拾肆
「重複してしまっていたら申し訳ないのですが、私からも幾つか質問させて頂きます」
完全にフリーズした俺達を放ったまま、巫女さんは俺の前へと腰をおろし、そう言う。丁寧な口調がその可愛らしい姿に不釣り合いだった。
「えっ?えっ?ちょっと待った!本当に君がお祓いをしてくれるの?」
美衣子より一足先に硬直から立ち直った俺は、巫女さんの話を遮り、直球の質問をぶつける。
「はい!宜しくお願いします!!」
巫女さんは、その失礼な俺の質問に気分を害した様子もなく、溌剌と肯定した。
その全く動じる様子もなく、常々とした態度を見せられると俺は二の句を継げなかった。
「では、質問宜しいですか?」
「はっ、はい」
巫女さんは表情を引き締め、真っ直ぐに俺の顔を見つめる。
ドキッ。
やたらに長い睫毛をたたえ、澄んだ瞳で真っ直ぐに見つめられると、流石の俺も胸が高鳴った。
そして、潤った柔らかな唇から言葉が流れる。
「無性に肩が凝ったりはしていませんか?」
「へ?」
思わず変な声が出た。
巫女さんは間違いなく、俺に向かってそう問うていた。
「あー、えっと……お祓いして欲しいのはこっちなんスケド……」
巫女さんの瞳に射抜かれたまま、ぎこちない動きで美衣子を指差す。
「えっ?あれ?そうなんですか?じゃあアレは違うのか……」
少女は本当に驚いたというようにそう言ってから、「ごめんなさい」と謝って、美衣子へと向き直る。
本当にこの娘大丈夫なんだろうか?
いきなりの勘違いにより、俺達の巫女さんに対する不信感は一気に膨らんだ。けれど、同時にその天然ぶりに緊張感も和らいだ。
もしかして、そういう作戦なのか?
「あの、お祓いってやっぱりお金かかるんですか?」
美衣子も胡散臭さを感じたのか、巫女さんが次に口を開く前に率先して訊ねた。
「あ、えっと、個人のご相談の場合は一切頂いていません。企業さんとか、建物の建築の際は頂いているんですが。いきなり高い壺を売り付けたりはしないのでご安心下さい」
巫女さんは先程の失態等まるで気にしていないかのように、冗談めかしてニッコリと笑った。
「はぁ」
巫女さんのそんな態度に、美衣子は曖昧な返事をする。
「えーっと、では視てみましょうか?少し手に触れさせて下さい」
美衣子の素っ気ない様子に巫女さんは僅かに苦笑を浮かべると、手品をする時みたいに何も持っていないことを示してから両手を差し出した。
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