肆
「えっと……お名前は?」
二人並んで縁側に腰掛け、巫女さんが始めに聞いたのはそんな質問だった。
そう言えば、昨日は美衣子が主役だからと、俺は名乗らず終いだったのだ。
「
「拓真さんですね。私は
今更ながらの自己紹介を済ます。
「それから、こちらがうちの神社の守り神であり、私の式神の……」
続けて、巫女さん――もとい尊さんは、脇に控える二匹の紹介を始めた。
「
名を呼ばれるとキジトラはフンと不満げに鼻を鳴らす。
「
対して、ブチは器用に猫の手でピースサインを作ってみせる。
どうやら大分性格に差があるようだ。
「式神って……こいつらは一体なんなの?」
とりあえず手始めとばかりに質問をぶつける。
『こいつらとは無礼な!我等は
俺の言い方が気に入らなかったらしい天空猫神は、腰に手を当てそう言う。
仕草も口調もやたらと偉そうにしているが、姿形は猫そのものなので、愛くるしくしか見えない。
「要するに……どういう?」
「えーっと、つまり、若宮神社では天照大御神様という神様を祀っています。その神様の神力の恩恵を受けた人間を護る者が式神、猫神達です」
「じゃあ、この猫も神様ってこと?」
「はい。神様の遣いと言ったら解りやすいでしょうか」
要は、天照っていうボス神の手下がこの猫たちで、神の力を授かっている尊さんをボス神の代わりにこの猫が守っているってとこだろうか。
『そうじゃぞ!小僧!我等は神!そんじょそこらの猫と一緒にするでないぞ!!』
「だから、俺の名前は拓真暁だって」
天空猫神は納得がいかないらしくまだやいやい言っている。
でも見た目は猫と遜色ないわけで、いくら神様だと言われても実感は湧かなかった。
『大体なんだ?あの先程の猫じゃらしは!?あんなものに我等がじゃれつくわけがなかろう!?』
憤慨冷めやらぬ天空猫神は、まだぶつぶつと文句を重ねている。
どうやら天空猫神には、俺が用意した最終兵器はお気に召さなかったようだ。
「…………じゃれてるケド?」
右手に持ったままの最終兵器―――猫じゃらしを振ってみると、地陸猫神が喜んで跳び付いて来た。
『コレッ!地陸!!何をしておるっ!?お主は猫神としての誇りはないのか!?』
『えーー、別にいいじゃん。面白いんだモン』
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