俺は今日からプレイヤーになります!

しばらくしてミュールが風呂から出てきた。


「よしじゃあ風呂はいって来るね。」


俺はそう言って風呂場に入った。

風呂場は日本とは違って湯船が無かった。


(何となく予想はしてたがこういう所は日本が恋しいな。)


俺はシャワーを浴びて風呂を出た。


「よしスキルの確認もしたし寝るかぁ。」


俺がそう言って顔を上げると

ベットの上にタオルを巻いただけのミュールが座っていた。


(ん?何か嫌な予感がするぞ?)


俺が呆然としているとミュールは立ち上がり言った。


「大変恐縮ながら私が今日の夜伽を行わして貰います。」


ミュールは少し震えていた。


(この世界の奴隷、いや奴隷とはこういうものなのか?)


俺は床に置いてあったミュールの服を拾い渡した。


「そういうのはいいよ、それに君は俺の奴隷じゃないしね。」


ミュールは安心したのか膝から崩れ落ちた。

俺はミュールに服を着させてベットに入った。

ミュールは俺の腕に抱きついていた。


翌日、俺はミュールを連れてギルドへと向かった。

ゼルは既に到着していたようだ。


「ゼル、遅くなってごめん。」


ゼルはこちらに振り向いて手を振った。


「いやいや時間どうりだよ。それじゃあ行こうか。」


ゼルは歩きながら説明してくれた。

今回のクエストは闘技場でのテロ事件の調査らしい。

ゼルの話に拠ればここ何回かの大会で出場プレイヤーが

次々に行方不明になっているらしい。

その他にも優勝候補のプレイヤーが何者かに襲われ

大怪我をおうこともあったのだとか。


「大会の優勝候補と戦って勝つぐらい強いのか?」


俺が聞くとゼルは言った。


「大会の優勝候補と言ってもプレイヤーの強さはせいぜい

ゴールド冒険者ぐらいだと思ってくれたらいい。」


ダイアモンド冒険者などに多いケースらしいのだか

強いプレイヤーはプレイヤーをやめて冒険者になることが多いらしい。

そのため年々プレイヤーのレベルは下がっているのだとか。


「今回の依頼ではそのテロリストの調査と逮捕が目的だ。

そのため威吹鬼くんには大会にプレイヤーとして出場して欲しい。」


「おとり捜査ってことか?」


「簡単にいえばそうだ。俺が出ても良いのだが俺の場合、出場しただけで

バレてしまう、それに俺は体術は苦手なんだよ。」


「そういう事か、武器を持ち込めばテロリストにバレるし、装備を外せば相手に負ける可能性があると、」


「恥ずかしい話だけどそういう事だね。昨日君の動きを見た時に

君ならと思ってね。

威吹鬼くんは対人戦が得意そうだけど武術でも習ってたのかい?」


「まぁ小さい頃に少しな、」


俺は関西にいた頃はかなりグレていた。

毎日のように喧嘩していた。

そのせいで色んな奴を敵に回してたこともあって

住みにくくなった。

だから上京した。


「威吹鬼様はどこからいらっしゃったのですか?」


ミュールが横から聞いてきた。


「あぁえーっと、遠い東の国からかな?」


するとゼルは少し考えてから


「東の国といえばガイゼルとか?」


「まぁその辺だと思う。」


そうこうしている内に闘技場へ着いた。


「それじゃあまずは選手登録しに行こう。」


ゼルがそう言って受付へ走って行った。

受付で選手登録を済ませ、俺は試合の準備を始めた。

準備と言ってもすることは無いのだが、


「周りは俺が調査するから威吹鬼くんは試合に集中してくれたらいいよ。」


「了解、ミュールは観客席で応援してくれな。」


ミュールは頷くと観客席の方へと走って行った。

俺は闘技場へ入った。


「皆さん!お待たせ致しました!ただ今より1回戦、第2試合を始めさして貰います。」


実況が闘技場全体に響いた。

相手のプレイヤーは今大会の優勝候補らしい。

確かに見た目はごつくて強そうだ。


「両者握手を!またこの大会において

外部からの攻撃以外の反則行為は存在しないものとします!」


(要するに好き放題しろってことだな)


「この大会に出場したことを後悔さしてやるよ。」


相手の男がニヤリと笑った。


試合開始の合図とともに男は俺に突進してきた。


(調査の事もあるし長引かせた方がいいのか、、)


俺は突進を躱して距離を取った。


「おいおいビビってんのか?」


男が叫んだ。

するとまた男は突進してきた。


(こいつ馬鹿なのか?)


俺はもう一度突進を躱して今度は男の顔面を掴み地面に叩きつけた。

すると男は気絶していた。


(さすがに弱すぎるだろ、)


試合時間約30秒で決着が着いてしまった。

俺は男を放って準備室に戻った。

俺が廊下を歩いていた時だ、隣を通った女から

とてつもない程の殺気を感じた。


(っ!?なんだ今の!?)


俺が振り返った時、そこには女どころか人1人もいなかった。


(間違いない、テロリストだ。)


俺は急いで準備室に戻り通信魔法でゼルに連絡した。


「ゼル!おそらくテロリストは女だ、黒いフードを被っていた。」


「威吹鬼くんか、どこでそんな情報を?」


「確信では無いが俺と廊下ですれ違った女からとてつもない程の

殺気を感じた。それに振り返ると姿を既に消していたし、おそらく犯人だ。」


「わかった、警戒しとくよ。」


「また連絡する。」


俺はそう言って通信を切った。


(もしあれが犯人ならあいつの目的はなんだ、

あの殺気は確実に俺に向けてきていた。嫌な予感だ。)


俺は10分ほど心を落ち着かせて観客席に向かった。


「ミュール!」


俺が呼びかけるとミュールは振り向きこちらに駆け寄ってきた。


「威吹鬼様!すごい活躍でしたね!流石です!」


ミュールは目をキラキラと輝かしている。


「あ、ありがとう。それよりミュールやはりこの中にテロリストがいる。

この大人数の中にいれば安全だろうが人気のない所は避けてくれ。」


ミュールは少し緊張したような顔をして頷いた。

その時、観客席が一斉に盛り上がった。


「なんだ?」


闘技場を見るとぐったりと倒れ込む大男とその上に

白いマントに包まれた女性が立っていた。


(何故だろう今、彼女と目が合った気がする。)

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