俺は今日からスキルマスターになります!

外に出るとミュールが3人組の冒険者に絡まれていた。




(この世界にもナンパは存在するんだなって当たりか、)




男たちはかなり酔っている様子だった。


よく聞こえないが、珍しいエルフという事と


奴隷服を来ていることに文句を言っていた。




「奴隷の癖に冒険者に逆らうってのか?」




男の1人がそう言った。


ミュールは俯いて黙っていたが俺がギルドから出てきたのを確認すると


こちらに駆け寄ってきた。




「何があったの?」




俺は小声で聞いた。




「威吹鬼様を待っていたら突然話しかけられて、それで、」




ミュールは泣いていた。


すると冒険者3人組がこちらに近づいてきた。




「あんたがこいつの主人か?」




男は3人とも胸にシルバーバッチを付けていた。




「そうだけど、この子に何か用?」




俺は睨みを利かして言った。


男たちは俺の装備を見てからニヤリと笑った。




「お前どうせブロンズで金がないんだろ?そいつ一晩貸してくれよ。


金は金貨3枚でどうだ?」




確かに俺の装備は初期のものだ。


それにブロンズからすれば金貨3枚は高額と言っても良いかもしれない。


しかし俺は今ブロンズでは無い。




「金には困ってないし、そんな端金でこの子を貸す気は無い。


むしろさっきのナンパ代を払ってもらいたいくらいだ。」




俺がそう言うと男達の表情は険しくなった。


自分より格下と思っているやつから煽られたらそりゃイラつくだろう。




「てめぇ、ブロンズがあんま調子乗んなよ。」




男の1人が言った。




「あんたらこそ、あんま調子乗んなや。シバキ倒すぞ。」




思わず関西弁が出てしまった。


高校に入った時に上京したのだが、元々は大阪出身でバリバリの関西人だ。




「んだとゴラァ。」




男の1人が掴みかかってきた。


俺は男の手を捻り相手の頭を地面に叩きつけた。


そのまま殴りかかってきたもう1人の男の腹にパンチを入れて足を引っ掛け


転ばした。




「言うたろ、調子乗んなって。」




その時後ろでミュールの叫び声がした。


それを聞いて俺が振り向い向くと、


残りの1人の男がミュールの首にナイフを突きつけていた。


周りの野次馬も慌て始めた。




「てめぇ動いたらこいつの首を切ってやるからな。


分かったら大人しくそこにひざまづけ。」




(クズが)




俺がその場に膝をつけた時だった。




「おいおい、その辺にしといたらどうだ。」




野次馬の中から大きなランスを装備し、青い鎧を着た男が歩いてきた。




「な、なんだてめぇ、、、な!?」




ランスの男の首にはダイアモンドランク用のバッチを


つけたネックレスを下げていた。




男はそれを見てナイフを捨て逃げ出した。




(同じダイヤモンドでもこんなに差があるのか、)




開放されたミュールは俺に抱きついてきた。




「良かったぁ威吹鬼様に何かあったら私、どうなっていたか、、、」




ランスの男が俺に近寄ってきた。




「大丈夫かい?」




男は大兜を被っていて顔は見えなかった。




「あぁ、助かったよ、ありがとう。ちなみに名前は?」




俺が聞くとランスの男は答えた。




「俺はゼル、ダイアモンドのランサーだよ。」




「俺は威吹鬼、同じくダイアモンドの狙撃手だ。」




「あぁ君のことは知っているさ、さっきギルドの中で英雄って騒がれてたよね。」




男はさっきの騒動の前に同じギルドの中に居たらしい。




「そうだったのか、まぁほんとに助かったよ。このお礼はどうすればいい?」




俺がそう聞くとゼルは少し悩んだ後に答えた。




「それなら俺を君のパーティに入れてくれよ。」




「パーティ?別にいいけど、そんな事でいいのか?」




ゼルは明日行うクエストに協力して欲しいとの事だった。


こちらにしても仲間は嬉しい。それにダイアモンドの腕の効くランサーときた。


俺は明日の朝にギルドで集合する約束をして宿屋に帰った。




帰る途中、繁華街を通った時、ミュールはずっと俺の腕にしがみついていた。




「あの、ミュールさん?いくらなんでもくっつき過ぎでは?」




俺が聞くとミュールは顔を膨らませて言った。




「威吹鬼様は私の威吹鬼であって他の女に手出しされたら困ります。」




なんとも嬉しいのか嬉しくないのか分からない感じだ。


そうこうしている間に宿屋に着いた。




「あの、今2部屋空いて、」




「一部屋でお願いします!」




俺の言葉を遮るようにミュールが言った。


受付のおばちゃんが笑いながら、




「アツアツだねぇベット壊すんじゃないわよ!」




と言った。




(マジかよ)




俺は1週間分の家賃を払い部屋に向かった。


部屋は少し狭いが2人なら充分暮らせるくらいの広さだ。




「飯は帰って来た時食べたし、今日はもう寝るか、」




俺が振り向くとミュールは何かソワソワしている。




(一部屋じゃやっぱり緊張するよなぁ、まぁミュールが言い出したんだけど、)




「とりあえず水浴びしてきたら?ここ部屋に、水浴び場あるいてるみたいだし。


先入ってきていいよ。」




俺がそう言うとミュールはビクッと背筋を伸ばした後に




「は、はいそれではお言葉に甘えて、」




と顔を真っ赤にして水浴び場に歩いていった。




(この世界にも風呂はあるんだなぁゲームではそういうの無いからな。


さてと、始めるか)




「インテレジェンスコマンド」




俺はインベントリを開いた。




(能力値が上がってる、これは自動で上がるのか、


俺が振り分けるのはスキルだけっぽいな)




インベントリを見て分かったことは敵を倒した時の戦利品つまりドロップアイテムは所持権限を持っていると表示され、そこから呼び出すことが出来る。




(ミュールがナイフを取り出したのもこれからか、)




また武器や防具は使用する時以外はインベントリにしまう事が出来る。


必要な時に呼び出すとそこに具現化されるという訳だ。




(とりあえず必須スキルは全部習得しとかないとな。幸いフレイムタイガーのおかげでだいぶ、スキルポイントはゲット出来てる。)




(詠唱を唱えなくてもスキルが使えるスキル、剥ぎ取りスキル、この世界の言語や


文字を全て和訳できるスキル、これくらいか、あとは戦闘スキルに回すか、)




俺はスキルページを見ていて気づいた。




(おそらく戦闘スキルは戦うことで自動で習得される、ていう事は、俺もう習得しないといけないスキルないじゃん。狙撃スキルもバフも全部習得してる、、)




俺はスキルページの右上にスキルマスターと表示されたのを見て


何となく虚しくなった。


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