笑顔の爆乳のお姉さんって感じの人だった。



 優れた外交手腕と統治能力を有しており、世界の名だたる列強国のゲルニアン帝国も、笑顔で平然と使い捨てにする程の実力者。


 多分、この人は借金してもタダでは起き上がらないし、平気で踏み倒す事も厭わない危ない性格の人かも知れないと言える程に、油断が成らなかったりする。


 今日も城で、島津家の政務の切り盛りをしていた。


「そう、弘ちゃん達は上手くやったみたいね。」


 久実は北西九州島地方の龍造寺家の当主、龍造寺・隆美・信隆を唐津城攻防戦で討ち取ったとの報せを聞いた彼女は、とても満足して居た。


「利ちゃんの意見を取り入れて、ゲルニアン帝国から大量の種谷島や大筒を仕入れて置いた甲斐が有ったわ。」


 久実は密かにゲルニアン帝国を通じて大量の火縄銃と大砲を仕入れて居た。


 ゲルニアン帝国式の軍船も整備に力を入れて居る。


 その力を使って竜珠王国を支配し、龍造寺家から討ち破って見せた手腕ぶりは、地球世界の幕末島津家すら、真っ青の戦略眼を持って居た。


「うふふ、このまま行けば九州島地方と南西諸島は我が島津の物よ。」


「一定の国力さえあれば、織田家もキリヤ公国連合国もゲルニアン帝国ですら、手が出せなくなるわ。」


「あの第六天魔王・織田・和紗・信長がキリヤ公国の少年王に近付く動きが有ると言う噂の在る今、我が島津家が力を保ったまま国家としてやって行くには、伊達・毛利・上杉とは別のやり方で独立王国を築くしかないわ。」


「そ・れ・に、くふふっ!」と久実は艶ぼっく怪しく笑った。


「あ・と・は、この美貌を駆使して、あの13歳に成ったばかりのショウ・レイの皇太子、ユンくんを篭絡ちゃえば、竜珠王国を私のもの~」


 実は久実さん、ショタコンでもあり、年下少年が、どストライクの性癖を持って居た。


 それに彼の北条・九江・早雲が黒女狐と揶揄されるのならば、この人は白女狐と言うべきだろう。


 腹黒さを見の内に隠して、平然と相手に近付いて利用し尽くす、恐ろしい女性であった。 


「わたしがあの子の子供を宿しちゃえば、島津家は名実ともに王族に成るのよ~」


「うふふふふふふふふっ!!あはははははははっ!!」


 年下好きの島津家の総大将である島津・久実・義久は、その大将としての辣腕振りと美貌を駆使して、竜珠王国の乗っ取り計画を企てて居た。


 だがしかし、後にその野望は思わぬ形で崩れる事に成ってしまう。


 島津家による南西王国建国計画の暗躍は、九州島地方の戦乱をより一層激しくさせて行く事に成る。



マギアンティア世界統一暦・1555年・10月30日・午前9時25分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸・ユーラシアン大陸 ゲルニアン帝国・帝都ベルリナ・ベルリナ帝城宮殿にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ゲルニアン帝国・帝都ベルリナ・ベルリナ帝城宮殿では、何時もの如くヒットラン・アドルフラー皇帝とロンデル・エルバン大元帥の二人が悪巧みに励んで居た。


「しかし、その女は信用出来るのか?」


「はい。織田・和紗・信長の虚け小娘めが、キリヤ公国連合国側に付く構えを見せて居るとの噂話も、広がって居ります。」


「それに加えてアイヌル民族解放急進派のアイヌル民族解放血盟団も最近に成って鎮圧されたとの事です。」


「最早、アマテラス神皇国の全土が、キリヤ公国連合国の傘下に収まるのは、目に見えて居りまする。」


「そうなれば、我が方は南方大陸との交易路の一つを失いかねません。」


「今は竜珠王国と島津家を傘下に収めて、旨味の在る餌を食べさせつつ、彼の者等に中継貿易をこなさせるのが、少年王への一番の嫌がらせかと思われます。」


「・・・と成るとだ、アマテラス列島の九州島地方が、我が帝国の属国に成るのか?」


「はっ!!その通りで御座います。」


「しかしだなぁ、話を聞く限りでは、トンだ女狐に聞こえるぞっ!その島津・久実・義久とか言う女はっ!!」


「下手をすれば、織田の虚け小娘より性質が悪いし、始末に負えんっ!」


「例の一件で織田家とは最早、貿易が完全に叶わなく成りました故、この際は仕方がありません。」


「確かに、又もやキリヤの小僧めが、異世界より転異して来た土地を手に入れおったわっ!!」


 ゲルニアン帝国は新トウキョウ湾岸海洋都市・特別地方自治州区の転移の一件で、敦賀港や堺港を通じて行われてたアマテラス神皇国との中継貿易を断念せざるを得ない状況下に追い込まれた。


 そして、その打撃は南方から貿易路の消失の可能性すら出始めていた。


 その保険航路として前々から使われて居た竜珠王国の在るアマテラス列島・南西諸島からの貿易路は、ゲルニアン帝国の東側最短ルート南国貿易路で行く、最後の航路であった。


 キリヤ公国連合国は、ゲルニアン帝国との貿易を禁止にはして居ないが、キリヤ公国連合国民側が、ゲルニアン帝国とヒットラン皇帝を毛嫌いして、商魂逞しい中立貿易商人くらいにしか、ゲルニアン帝国と交易をしたがらなく成って居た。


 まさかそれが竜珠王国の中継交易に由る経済基盤を傾かせて居るとは、夢にも思って居ないのが、ヒットラン皇帝と島津・久実の二人だったりする。


「まぁ良い。ロンデルよ、今度こそはキリヤ公国連合国勢力圏の拡大を防いで見せよ。」


「はっ!!必ずやっ!!」




 ヒットラン皇帝と島津・久実の二人の暗躍が、ある意味、的外れだと気が付くのは、もう少し先と成る。


 今回の一件でゲルニアン帝国は、ユーラシアン大陸東側ルートである南洋交易路を失う羽目に至る。


 それが更なるゲルニアン帝国衰退をさせてしまうのは皮肉としか言いようがないのであった。


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