第32話温泉山脈
くにゅ
え?
「揉むって言うのはね?」
ちょ、ちょっとクリュー?
優しく慈しむように、、
どさくさ紛れに揉んできたクリューを私は慌てて押し返した。
その際少しクリューの胸を触ってしまったが仕方ない。
わざとじゃないし。
「カナちゃん」
そこ!うるうるしないの!?
別にそんな意味でやったことじゃないんだから!
「そうだよ」
冷たい。というか常温のローの声。背後から。
_イヤな予感しかしない。
「カナちゃんはみんなのもの」
ボソッと恐ろしいこと言うなこの子!?
身の危険を感じたが動くことのできなくなった私は逃げ場を探してキョロキョロする。
ローが近づいてくるのがわかる。
ジャバジャバ
お互い裸なのでそんなに危険はない、、といいな?
フラッと倒れそうになるローをウェイが抱きとめるのが視えた。
「っとと、逆上せたみたいですね」
先に上がりますね?とローを抱いたままウェイさんは去っていった。
「ふぅ」
やっとゆっくりできる環境を確保できた。
念のため岩陰に隠れて私は湯に浸かることにした。
男湯
随分向こうは騒がしいようだな。
考えたら男って俺一人だもんな。
_んでお前は何もんなんだろうな?
カピバラに似てるような気もするが違うよな?
カピバラに角はないし。
立派なはずの角はふやけたみたいにヘニャヘニャになっていた。
フロント前
上がってみるとまだクロエはそこにいなかった。
あれだけ騒いでいたのだから絶対こっちが遅いと思ったのに。
「よ!遅かったな?」
別の方向から歩いてきたクロエは私にだけ牛乳かもしれないものを手渡してきた。
「安心しろ。ミルクだ」
_牛乳とは言わないのね?
不思議な生き物を連れたクロエは同じものを手に飲んでいた。
_美味しいのかな?
パッケージにはカピバラっぽいキャラがウィンクしている姿が描かれていた。
_この子か?
クロエと同じものをチューチュー飲んでいた。
「ソイツはオスだから出ねぇぞ?」
オスなんだ。
何かごめんね?
お母さんかな?
ともかく安心して飲める気がした。
ミルクを片手に館内を色々見て回ると、ここが完全な温泉施設だとわかってくる。
「皆どうしてホテルの設備は使わないんですか?」
そうだ。温泉でないというだけでお風呂はあるのに。
私の後ろでウェイさんは、
別に使わないワケではないですよ?
ここにはちゃんと温泉も引いていますからね?
ファーリアではその温泉に意味があるんですよ。
山奥というと、、あの?
いいえ違います。
まだ何も言っていないのにウェイさんは否定する。
「輝石の山脈からは遠く離れた位置に標高の高い山がある。そこからだ」
これは振り向かなくてもわかった。
ラさんだろう。
しかし、結果は違っていた。
フサフサの尻尾
くびれた腰
ふっくらした胸元
長い藍色の髪。
「あなたはあの?」
「まだまだだな?相手のソーマくらい特定できねぇとこの先務まらねぇぜ?」
温泉で会った私の鼻血を舐めようとした人。
「覚え方がエグいって」
だって名前知らないし。
「エミューってんだよ」
可哀想に。
あ、いや可愛い。
「お前も変だと思うよな?この名前」
こんな男らしい女につける名前じゃねぇってさ。
少なくとも王城領内では語れない話があるのかもしれない。
「おぃ」
ちょっと考えることがあるのですみません。
輝石の山脈から遠く離れた位置にある山に何か、、
「あるぜ案内してやるよ」
「ありがとうございますエミューさん」
名前はやめろ、くすぐったい。
そう言ったエミューさんの尻尾はふりふりと揺れていた。
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