第3話



 小室の家は裕福ではなかった。

 

 いや、これは良いように言い過ぎだ。

 

 貧乏だった。

 

 それは簡単な理由である。

 

 親が宗教に全てを注いでいたからだ。

 

 信じる心があれば何も怖くないのだと

 

 幸せになれるだと

 

 救われるのだと

 

 そんな事を散々言われて育って来た小室は

 

 当然のようにその教えに従って生きて来た。

 

 子供にとって親が全てなのだから、そうなるのは必然だ。

 

 だから小室はどんなに毎日が辛くとも生きて来た。

 

 いい事があれば感謝を、悪い事は自分の所為。

 

 だから他人の所為するやつが許せなかった。

 

 どうしてそんな事が出来るのかが分からなくて、問い質せば

 

 俺の所為なのだと言われた。

 

 そして小室は分からなくなる。

 

 この悪い状況は俺の所為。

 

 悪い事は自分の所為。

 

 全ては俺が悪いって事なのか?

 

 小室は救いがないこの状況に絶望した。

 



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