第3話 トカゲ

 翌日、いつものように目の前の人の動きを真似していると、あの女の子が現われた。


 現れるなり、女の子は僕に抱き着いてきた。好き。

 愛情表現が激しい子だ。好き。

 でも、僕は嬉しい。好き。


 女の子は、すごく笑っている。

 どうやら、僕が勝ったのを喜んでくているようだ。

 やっぱりこの子はカワイイ。


 次の試合まで僕は、やっぱり動きを真似し続けた。


 試合形式の練習の方が良いのではないかと、おじさんに提案するが「てめーには、このやり方がお似合いなんだよ!」と言って、聞き入れてもらえなかった。


 退屈な日が続いたが、ついに次の試合がやってきた。

 試合の相手は……トカゲ?

 二足歩行の、人間大のトカゲが相手だ。


 前回と同じように、四角く張られたロープの中に入り、中央でトカゲと向き合う。


 さすがはトカゲだけあって、全身が鱗で覆われている。

 微妙にテカテカ光っているのが気持ち悪い。


「ファイ!」


 直ぐに試合は始まった。


 トカゲはズルい。

 頭、手、足くらしか僕は使えないが、トカゲはシッポも使ってくる。


 トカゲの蹴りを避けたかと思ったら、シッポが飛んできて、何度も僕の頭を強打する。

 近づこうとしても、シッポを振って、一定距離を保ち続ける。


 シッポめ。

 僕はシッポのことが嫌いになった。


 近づこうとして、シッポで距離を取られる。

 近づこうとして、シッポで距離を取られる。


 何度か同じことを繰り返している内に、一回シッポが出たら、次にシッポが出てくるまでに、時間がかかることに気が付いた。


 僕は、その時間を見極めてシッポを攻撃することにした。

 何度か失敗したが、上手くシッポの膠着時間を見極められた。


 スイッとシッポに近づき、僕はシッポを掴んだ。

 すると、シッポはバタバタと暴れ始めて、胴体から切り離された。


 シッポ……気持ち悪い。

 僕は、掴んでいた気持ち悪いシッポを手放した。


 直ぐにシッポ本体に向き返したが、シッポ本体はまるで酔っ払ったおじさんのように、フラフラとしている。


 シッポを切り離したことで、バランスが悪くなったのだろうか?

 シッポのクセに、二足歩行するからそうなるんだ……知らんけど。


 僕は直ぐに、シッポ本体に近づき、シッポを前かがみにさせて、シッポの背に手を添えると思いっきり腹に膝蹴りを入れた。


 するとシッポは、口からネバネバした舌をダラリと吐き出し、前のめりに倒れた。


 僕は勝った。

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