第11話羊の鍛冶屋
クロエの手料理というと恥ずかしいが、のおかげで今の私は呪紋なしで42に到達していた。
クロエは26レベルになった。
バンッ
と突然後ろの扉が開く音がした。
_?
ここには勇者しか入れないのでは?と何度目か思った時、
「カナちゃん!」「めぇ!」
クリューと鍛冶屋さんの姿が確認できた。
ちょっと見ない間に鍛冶屋さんの「羊化」が進んでいた。
羊との見事な波状攻撃をキメて私に跳びかかってきたクリューをひらりとかわし、
「何でここに?」「たぶんコイツだ」
と石焼きに突っ込みかけていたクリューの襟首を掴む。
「クリュー?」
じたばたするクリューに首を傾げる私。
そっちじゃない。とクロエはもう片方の手に乗せた輝石を見せた。
輝石を採取したことでこの辺りの仕掛けが解呪されたんだろう。とクロエは説明してくれた。
「大方さっきの龍が勇者カナとサシで勝負がしたかったんで、言霊でも込めてたんじゃねぇか?勇者だけにしろとか何とか」
聞こえたんだろ?クロエは私に振る。
つまりあれは私にしか聞こえてなかったのか。
_ここから先は勇者のみとする。
「うん」「え?何々カナちゃん何聞いたの?」
いきなりクリューのスイッチが入って流石にクロエも取り落とした。
ジュッ
「ッ…………!?」
クリューのお尻がこんがり焼けた。
「その剣、ちょっと貸せ」
ここにきて、一度も話していなかった鍛冶屋さんがいつになくマジなトーンで私の剣をスッた。
_!
言いたかないけど遥か上のレベルの私がわからなかった。
スリというのはやはり技であり速さの類ではないらしい。
「ふむ」
ためつすがめつ鍛冶屋さんは、剣を観察していく。
「随分荒っぽいやり方で鍛えてあるな?
別に間違ってはないがこれだと長くは保たんぞ?」
鍛冶屋さんの目を誤魔化せるなんて最初から考えてはいない。
「実は急場凌ぎさえできれば、あとは鍛冶屋さんにお願いするつもりでした」
これで、と龍の鱗を差し出した。
そんなムチャ振りひっぱたかれたって文句は言えない。
それは覚悟の上だった。
でも
「いいや、この特徴を活かす形で鍛えてやろう」
刃こぼれの目立つ剣を眺めながら鍛冶屋さんは言った。
「龍の逆鱗は別に使うよ。ちょっとやってみたいこともあるしな?」
うわ。何そのウインク。
きゅんきゅんくるんですけど。
ッと背後に殺気を感じた。
_この気迫クリューか?
インスピレーションは既に湧いているらしい。
たしかアレとソレがウチにあったはずだから、アイツに任せておけばいいとして、、、
スゴい勢いで今後のスケジュールを組み立てていく羊。
_気合でも入るんだろうか。
勝負服らしかった。
「完成したらカナちゃん専用だね?」
とクリューは私に精一杯の色目を使ってくる。
「完成まではこれを使っておいてくれ」
羊が渡してくれたのは、この国で一番の武器。
柄には神聖ロズヴェルク帝国の紋章が刻まれていて、
受け取った手が震えてしまった。
「こ、こんなの頂けないですよ!」
そりゃそうだ。
大陸三勢力の中でも一大勢力を誇る私の召喚された国〈神聖ロズヴェルク帝国〉は、その紋章の力も然ることながら、鍛冶屋の腕も随一とされている。
いきなり最強武器とか有り得ないでしょ?
「ソイツはオレの作品じゃねぇけどな?
姉妹の作だ。使ってやってくれ」
そう言われると受け取らざるを得なかった。
よく見ると柄にはロズヴェルク帝国の紋章に他国の紋章が絡みつくようになっていて、
「これ?どこの?」
イスベルクの南の小さな国だよ。
とクリューがいつになく、優しい顔で教えてくれた。
これが私の最初の剣。
_ホントはあっちがそうなんだけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます