第28話服飾雑貨店クラeムガード
服屋さんは積層型の塔で何階かに分かれていて、各階がブティック風になっていた。
下から4階までを男性スタッフがいるフロアに、暗いめの紺を基調とした店内に間接照明、5階から8階までを女性スタッフがいる女性フロアにしてあった。
5階から8階までは薄い黄色の店内に間接照明といった具合だ。
クロエ達は一階のエントランスホールで黒服に取り押さえられ連れ去られた。
「クロ、、、」
名前を呼ぶ暇さえなく忽然と消えるクロエ達。
別に服選んで貰うだけなんだけど、ちょっと心配になった。
そして5階。
私はウェディングドレスのような格好の女性達に取り囲まれていた。
そしてセンターにいた女性が指を鳴らすと一斉にその女性達が道具を手に私のあちこちを測り始めた。
何やら色のついた棒を私の横に並べて比べ始める。
これが何をしているところなのかはさっぱりだったがオーダーメイドするための準備なのだろう。
_そういえば。
お金はどうするんだろうか?
元世の通貨が使えるとは思えないが。
「安心して下さいこれで払います」
ウェイさんがカードを見せた。
_?
見たことのないカードだった。
当たり前か。異世界文化だもんね。
「ここ全部ルゥの支払いなの」
_クリュー様ぁぁぁ!
よく聞いてみるとポケットマネーではないらしい。
_そ、そうだよね。
王室勤務のスタッフにはもれなくこのカードがついてくるんだとか。
_経費で落ちるのか私達の装備は。
勇者ということもありその辺は抜かりなく落ちるという。
ちなみに手数料やポイント分は市民に残らず還元されていく。
_ファーリアすげぇ。
ところで何でウェイは自分のも買ってんのかな?
_あ、使ってる。
おぃおぃ。
妹のカードで姉が買い物、、いいのかな?
「いいの。いいの」
元素世界ではあまりよくはない。
「その方がみんな喜ぶんだし」
微笑みながらその姿を見守る妹。
_ってクリュー!?
「こっちきちゃいけないんじゃ!」
「いいんだ。あっちは何とかなってるし」
_そのわりに目が死んでるけど?
ラがクロエの着せ替えにハマってしまったらしく、他にやることがないから黙って上がってきたとか。
_ダメじゃん。
「カナちゃんはまだこれからだよね?」
「うん」
その死んだ目でこっち見ないでコワいから!
_その瞳の奥の輝きはどういう意味かな?
深くは考えないことにしよう。
「大丈夫だよ」
「うん」
まだ何も言っていない。
言った覚えがない!
どうしようもなく助けて欲しい気持ちになった。
今ほど自分の気持ちが聞こえてるのがコワいと思ったことはなかった。
「下着、選んであげるよ」
頼む!頼むから声は元に戻して!
それじゃ私コワくて頼めないよ!
「・・・・・・・」
黙っちゃヤダ!
「じゃ、いこっか」
_あ、戻さないんだ?
クリューをこんなにコワくするって姉さん達何したの助けて!
「サイズを聞かせて」
青くなりながら私はクリューに耳打ちする。
「わかった!」
_あ、戻った。
_ふぅ。
何か詰まっていたものが取れた感じがした。
店員さんのとこに駆けていったクリューが
「お姉さん!Cカップのブラどこですかぁ!?」
ぎゃぁぁぁぁぁ!
_あの子何言ってんの!?
どきどきしながら私はクリューを止めにいった。
_ここで慌てたら私のだってバレる。
後ろから抱きしめるように口を塞ぐと、クリューが楽しそうにジタバタした。
_コイツ。わざとやったな?
とっておきの言葉を耳打ち。
「二人だけの秘密でしょ?皆に言っちゃダメ」
三度瞬きをした後、
「ごめんなさい」
_ふぅ。
クリューの殊勝な表情は初めて見た気がした。
「お客様、ご案内致します」
_バレてるわな。
ついでに視線も感じた。
恥ずかしくはないんだよ?女同士だもんね?
_誰に言い訳してんの私。
「こちらになります」
_おぉ。
霞むほど長い列のブラ。
_まさかワンサイズじゃないよね?
「こちらはサイズ別のコーナーにございます」
_マジか!?
まぁ4フロアほど占拠してるしありえるか。
これ倉庫じゃないよね?
「デザインでございます」
敢えてそういう風にしてあるってことか。
壁が人肌っぽいのもそれなのかな?
「お客様。その辺りを触らないようにお願いします」
ックシュ
え?
「お客様。準備の方が整いました。
こちらへ」
気になることがいっぱいあった。
_今のクシャミは?
_そしてその隣を飛んでるちっこいのは?
スタッフの隣を小指ほどの生き物が飛んでいた。
_何やら耳打ちしてる。
たぶんスタッフ。
試着室も沢山あるのかと思ったらそうでもなかった。
五つくらいある部屋の中から一つ選び、、ついてくるなクリュー。
押し戻すと至極残念そうなクリュー。
普通に入ったら気づかれないとでも?
そうだね女の子同士だね?
言い訳になるか!
これから私が脱ぐと知ってついてこようとしたクリューは最期まで抵抗した。言い訳まで用意して。
やがてスタッフのお姉さんに連れて行かれるクリュー。
ズルズル
そしてお姉さんの耳打ちはしっかり聞き取れた。
「心中お察しします」
ちょー待てぇ!
スタッフは私の敵だった。
ところで商品の方は悪くない。
肌触りもよく、この柔らかい生地は恐らく上質のものを使っているだろうことを肌で感じる。
「気に入って頂けましたか?」
_!?
うぇい!?スタッフか、何だ。
開ける時は言って下さいよ。
こっちは半裸なんですから。
ためつすがめつ薄い黄色の下着姿の私を視るスタッフ。
_何だ。
緊張感みたいなものが私の肌をすべり落ちていく。
「まぁいいでしょう」
_何が!?
「うんばっちり!」
クリューが言うと何か怖い。
_ねぇ何がなの!?
単純にサイズの話をしているようには見えなかった。
「 」
クリュー先輩黙っちゃ嫌ぁ!
「正常に機能しているようで何よりです」
へ?機能?スタッフさん何言ってんの?
これただのブラだよね?
「いいえ」
その瞬間、全身から血の気が引いていくような感覚がした。
そっからまた私は大部分を聞き逃す。
去りゆくソーマの中聞こえたのは、
「白銀龍の鱗と原生鱗神龍の、、」
それを最後に私の意識は途切れている。
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