第2話「始まり/第二次フランス奪還作戦2」

「世界が、終わる……?アンタ何言って」

「正確には戻る、かな。君たちが生まれてなかった時代までね」

何を入っているのか、さっぱり解らなかった。普段は大人しい、冗談なんて言わない私の弟。だが、今目の前にいるのは誰だ?弟であるはずなのに他人の話している感覚だ。

「前はもっと穏やかな場所だったのに、君たちのせいで何もかもが無くなってしまった。僕は、その失った平穏を取り戻す。その為に、君たちを絶滅させるんだ」

弟の姿をした“それ”は、まるで私一人に対してではなく、もっと大勢の、まるで議員が演説するかのような口振りで話す。“それ”は何かの使者とでもいうかよように、もしくは“それ”自体が行うかのように、平然と冷たく言い放つ。私にはもう、何がなんだかさっぱり解らない。

「もう間も無く、君たちは絶滅する。だからね、チャンスを与えに来たんだ」

チャンス?一体何の事だ?そもそも、君たちとは何を指し示す?

整理出来ない頭なぞお構い無しに、“それ”は動き出す。

「これを調べて見てよ。そうすれば、少しは時間を稼げるかもね」

“それ”は右手のナイフ状の物を手渡す。黒く、冷たく、とても重い。両手で持つのが精一杯な程だ。

「じゃあ、ちゃんと伝えたからね」

私が顔を上げる頃には、“それ”はもう姿を消していた。現実とは思えない物体と、これから何が起こるのかという現実の恐怖心を残して。






2046年9月5日

ノルマンディーに上陸した本隊は、この場所に要塞を築こうとしていた。巨大な港と、高く分厚い壁、その内側に住宅街を建設する。その為には、拠点回りが安全であるのが条件であるため、上陸作戦で生き残った俺達と本隊からの数名で偵察部隊を編成。周辺の安全を確保する。

「お前達は海岸線を辿ってイギリス奪還作戦への足掛かりを探してくれ。勿論発見したUASは見つけ次第すぐに殺せ」

こうして、俺達は出発したのだった。



基地から歩いて5キロ地点、小型のUAS共が群がっていた。およそ16匹。

「この距離なら行けるか……、軍曹、狙撃準備」

「了解」

命令通り、俺は所持していた対物ライフルを構える。小型とはいえUASだ。通常の対人弾では殺しきる事は出来ない。その為の対物ライフル、問題無く奴らを殺せる。

狙うのは一番右のヤツ、UASに共通する特徴だが、どいつもこいつも岩みたいにゴツゴツしてやがる。更には内側から緑色に発光している。ますます気味が悪い。

スコープを覗き込み、狙いをつけ、容赦する必要もなくトリガーを引く。耳が割れそうな程の重低音と共に放たれた弾丸は、真っ直ぐ進みUASの頭を吹き飛ばす。ヤツの残骸は音を立てて崩れ去り、石ころに還元された。残ったUASも特殊弾を装填したアサルトライフルの一斉射で殲滅した。

「UASの一掃を確認、驚異を討ち滅ぼしたぞ」

一安心する俺達だが、まだ任務が残っている。すぐに出発してイギリス上陸作戦で使用する橋頭堡を構築出来そうな場所を見つけなければならないのだ。

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UAS @Diekfleet

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