これは序章に過ぎない。
奈々星
第1話
ぶくぶくぶく……
気づいたら俺は深い青に囲まれていた。
どうやらどんどん下に沈んでいっているらしい。やがて冷たい岩の上におしりがつく。
ああ、言い忘れてたけどもちろん裸だ。
岩に付着しているコケがおしりを優しく撫でてとても心地よい。
ああ、ちがうちがう、なんで俺は今こんなことに?
ん?ん?ん…?息が、息が…
ぶくぶくと溺れるように手足をばたつかせたがどうやら水中で息ができているようだった。
俺は少しこの辺りを泳いでみる。
ドン……
俺は壁に当たったみたいだ。
激突するまで気が付かなかった透明の壁。
俺の記憶の中でこの場所についての憶測が繰り広げられる。
ここは海?
いや、海に透明の壁があるとは考えにくいけど可能性はゼロではないな。
なら水槽か?
なんで俺が水槽入れられてるんだ?
いつの間に?
不思議なことに俺はこの場所に裸でほおり出される前の記憶が全くないのだ。
酒のせいか、誰かに薬でも盛られたのか。
長めに考え事をしたが得られた結果は何も無かった。
魚が泳いでいる。
赤、青、黄色、色とりどり、大小様々な魚が
広いこの水中空間を縦横無尽に泳いでいる。
俺も何かを見つけようと少し泳ぐ。
それから俺は目が飛び出るほど驚いた。
その岩は一筋の光で照らされていてそこには人魚さながらの美しさを持つ美女が眠っていたのだ。彼女も裸。
相手が目を見張る美女ということもあり、
俺はこんなみだらな姿で彼女をじっと見ているところを見られたらたまらないのですぐさま何か隠すものを探した。
貝殻はないか、海藻でも構わない、
何か隠すもの、隠すものはないか。
そうして俺がやっと見つけた裸体の隠蔽方法は地面に埋ること、俺は手足もドリルのようにくるくると回し地面にめり込んでいって、
体を隠した。
地面の中に隠れる時に巻き上がってしまった砂が彼女の辺りまで行ってしまった。
そのせいで彼女は目を覚ました。
俺は彼女の裸をジロジロとみていた変態という認識をされることを避けるため、土の中に顔をうずめた。
それから彼女が体を隠すまでチンアナゴのように顔を出したりしまったりしてバレないように様子を確認した。
それから彼女も俺と同じ思考に至ったらしく、手足を地面に刺し、くるくると回し始めた。彼女の巻き上げた砂が落ち着くまで俺は地中に潜っていた。
落ち着くと、俺は地面から顔を出した。
そして彼女に話しかける。
「はじめまして。俺なんでここいるんすか?」
「うふふ、分からない。」
僕らは一生このままなのかもしれない。
けどその不安に押しつぶされることは無かった。
だって可愛いんだもん。
目の前にいる女の子。
これは序章に過ぎない。 奈々星 @miyamotominesota
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