第29話温泉前日
「大丈夫ですかカナさん!」
心臓は動いているもののソーマの流れが感じられないカナを視てウェイは
「私がソーマを注ぎます!それから宿舎に連絡を!すぐ宿泊の手配をして下さい!」
下着姿で横たわるカナに手を翳しソーマを注ぎスタッフに指示を出すウェイ。
一通り応急処置を済ませるとウェイは輝石メンバーと手を繋ぎいつかのようにクリューに紋章を集めカナを宿舎まで転送した。
それからどれくらい寝ていたのかはわからないが、目を覚ますとホテルらしき部屋の一室にほぼ全員が私のベッドを囲むようにして揃っていた。
_誰だクリューを足下に追いやったのは。
何かゴソゴソやっているのがいやに不気味だった。
部屋には石像を除くあの時のメンバーが揃っていた。
王城ほどてはないがそれなりに大きなベッドを取り囲んで私が目覚めるのを待っているようだった。
クリューを含む輝石メンバー、クロエ、それから、、誰!?
見たことない人が私を覗き込んでいた。
「目覚めたようだね」
彼はクロエの召喚されたグジルティア公国から遣わされた人で、クロエから報告を受けて事態を重く受け止めた皇室からの勅命により、私達が宿泊するこの宿舎に顔を出したのだという。
しかし、
「勇者が倒れたと聞いた時は驚いたよ」
髭のおっさん、、あ、いや使者の方は私を覗き込んだままそう言った。
「カナちゃん」
足下にいたクリューが我慢しきれずに髭を押し退けるように割り込んだ。
_ごめんなさい。
クリューはやおら手に持った鏡を私が映るように掲げてきた。
水色の繊細な装飾の入ったドレス。
所々に宝石のようなものがあしらわれている。
「これは」
「カナちゃんの最初の服だよ?」
正直めちゃくちゃ嬉しかった。
こんなに綺麗な衣装が自分のためにオーダーされたかと思うと、、
カナちゃんまた泣いてる。
クリューに笑われた。
「手首のアミュレットは鍛冶屋さんのお手製な?ソーマをたっぷり仕込んでくれたらしいぜ」
そこまで手塩にかけて、、おぃ。
待て。私は気を失っていたんだよね?
これ着せてくれたの、、誰?おっさん!?
「まさか。私は今着いたばかりだよ」
「私じゃないよ?」
思わず反射的にクリューを見た私にクリューは泣きそうな顔で言った。
「安心して下さい。
クラeムガードのスタッフと共謀、、いえ協力して部屋まで運び最初の装備を見繕って着替えを済ませました。
ですから、クロエ様とルゥには何も見られていません」
何か気になる言葉が聞こえた気がするがまぁいい。
要するに貞操は保たれているんだね?
「いいえ?」
なん、、だと。
ウェイさんは可愛らしげに小首を傾げて、
「少なくとも私達と女性スタッフには隅々まで見られています」
あぁそういうことか。
あんまりよくはないがいいってことにしておこう。
「それよりお疲れでしょう」
えぇ色んな意味で。
「この近くに温泉があるんだって。
カナちゃん一緒に入ろうよ!」
意外なことにクリューではなくティに誘われた。
「クリューも?」
存外もじもじしているクリューは黙ったまま頷いた。
なるほどそういうことか。
私のを見れるのは嬉しいが、自分のを見られるのは恥ずかしいんだね?
「カナちゃんになら」
うぃ?そっちか!?
いじらしくも仄赤く頬を染めながら、目を泳がせて言うクリューの姿は私でさえもドキドキさせた。
女の子同士、女の子同士、女の子同士だもん!
そ、それにクリューはまだ子供だしさ。
ムッとしたクリューは急にこっちを向かなくなった。
ゴメンねクリュー。
キミを彼女にしてあげることはできないよ。
もう一回ムッとされた。
「そんなことよりさ早く温泉いこ!」
ティに手を引っ張られクリューが私に絡めていた指が一瞬離れた。
その一刹、クリューは私のもう片方の腕をムッとしたまま、抱きしめるようにして自分の胸に寄せた。
_素直じゃないなぁ。
私も少しだけクリューに当ててみる。
_赤くなってる。
クリューは赤くなって俯いていた。
かくして私達は宿舎の仮予約を正式に済ませた後、近くにあるという温泉街へ向かうことにした。
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