拾参
『けど、ボク達の力を全部引き出せてるとは言い難いけどね。本来のボク達なら暁の後ろの奴を追い払う事も出来るけど、今の尊じゃそんなことしたら死んじゃうかもしんない』
天空猫神の慰めにより、なんと酷く重くなった空気が少し軽くなったのに、地陸猫神はそんな事を言いやがる。
見れば、奴は暢気に自身の掌を煮干しの味を名残惜しむようにペロペロと舐めてやがる。
まったく……どんだけ空気の読めない奴なんだ……
「そうだね。ちーくんの言う通り」
空気を読め無さすぎる地陸猫神の言葉に、尊さんはもう一度落ち込んでしまうかと思ったが、案外キリリとした表情をしていた。
「だから今の私では、拓真さんに憑いている神様を祓ってあげることは出来ないんです」
彼女は俺へと向き直り清々しく頭を下げる。
「いやいやいや。別にいいよ。自分に何かが憑いていて、しかもそれが神様だっていう事が分かっただけでも収穫だし」
俺は慌て顔の前に手を翳す。
「そうですか……でもやっぱり憑かれたままってのは気分が良いものじゃないですよね……」
「まぁ……ケド、今までもそうだったわけだし、自分のことだしさ、なんとか祀る方法を考えるとか、他の神社仏閣を探したりするからさ」
今の話を聞いた上で「なんか他に方法を考えてくれ」とは言えない。なんせ、彼女が教えてくれた最善策を俺は継続する自信がないというなんとも怠惰な理由で断っているわけだし。
「でも……折角若宮神社を頼ってくださったのに……お力になれないと言うのも、祖父に申し訳がたちません!」
えーーーーー!?
真面目というか、清すぎるというか……とにかく、良い娘過ぎるだろ!?それとも俺が他を当たってみるなんて言ったからか!?
いずれにしろ、年下とは思えない責任感の強さだ。親の金で大学まで入れてもらっているくせに、平気でサボって適当に生きている俺とは雲泥の差だ。
「何か出来ることはありませんか?」
個人の依頼には一切金を貰っていないと言う話なのに、何故か彼女は契約を取るのに必死な営業マンのように訊いてくる。
相も変わらず敏感に、彼女の言葉に応じるように、天空猫神が無言の圧を込めた目線を送ってきている。その目線は先程までの「これ以上尊を悲しませるようなことを言うな」というものから、「何でもいいから尊に自信をつけろ」という意に変わっていた。
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