拾参
違うのかよ!
神主さんの爆弾発言に俺は密かに心の中で突っ込みをいれた。
あっさりと否定された美衣子は何が何やら完全に判らなくなったらしく、目が点になっていた。
俺も何が何だか解んなくなってきた……
話を整理すると、この神社にはお祓いを得意とする人がいるらしい。
そんな情報を手に入れた美衣子は、それを頼りにこの神社へとやって来た。
そしてその人物はてっきり神社を代表する神主さんのことだと思い込んでいた。
だが違うらしい。
「はっはっはっ、いやはや、こういう言い方は失礼なんですけどね……最近その、インターネット?……そういうので家の神社が紹介されているらしくて、冷やかしが多いんですよ。それで窓口として私が話を聞かせて頂いているんです」
神主さんは相変わらず場違いな笑いをたたえながら、そう言った。
「ですが、どうやら貴方方のご相談は真剣なようですので、先程申し上げた通り、お祓いはお受け致します」
神主さんの朗らかな口調と事態の展開に全くついていけてなかったが、どうやらお祓いを了承してもらえたのは間違いないらしい。
「では、今その者を呼んで参ります」
神主さんは、突然パタリと笑いをおさめると、元の優しい笑顔に戻り、腰を上げた。
その者というのは、お祓いをしてくれる人ということだろう。
はぁー、なんだか今ので倍疲れた。
異常な脱力感に苛まれ、ズルズルとソファに沈み込む。
隣を見れば、美衣子も同じような状態で、口を半開きにして放心していた。
「おーい、美衣子。大丈夫かー?」
間抜け面のままだと不憫なので、声をかけてやる。
「え?あっ……うん」
美衣子は、瞳をパチクリさせてまるで夢から覚めたばかりのような表情だった。
なんか、喰えないおっさんだった……。
近付いてくる足音がして、姿勢を正して座り直す。神主さんも底が見えない人だったが、そんな人が託す人物となると、さぞかし堅物で神々しい人物ではないかと想像してしまう。
「ごくっ……」
どちらともなく、緊張で生唾を飲み込む音が聞こえた。
ゆっくりと、丁寧に扉が開かれていく。
「大変お待たせ致しました」
…………え?えー!?
現れた人物を見届けた俺達は、間抜け面のまま固まった。
「私がお祓いをさせて頂く、若宮 《わかみや》
丁寧に頭を下げ、自己紹介をする。
巫女装束に身を包んだ俺達と年端の変わらない少女……
そう、その娘は、神社に来て初めに出会った、巫女さんだった。
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