弐拾弐
「どうやら、稲荷大明神様は自身の依り代を壊されたことをお恨みになって、拓真さんに自身と同じ世界を視せるという神罰を与えようと憑いたものの、その間にご自身の帰るべき社がどこにあるか判らなくなってしまったようです」
猫神達に責め立てられる狐を見兼ねた尊さんは、一人話についていけずにいる俺に向けて丁寧に説明をしてくれた。
「猫神達が言うように、私もお社が完全に壊されてしまったというわけではないと思います。だからこそ、稲荷大明神様は現世に今も神様として存在していらっしゃいますし、神様であるからこそ、拓真さんは御霊や神を視ることが出来ているのだと思います。もし、稲荷大明神様がもう神様ではなく所謂悪霊や怨霊になってしまっていたとしたら、神罰として拓真さんに与えた視る力はもう失われているはずです」
尊さんの言葉に意気消沈し、小さく縮こまっていた狐は、それこそ女神でも見つけたかのように目を輝かせた。
『まぁ、神は神でも祟り神じゃがな』
『まぁ、憑いた人間の霊力を上げるなんて神罰でもなんでもないけどねー』
尊さんのフォローを無駄にするように、猫神達が余計な言葉を付け加える。
狐の頭に大きな岩が音をたてて落ちてきたようなエフェクトが見えた気がした。
尊さんは「もう!ふたりとも黙ってて!」と愛らしく頬を膨らませる。猫神達は慌てて目を逸らす。元々猫のくせに猫を被る。
話を整理すると、狐は石像を壊した俺を恨んで、俺にとり憑いた。しかし、とり憑いたはいいものの、大きな災厄を与えるようなことは出来なかったらしく、霊感を与えて、怖がる様を見るというかたちで憂さ晴らしをしていたところ、いつの間にか帰る場所である社が移動されてしまい、仕方なくそのまま俺に憑いていたといったところらしい。
要するに迷子。
なんかどっと疲れを感じた。嘆息が勝手に漏れた。
俺に責任がないとは言えないし、霊感があるということに結構今までの人生でダメージを受けては来たケド、結局のところが俺は狐にとっての迷子センターでしかなかったという事だ。
「じゃぁ、その移動しただろう社を見つければこいつの恨みは晴れるってことだよね?」
「えぇ、まあ恨みは晴れるかもしれません、でも……拓真さんは、稲荷大明神様に憑かれていることをお気づきではなかったんですよね?」
「うん?あぁ、そうだけど……」
今更と思える、しかも一度伝えたはずのことを訊かれ、不思議に思いつつも俺は答えた。
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