弐
「あっきぃ!お待たせ☆」
美衣子は、俺がいちごみるくのパックジュースを飲み干す頃にやって来た。
「遅ぇよ」
「え゛!?だってゆっくり喰ってこいって言ったぢゃん!!」
……ちゃんと聞こえてたのか。
「冗談だ」
「……ビックリした」
聞こえていたなら仕方ないと撤回してやると、美衣子はほっと胸を撫でおろした。
「それで?話って?」
「うん、あの……お願いがあるんだけど……」
いざ話をという段になると、美衣子は、途端に歯切れが悪くなった。いつになく挙動不審で、落ち着きがない。
とりあえず、美衣子が話し出すまで黙って待っててやることにした。
「今日の放課後……時間ある?」
十分に言葉を選んだ後、美衣子から出てきたのはそんな言葉だった。
「あぁ、別に暇だけど」
「うん。あのね……神社に行きたいんだけど、付き合ってくれる?」
「神社ぁ?なんでまた?」
アレか。今流行りのパワースポットってやつか?
「うん。この近くに結構有名な神社があるらしくて……その……お祓いに……」
「お祓いぃ!?」
思わず眉をひそめる。
話の展開が読めなさすぎる。
「そう、お祓い。駄目かな?」
「いや、別に駄目じゃねーけど……」
駄目というわけではないが、あまりにも突拍子もない。
困り顔で懇願する美衣子は、俺の戸惑いを感じとっているらしく、どんどんと表情を歪めていく。
どうやら、これはきちんと話しを聞いてやる必要がありそうだった。
俺は、とりあえずとばかりに自分が座っている植え込みの横を示す。
午後の始業を告げるベルが響いてきていた。
不可解極まりないという俺の視線に促され、美衣子はぽつりぽつりと話し出す。
「実は……先週の土曜日、皆で肝試ししたの」
美衣子は、溜め込んでいたものを吐き出すように、言葉を選びながらも段々と口調を速めていく。
「陽平くんが、免許取れたお祝いに、ドライブしようって……」
陽平くんというのは、いつも一緒にいる仲間内の一人、
確かにその祝いの誘いは俺にも来ていたがバイトがあって行くことが出来なかったのだ。
それがまさか肝試しなんていう事になっていたとは……
「それで、皆で『あの洋館』に行ったんだ……」
「…………」
そこまで言うと、美衣子はチラリと黙っている俺の顔をうかがった。きっと怒っていると思ったのだろう。
別に怒ってはいなかった。けれど、あまり良い気分ではないのも確かだ。
心配そうに見つめる美衣子に、俺はただ話の先を促すように肩を竦めた。
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