弐拾漆
『想いが強ければ現世に留まろうとする力も、影響力も強くなるんだよー。ほらっ、よく怨霊とかって言うじゃん?恨みや憎しみって言うのは、どうしても根強く残っちゃうんだー。だから祓うのも面倒なの』
『なのでもし、我等が祓ったあの時、偶然何かの要因で霊が居なかっただけで、未だにあの娘を狙っていた場合、若しくは、あの娘の家に居着いていたりした場合……』
「また何かあるかもしれないって事か……」
猫神達の説明でなんとか理解した俺は、二人の後を継いだ。
猫神達は揃って首を縦に振る。
「はい。ですから昨日ご本人にも何かあったらご連絡頂けるようにとお伝えしましたが……出来れば拓真さんにも気にしておいて頂いたほうが良いかと」
一人と二匹で受け継がれたリレーは、尊さんの言葉で締め括られた。
「……解った」
「あっ、でもそんなに心配なさらないで下さい。昨日の儀式はきちんと行いましたし、後日有村さんが行かれたという場所にも行ってみますから」
どうやら、余程俺の表情は強ばっていたらしい。
尊さんは慌てフォローを入れる。
「お願いします」
改めて深々と頭を下げた。
「はい!」
尊さんは、任せて下さいとばかりにハキハキと返事をする。
けれど、きっと本当は彼女も不安なのだ。
まだ慣れぬ力を使うことも、神子としてやっていけるかどうかも。
今日俺はそれを知ってしまった。
「何から何まで本当に有難う。あ、連絡先訊いても……」
言いかけて、天空猫神に物凄く睨まれていることに気付く。しかも、ご丁寧に見えるように鋭利な爪までチラつかせている。
「い、いや!違う!!ほら、俺に出来る事とかあるかもしれないし、そ、それにこの狐のこともあるし!!」
俺は慌てて弁解する。
物騒な爪で脅されているせいか、しどろもどろになってしまったが、下心など断じて無い。
そりゃぁ、こんな美少女。しかも女子高生で神子属性の女の子とひょんなことからお知り合いになれたというのは物凄いラッキーだが……
あ、天空猫神。牙まで見せてる……
なんか地陸猫神までシャドーボクシング始めたし……
「いえ……なんでも……」
「そうですね。連絡先お伺い出来ると助かります」
「え?」
俺と天空猫神のやり取りなど全く気付いていない様子で、尊さんはあっさりと白いスマートフォンを取り出す。
「いいの?」
「ええ、勿論です。稲荷大明神様のことも気になりますし、猫神達もまた拓真さんに会えれば喜ぶと思いますから」
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