一章
■夢
ブロックノイズが目の前を走っていった。目の前、というのだろうか。ぐるりと見渡せば、どこもかしこもノイズだらけだ。そうでなくとも薄ぼんやりと、霧中にいるかのように、景色に輪郭はないというのに。街のようだとも、森のようだとも、海のようだとも思うし、はたまた建物の中なのかもしれないが、まるで把握できない。
「――――」
呼ばれた、と思った。
前に視線を戻すと、そこには少女が立っている。
……何故少女だとわかったか、自分でも理解できない。風景と同じくノイズ塗れで、顔も、体格も、髪の長さも、色合いも、何もかも認識できないのに。
「――――」
また、呼ばれる。でも声は聞こえない。耳を通っても、脳を掠めずに過ぎていく。光の雫のように透明な音。
わからない、けど、知っている。
自然と口が開いた。少女へと一歩踏み出す。
舌が、少女を呼ぼうと回っ、て、
――ガアと、大音声が頭蓋を貫いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます