二匹の猫、一匹の狐。
壱
翌日。
俺は若宮神社へと続く小路の前に立っていた。
今日は一人。美衣子は一緒ではない。
昨日俺の中に深く刻まれてしまった疑問を解決する為、誰にも伝える事なくこうしてやって来ていた。
「にしても、なんて言うかなー」
ビニール袋を一つ提げ、昨日と同じように木々に囲まれた小路を進む。
勢いで来てみたはいいものの、質問するにしてもなんと言えばいいか考えあぐねていた。一つ間違えれば変な奴扱いされて追い返されかねない。
しかし幾ら考えても答えは出ぬまま、俺は二本の鳥居を潜り、境内へと踏み込む。
だが、昨日とは違い鳥居を抜けた先にあの巫女さんの姿はない。
仕方なく辺りをぐるりと歩いてみることにした。
出来ればあの巫女さんに直接会って話せるのがベストだ。もしくは動かぬ証拠を掴むしかない。
また昨日のように神主さんに仲介を頼んでしまうと、あの底の見えぬ笑みではぐらかされそうな気がするし。
社務所と祓殿を避けるように反対側へと歩いていく。巫女さんがいる可能性としては、そちらのほうが高いのだが、誰かに見咎められそうというのもさることながら、なんとなく、あの娘はこっちにいるような気がした。
若宮神社は、拝殿の奥に本殿を構える神明造の格式高い造りになっている。社務所や手水舎は勿論、摂社、末社と呼ばれる社がいくつかあり、社務所の奥には、神主さんたちの住居もあるようだった。
拝殿を横目に裏へと回っていくと、御神木と思われる注連縄で括られた大きな木があった。幹の周りが10mはあるんじゃないかというくらい大きなその木は、たった一本で十分な木陰をつくり出している。夕暮れ時が近いこともあり、木の周りは薄暗く、そのせいか参拝客の姿はこの辺には見られなかった。
そして、その大きな木を通り過ぎ、更に奥へと入りこんでいく。そこには大小の岩に囲まれた小さな池と東屋があり――――――
・・・・・・見付けた。
神社の裏手に回ったその東屋に設けられた木造のベンチに、あの巫女さんが座っていた。
しかも猫付きで。
巫女さんは昨日とは違い、ブレザーにチェックのミニスカートという学校の制服のような格好に身を包んでいる。
そして、あの小生意気な猫達もごく普通の猫にしか見えない。
昨日やたらと偉そうな口を利いていた奴は、キジトラ柄の身体を丸め、巫女さんの膝に気持ち良さそうに身体を埋めている。
もう一匹の奴は、白地に茶のぶちが入った柄で、巫女さんの隣で腹を出して寝こけていた。
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