第2話 ロボット
「おい、ケイレブこっちに来い」
ある日、おじさんが僕を呼び寄せた。
この時僕は、自分がケイレブであることを知る。
おじさんの話によると、どうやら僕は試合に出るらしい。
と言っても、初めてのことだし、いわゆる前座試合というやつらしい。
「手を抜くんじゃねえぞ! 必ず勝て!」おじさんは厳しい。
試合会場では、コンクリートで固められた、大きな箱の真ん中に、四角くロープが張られていた。
このロープの中で、試合をやるらしい。
僕の相手はロボットだった。
「いいか、これまでの練習の成果を遺憾なく発揮するんだ」
いつになく真面目におじさんは言う。
「お前ならやれる」
そう言って、僕を四角く張られたロープの中へ送り出した。
会場の観覧席は、全て埋まっている様だった。
ところが、僕がロープの中に入ったのに、歓声の一つも無い。
この試合には全く興味が無いようだ。
まあいい、僕は目の前のロボットを倒すことに集中した。
四角の中央で、僕はロボットと向かい合う。
ロボットは……どう見てもロボットだ。
僕と同じくらいの身長で、全体的に黒い色をしている。
僕と同じように、期待されない試合に出るのだから、大したことはないだろう。
僕たちは、素手で試合をする。
向こうはロボットだからいいだろうが、金属を殴る僕の身になって欲しい。
「ファイ!」
試合の合図がなった。
ロボットはいきなり、僕の顔目掛けてパンチをしてきた。
僕は慌てて後ろに跳んで、ロボットのパンチをかわす。
「バカヤロー! なにやってんだー!」
おじさんの怒号が聞こえる。
危なかった。避けなければ、あの一発で終わっていた。
僕は練習を思い出す。
毎日毎日、僕は目の前の人の動きを真似していた。
ロボットは攻めてこない。
様子を覗っているようだ。
僕は気を引き締めて、ロボットに向かった。
僕が近づいて直ぐ、ロボットはまた僕の顔にパンチを打ってきた。
それを、頭を倒してかわすと、僕は手の平の底部でロボットの腹を叩いた。
カーンという音が鳴るが、ロボットにダメージは無いらしい。
僕は直ぐにロボットの後ろに回り、ロボットの脇腹に蹴りを入れる。
またもやカーンという音が鳴るが、やはりロボットにダメージは無いようだ。
ロボットが背後に向き直してきた。
僕は距離を取ることにした。
二回クリーンヒットしたが、ダメージは無さそうだ。
このまま時間いっぱいまで、手数を与えて判定勝ちを狙うか?
幸い、ロボットの動きは見えている。
攻撃はかわせる。
「てめぇ! ヒヨッてんじゃねえぞお!」
おじさんの怒号が聞こえる。
「ぶっ倒しやがれええ!」
どうやら判定勝ちは駄目なようだ。
となると、大ダメージを与える必要がある。
僕はロボットにサッと近づくと、両手を握って、下から上に振り上げる。
すると、ロボットのアゴにクリーンヒットした。
ロボットの身体は宙に浮き、頭が吹っ飛んでいった。
僕は勝った。
すかさず、おじさんが僕に抱き着いてきて、笑っている。
正直気持ち悪い。
今日の勝利で、どうやらもっと強い相手との試合をすることになったようだ。
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