俺は今日から英雄を目指します!(前半)

この世界の地図はかなり優秀だ。


地図は雑貨屋と冒険者ギルドで購入でき、


ベテラン冒険者が売ってることもある。


また売り手によってその地図の目的が違ってくることが多い。




例えば雑貨屋で購入できる地図のほとんどはなんの付け加えのない


シンプルな地図が多い。


それに対して冒険者ギルドで購入できる地図はランクによっての危険地帯や


安全地帯などの書き込みがあるものがほとんどだ。


そして、少し値段はするがベテラン冒険者から購入できる地図は


オススメの狩場や薬草の採取ポイント、洞窟の場所や


モンスターの縄張りなどの細かい情報を得ることが出来る。




(俺が今いる所がエスカド王国で、ここから東にある古谷の森を抜けると


パルセス帝国があって、そこから南にある龍石砂漠を超えるとマルス連合国


があってそこで亜人種の多くが暮らしていると。)




(やっぱり地図に情報が載っているのは便利だなぁ)




冒険者になると移動が多くなるため地図は常に2種類ほど携帯するのが


必須になってくる。




「まずは金を何とかしないとなぁ、でもブロンズの仕事だと報酬も少ないし、


スキル獲得のための経験値もほとんど入らないんだよなぁ。」




俺は金銭問題を解決するためにギルドのヘルプサービスに向かった。




「こんにちは、威吹鬼様、今日はどのようなご要件でしょうか?」




俺は受付嬢に案内された席についた。




「金銭的に今のブロンズのクエストだと厳しいんですけど、


何かいい稼ぎ方って無いですかね?」




俺が聞くと受付嬢は俺の事を蔑んだような目で見てきた。




(え?俺なんか悪いこと言った?何その目?え?怖いんだけど、)




受付嬢は我に返ったかのように話し出した。




「威吹鬼様はモンスターの戦利品を持ち帰っておりますか?」




「戦利品ですか?いえ、素材剥ぎ取りの知識が無いので、


持ち帰って無いですけど。」




「そうでしたか、それならモンスターの体の一部を切り取ってギルドに持ってこれば、鑑定し換金することが出来ますよ。また剥ぎ取りスキルを取得しておけばわざわざ切り取らなくても自動的な倒した獲物から戦利品が受け取れます。」




俺はこれまで剥ぎ取りはゲームのように自動でドロップしない物だと考えていた。




(マジかよ、俺だいぶ損してるじゃねーか、やっちまったなぁ。)




俺は相談料金を支払いついでに下級モンスターのゴブリン討伐のクエストを


受注してその場を去った。




(よし、早速ゴブリン退治に行くか、)




俺は馬車でエスカド王国の西に位置する獣神の森に向かった。




(そう獣神の森を抜けて山を越えたら賢龍の谷があるんだっけ、また機会があれば行ってみたいな)




「最近ここらでえらくデカいモンスターがアンデットが出るっちゅう噂がありましてね、冒険者様も気をつけてくだされな。」




御者の男が言った。




「そうなんですね、憶えておきます。」




目的地の獣神の森の入口に着いた。


馬車が止まり俺が地面に足をつけた瞬間だった。


森の方からジャイアントイノシシの群れがこちらに走ってきた。




「う、うわぁぁ」




御者の男がガタガタと震えている。


俺は馬車の前に出た。




「プロテクトコマンド、閃光」




俺がそう唱えると目の前が大きな光で包まれた。


そしてジャイアントイノシシの群れがその光を避けたため


馬車を逸れて走っていった。




「助かりました、冒険者様。」




ホッとした様子で御者は言った。




「いえいえ、それではまた1時間後にお願いします。」




俺はそう言って獣神の森に入った。




(さっきのジャイアントイノシシは何だったんだ、


何かから逃げてるようにも見えたけど、、)




俺は警戒しながら森を進んだ。




(そろそろゴブリンの巣窟が見えるはずなんだが、、、ん?)




俺が森の中央に入った時だった。


そこにはゴブリンの巣窟があり、二匹のゴブリンに連れられ歩く


亜人種の女の子がいた。


ゴブリンには雌がいないため、繁殖のために他族の雌を拉致する。




(未だに産まれてくるのが雄のみってのが意味不明なんだよなぁ)




「シャドウハイド」




俺は身を隠しながらスナイパーライフルを取り出した。




「弾丸強化、弾丸制御、スニークスペース。」




俺は発砲音を聞かれないように内からの音のみを遮断するシールドを張った。




(今回も1発で仕留めるか、、、)




俺がトリガーに指をかけた時だった。


森からいきなりフレイムタイガーがゴブリンめがけて飛び出してきた。




(フレイムタイガー!?なんで獣神の森に?賢龍の谷が生息地のはずじゃ!?)




フレイムタイガーは一般的な現代の虎よりもふたまわり程大きく、


体毛が黒と赤の炎属性のモンスターだ。




フレイムタイガーは女の子の前を歩いていたゴブリンに襲いかかった。




(とにかく今は彼女を助けないと、)




俺は狙いをゴブリンからフレイムタイガーに移した。


フレイムタイガーがもう1匹のゴブリンに襲いかかった瞬間に俺は引き金を引いた。


銃弾はフレイムタイガーの右目に命中した。


フレイムタイガーが怯んだのと同時に俺は飛び出し、腰が抜けている


彼女を背負って森の中に走った。




(ここから真っ直ぐ行けば川辺に出るはず、川を渡れば時間が稼げる。)




俺は全速力で走った。そして森を抜け川辺に出た時だった。


目の前にフレイムタイガーが飛び込んできた。




(クソが、真後ろまで来てたのかよ、気付かなかった。どうする、


スナイパーなら距離を取らないと絶対に負ける。。。そうだ!)




「爆破耐性強化」




俺は背中に背負った彼女に耳打ちした。




「しっかり掴まってて。」




顔は見えないが彼女の手に力が入ったのがわかった。


フレイムタイガーが俺に飛びかかってくる瞬間、




「弾丸属性強化!爆裂弾!」




俺はそう叫んで自分とフレイムタイガーの間に撃った。


爆発強化によって威力が約2.5倍、


弾丸強化によって約2倍、


それに元々の威力が高かったこともあり放った銃弾は大爆発を起こした。


その威力で俺は約30メートル程吹き飛ばされた。




(爆発なら直接当てなくてもダメージが入るはず。)




しかしフレイムタイガーは距離こそ離れていたもののダメージは入っていない


様子だった。




(爆発耐性か?まぁいい、この距離なら狙う時間が稼げる!)




俺は背負っていた彼女を下ろして伏せた。




「1発で仕留めてやる」




俺は指にスコープを覗き指に力を入れた。




(1発で仕留めるんだ、ハズしたら死ぬ。限界まで引きつけろ。)




俺は震える右手を左手で地面に押さえつけた。


フレイムタイガーがこちらに向かって走ってくる。


距離が20メートル程まで来た。




(まだだ、まだいける。)




そしてフレイムタイガーが約10メートル程まで近づいてきた時だった。




(今だ!)




俺は引き金を引いた。


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