俺は今日から英雄を目指します!(後半)

俺の放った弾はフレイムタイガーの体を貫いた。


俺はフレイムタイガーが倒れた瞬間に身体中の力が抜けた。




「危なかったぁぁ、大丈夫?怪我はない?」




俺は後ろで口を開けてぼーっとしてる彼女に聞いた。




「え、あ!はい!助けてくれてありがとうございます!」




最初見た時は焦って全然気づかなかったがよく見ると、


彼女の顔立ちはとても綺麗だった。


透き通った青い目に黒髪のショートヘア、




(この耳、エルフか?実際見ると超絶美少女だな、)




俺は立ち上がり彼女に手を差し伸べた。




「君はどこから来たの?ここら辺でエルフを見るのは初めてなんだけど?」




すると彼女は涙目になって言った。




「私、実は奴隷として父から売られたんです。そしてその奴隷商に連れられている所をゴブリンに襲われて、」




(そういう事だったのか、確かにこの世界には奴隷制度があったな。)




俺は今にも泣き出しそうな彼女の頭を撫でた。




「もし良ければですけど、自分と一緒に行きませんか?」




彼女は慌てた様子で顔を上げて言った。




「そ、そんな!悪いですよ!私汚いですし、それに命を助けて貰ったのに


それ以上ご迷惑をおかけする訳には行きません!」




俺は少し考えてから




「汚いのは洗えば解決するし、それに俺が一緒に来て欲しいから提案した訳で


もちろん無理にとは言いませんが、できれば


俺はあなたと一緒に冒険がしたいです。


それにあなたはとてもお美しい方ですしね。」




俺がそう言うと彼女は泣き崩れてしまった。




「え、あ、すいません俺なんかまずいこと言いました?」




俺が聞くと彼女は首を横に振り言った。




「本当にありがとうございます。私、本当になんとお礼を言っていいか、」




彼女は涙を手で拭い言った。




「冒険者様、私はリアン・ミュールと申します。これからはあなたの奴隷として


助けて貰ったこの命を貴方様に捧げます。どうぞよろしくお願い致します。」




「ちょっ、ちょっと待って待って、俺の奴隷?なんでまた奴隷?


別に奴隷じゃなくてもいいんじゃ?」




俺は驚きを隠しきれなかった。


ミュールは俺に詰め寄り言った。




「いえ、私が冒険者様、いや、ご主人様と同等の立場で生活するなど恐れ多い!


どうか私を奴隷として頂けませんか?」




(かなり情熱的に奴隷になりたいんだな、もしかしてドM?助けるの間違えた?)




「わかったけど、せめてご主人様じゃなくて威吹鬼って呼んでくれないかな?」




俺がそう言うとミュールは少し悩んだあとに言った。




「分かりました。威吹鬼様、どうぞよろしくお願い致します。」




(今何を悩んでたんだろ、、、まぁ良いか。)




俺はミュールを連れてもう一度ゴブリンの巣窟へ向かった。




「残りのゴブリンも狩っとかないとなぁ」




俺がそう言うとミュールが言った。




「それなら大丈夫だと思いますよ。おそらくさっきのフレイムタイガーは


巣を襲撃した後に私たちを待ち伏せしてたのでしょう。」




「なんでそう思うの?」




「フレイムタイガーは獲物の巣を先に襲って後から帰ってくる獲物を待ち伏せする習性があるんですよ。」




「へーそうなんだ。それじゃ一応確認だけしに行こうか。」


(やはりエルフはこの世界に詳しいみたいだな、一緒に来てもらって良かった。)




俺は少し感心しつつ森を歩いた。


ミュールが言った通りそこにはゴブリンの姿がなかった。


俺が確認して振り向くとミュールがいつからかナイフを持っていて


ゴブリンたちの死体の胸を刺し始めた。




「ミュール何してるの?」




俺がそう聞いた時刺されたゴブリンの死体が赤い光になって弾けた。


そしてしたいからは赤い球体の石のようなものが落ちた。






「え?なにこれ?」




俺が言うとミュールはそれを拾ってまたまたどこで拾ったのか


布でできた袋に入れた。そして俺に言った。




「威吹鬼様これをご存知無いのですか?これは、剥ぎ取りスキルで


倒した獲物の死体に専用の収集武器を当てると


小さな石となってドロップするんです。」




「へ〜、て、俺フレイムタイガーの剥ぎ取り忘れてたぁ!早く戻んないと!」




俺が慌てて走り出そうとするとミュールは笑いながら言った。




「大丈夫ですよ、ほら」




そう言ってミュールは腰に着けた袋から赤と黒の球体を取り出した。




「さっきちゃんと剥ぎ取って起きましたので。」




俺は黙ってミュールに近づいた。




「え?威吹鬼様?私何か御無礼を?」




俺は怯えるミュールの肩を掴んで言った。




「ミュール・・・良くやった。」




「え?」




俺はミュールを抱き寄せて言った。




「本当にありがとうぉぉ良かったぁぁあ」




ミュールは顔を真っ赤にして慌てていた。


俺はミュールをしばらく抱きしめたあと


エスカド王国に帰った。




「そう思えばミュールさっきのナイフとか袋ってどこから持ってきたんだ?」




「あれは魔法です。アイテムワープという能力で自分の所有物化しているものなら引き寄せることができます。」




「へ〜、そんな魔法もあるのか、」




ミュールと話しているうちにギルドに着いた。


俺はミュールからさっきの袋を受け取って受付に渡した。


すると受付嬢はかなり驚いていた。




「こ、これは、フレイムタイガーの、、これをどうやって!?」




俺は事の経緯を話した。




「そんな事が、またギルド長に報告しなければ、


それよりご無事で良かったです。換金致しますので少々お待ちください。」




フレイムタイガーはマジレジェではそこまで強い扱いでは無かった。


弱い訳でもないが、レベルを上げると瞬殺できるレベル。


しかしこの世界では結構強いモンスターらしい。


しばらくして受付嬢が戻ってきた。




「これが報酬とこちらが素材報酬です。」




渡された袋の中には大量の金貨が入っていた。




「え?こんなに?」




俺が聞くと




「はい、フレイムタイガーは普通マスター1以上の冒険者様の討伐対象なので、


それと、フレイムタイガーを倒したという事でランクが上がりました。」




「そうなんですか、どれくらいですかね?」


(行ってもゴールドくらいかな、)




「えーっとダイアモンドですね。」




「え?ダイアモンド?私今ブロンズですよ?」




「ええ、ダイアモンドです。おめでとうございます。こんなに早くダイアモンドまで上がった人は威吹鬼様が初めてです!」




受付嬢がダイアモンドと言った瞬間に周りにいた冒険者達が湧いた。


そして口々に




「もしかして、100年に1度の英雄なんじゃないか?」




(英雄?なんだそれ?)


「あの、英雄ってなんですか?」




俺が受付嬢に聞くと




「英雄は100年に1度この世に召喚されると言われる最強の勇者様です。


歴代の英雄様はいずれも高速でランクを上げています。」




(英雄かいい響きだな、ん?でも、英雄って事は魔王もいるって事か、)




俺は英雄と呼ばれた喜びと魔王という存在があるかもしれないという不安


が混ざりあって少し複雑な気持ちになった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る